師祖焼き落とし 蛇誘いの罠
北条真绪は重々しく頷き、言う通り手中の拳銃を取り出して弾を込め、保険を外した。
その後、二人は防毒マスクをつけた。青野蒼斗が先頭に立って進み、北条真绪がすぐ後ろについた。装备は全部青野蒼斗が背負っている —— 中にはロープ、軍刀などが入っており、これらは北条真绪が関係者を通じて宅配してきたものだ。
青野蒼斗は北条真绪を連れて速やかに人工湖を迂回し、竹林の前に到着した。竹林は鬱蒼として靄に包まれ、地面には雜草が生い茂り露が厚かった。二人の足元とズボンの裾はすっかり濡れていた。
すると、北条真绪は恐怖で魂が飛び散るような感じになった。心の準備はしていたが、足元に無数の毒蛇が巻き付いているのを見て、依然として鳥肌が立った。
幸い防毒マスクをつけていたため、叫び声は漏れなかった。青野蒼斗は泰然自若だった —— 霜月诗织が教えた蛇払いの術に従って、口から何かの調子を哼り出した。
その調子は月夜の小調子のようで、安らぎと和やかな魅惑力を持っていた。
これらの蛇は全部霊蛇で、知能が比較的高い。昔玄衣門の師祖がこの小調子で它們を訓練したのだ。
果然、青野蒼斗の小調子が響き始めると、竹林の中の無数の毒蛇は潮のように両側に分かれた。
調子が効果を発揮したことを見て、二人は一安心した。即座に中に進み始めた。
竹林は蛇の最も好む場所で、この竹林はまさに蛇の天国だった。二人はライトをつけず、月明かりを借りて周囲のヒヒッと音を立てる毒蛇の動きを見ながら進んだ —— その光景は目を覆うほど驚きだった。
毒蛇たちが両側を這い回る音は、非常に不安な感じを与えた。
途中まで来ると、青野蒼斗は突然違和感を感じて足を止めた。
「どうした?」北条真绪はすぐに小声で問う —— 防毒マスクをつけても小声の会話は可能だった。
青野蒼斗は沈んだ声で言う「ちょっと違う」
「どこが違うの?」
「これらの毒蛇が分かれる曲線は蜿蜒している、まるで曲がり道だ。俺たちは前に進みたいのに、蛇払いの術で誘導しているのになぜ曲がり道なんだ?」
北条真绪は少し愣けて、青野蒼斗が大げさだと思った。小声で言う「これらの蛇は結局畜生だ、本当の人間じゃない。分かれる道がまっすぐじゃないことを責めるの?」
青野蒼斗の耳が動いた —— 彼の感覚は非常に鋭敏だ。北条真绪が「蛇は畜生だ」と言った瞬間、蛇群から怒りの雰囲気が蔓延しているのを感知した。
青野蒼斗は鳥肌が立った —— これらの毒蛇はこんなに頭がいいのか?人間の言葉をぼんやりと理解できるのだ。
「お前の思うように単純じゃない」青野蒼斗は重々しく言う「墨瑶、これらの毒蛇は俺たちを特定の場所に誘い込もうとしている。その場所には伏兵が待っているか、危険なものがある可能性が高い」
北条真绪が言う「これらの毒蛇より危険なものがあるの?俺たちの行方が事前に知られたの?就算知られたとして、殺したいなら直接蛇を指揮すればいいじゃない?」
青野蒼斗は沈んだ声で言う「忘れてる?玄衣門の人は天機を読むのが最も得意だ。城健朗が自分に劫難があると占えば、事前に準備をして俺たちの到着を猜測するのは難しくない」
北条真绪は冷気を吸った。さらに奇怪に言う「可理解できないのは、城健朗が本当に占えたのに、なぜ直接蛇に俺たちを毒殺しないの?」
周囲の無数の毒蛇を見て、全身に鳥肌が立った。
これだけ多くの毒蛇が襲いかかれば、二人は凄惨な死に方をするだろう。
北条真绪は子供の時「封神演義」を見たことがある —— 人を万蛇の坑に捨てるシーンがあり、その刑罰の名前は「蠆盆」といった。
当時見た時に非常に恐怖だったと思っていたが、今自分が同じ状況に直面して、どうして魂が震えない?
青野蒼斗は依然として泰然自若だった —— 彼はこんな人だ。越えるほど危険な状況で、越えるほど沈着冷静になる。
「墨瑶、お前の言う通りだ。本当に俺たちを殺したいなら、こんな面倒な手間をかける必要はない」青野蒼斗が言う。
北条真绪は一安心して言う「つまり、お前が心配しすぎたんだよね?相手は俺たちに気づいていない」
青野蒼斗が言う「いや、相手は百分の百俺たちに気づいている。今殺さないのは、後ろにさらに残忍なものが待っているからだ。行こう、一歩一歩見ながら臨機応変に対応する。反正今の状況より悪くなることはない」
この時、青野蒼斗は小調子の哼唱を止めた。が毒蛇たちは依然として潮のように分かれ、蜿蜒した道を作り出した。
この状況は青野蒼斗の考えをさらに裏付けた。
北条真绪がどんなに鈍感でも、この時は毒蛇たちに問題があることを知った。
二人は毒蛇が誘導する方向に進み、5 分後に竹林を出た。
竹林の前には一軒の藁屋があり —— 中には明かりもなく、誰も住んでいるように見えなかった。
が蛇潮は退かず、さらに前に進んで藁屋全体を包囲した。
蛇潮は二人のために藁屋への道を譲った。
明らかに、隠れている謎の人物は二人に藁屋に入るように仕向けている。
この藁屋の中には、どんな仕掛けがあるか分からない。青野蒼斗は直感で藁屋からの危険を感じ取った。
「どうしたらいい?」北条真绪が青野蒼斗に問う。
青野蒼斗は目を回して、突然バッグから防風ライターを取り出して点火し、藁屋の上に投げた。
北条真绪は青野蒼斗の行動を見て、目を輝かせた。
青野蒼斗は本当に頭がいいと思った —— 相手にどんな危険な罠があっても、入らなければいい。火をつけて焼き払えばいいじゃない。
藁屋の上の藁は非常に乾燥していて、ライターの火がつくとすぐに燃え始めた。
最初は小火だったが、やがて大火が燎原となった。
「悪い!」この時、青野蒼斗の顔色が急変して、突然藁屋の中に飛び込んだ。
北条真绪は一辺で莫名其妙だった —— どこが悪いのか、なぜ青野蒼斗の顔色が急変したのか分からなかった。
青野蒼斗が藁屋に飛び込むと、すぐに中央で一人の老人が寝ているのを見た。
その老人は慈眉善目で、目を閉じて安らかな表情をしていた。
青野蒼斗は目が鋭く、老人が既に死んでいることをすぐに見抜いた。
更に致命的なのは、老人の身上からガソリンの臭いを嗅いだ。抢い込む間もなく、一筋の火の粉がついに老人の身上に飛び散った。
瞬く間に、ボワッと火が燃え上がり、老人は炎に包まれた。青野蒼斗は救助しようとしたが、もう手遅れだった。
「青野蒼斗、蛇潮が退いた!早く逃げろ!」北条真绪は後ろで蛇潮が退いたのを見て、急いで青野蒼斗を呼んだ。
青野蒼斗は心が重く、速やかに北条真绪の側に戻った。蛇潮はすべて退いて、藁屋は火の海になっていた。
すると、東の方から足音が駆け寄せてきた。誰かが叫んでいる「悪い!師祖廟が火事だ!みんな消火に来い!」
「逃げろ!」青野蒼斗は即座に北条真绪の手を引いて、西の方に走った。
西の方には天然の湖と葦原があった。
蜃気楼の陣法は、太陽の光とこれらの湖の光合成と屈折を利用して作り出されたものだ。
青野蒼斗と北条真绪は葦原の後ろに隠れた —— 葦原は露で濡れていたが、二人はそんなことを顧みなかった。
反正身上はもう露でびしょ濡れだった。
藁屋はもう救えなかった。その後、二人は誰かが大哭して「師祖がお亡くなりになった」などと叫んでいるのを聞いた。
「行こう!」青野蒼斗は北条真绪を引いて、さらに西の方に進んだ。
西に進むと、緑豊かな青山があった。
月の清らかな光が青山に降り注ぎ、一層神秘的な雰囲気を醸し出していた。二人は中腹に到着した —— ここは非常に静かだ。正確には、寂しい。鳥のさえずりと虫の音だけが聞こえる。
二人は山の谷間に座り込んだ —— ここから下を見下ろすと、確かに万灯籠が点っている場所が見えた。
意外だったのは、その場所は明かりが輝き、まるで繁华な小さな都市のようだった。さらに北条真绪は驚いて東の方を指さして言う「あの場所、空港じゃない?」
青野蒼斗が見ると、確かに町の中にグラウンドのような空き地があり、飛行機の輪郭が見えるようだった。
はっきりとは見えないが、二人はさっき飛行機に乗ってきたばかりで、空港の雰囲気は感じ取れた。
この玄衣門の町は、想象以上に近代的だった —— 落后していると思っていたのとは違う。
これは不思議ではない。玄衣門の人は皆、風水や占いの達人だ。金を稼ぐのは簡単だ。当時霜月诗织が玄衣門を離れた時も、大筆の金を持ってバーを開いたじゃないか?
玄衣門は明らかに金に困っていない。
が今、青野蒼斗は心が重すぎて、余計なことを考える気分がなかった。
師祖がお亡くなりになった、師祖廟…… クソっ!
北条真绪は防毒マスクを外して青野蒼斗に言う「さっき何が起きたの?師祖がお亡くなりになったって聞こえたけど…… 俺たちが師祖を焼き殺しちゃったの?」ここまで言うと、顔色が一変して「城健朗が俺たちを陥れているの?」
青野蒼斗は顔色が重々しく「この件は城健朗と関係がないわけがない。この男は俺が生まれて以来見たことがないほど厉害な人物だ。まだ会っていないのに、既に俺たちを絶望の淵に追い込んだ」
「え?」北条真绪が「こんなに深刻?」
青野蒼斗が言う「今回入って城健朗を捕まえるのは、玄衣門の師祖に届け出るためだった。今師祖を俺たちが焼き殺しちゃったら、玄衣門の人は俺たちを恨み込まない?」
北条真绪が言う「可師祖はこんなに厉害な人物だったのに、どうしてこんなに簡単に焼き殺されちゃったの?」




