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狼王、都市に潜む:鉄拳で花を守り、商業帝国を築く  作者: 転生下書き人


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青野、岡崎龍造と紅運楼で対面~白川天雷の大摔碑手襲来

青野蒼斗は斉藤竜太の兄貴分(岡崎龍造)からの電話を切った後、またベッドに横になって眠った。今日は橘柚緒が出勤しないので、送る必要もなかった。が青野蒼斗はそれほど長く眠れなかった —— 午前 8 時ごろ、橘柚緒が戸を叩いてきた。

青野蒼斗は起き上がって戸を開けると、まだ眠そうな目をしていた。

門の外には橘柚緒がしっかり立っていた。彼女は今日、白いスポーツウェアを着て馬尾に結んだ髪型をして、非常に爽やかな雰囲気を持っていた。身上から漂う香りは、青野蒼斗の心が洗われるような感じをさせた。

毎朝橘柚緒の姿を見るのは、一日の中で一番幸せな瞬間だった。

青野蒼斗は橘柚緒の様々な魅力を知っているので、この女性が本当に「宝」だと感じていた。どんな小さな動作も彼を惹きつける。同時に「佐伯劣は本当に幸せを知らないな」と嘆いた —— こんな優れた女性と離婚するなんて、理解できなかった。

「柚緒姐!」青野蒼斗はにっこり笑って呼んだ。

橘柚緒も嫣然と笑った。実は彼女も毎朝、青野蒼斗が「柚緒姐」と呼ぶ瞬間を特別に待っていた。青野蒼斗はまるで明るく単純な大男の子のようで、その単純さと明るさは、大学時代に男子生徒がバスケットボール場で汗をかく姿を見るような、大人の世界ではなかなか見られないものだった。

「起きて洗面してください。うどんを茹でてるので、あと数分で朝ご飯ができます」橘柚緒が言った。

青野蒼斗の心は温かくなった。「わかった!」

起きたらすぐ朝ご飯が食べられる日々は、本当に幸せだった。

青野蒼斗は率直で奔放な性格で、束縛を嫌う。普段独り暮らしの時は、時折うどんを食べるだけで、時には一日中何も食べないこともあった。

朝ご飯はピーマン肉絲うどんに小籠包だった。どれも温かくて美味しかった。

言うまでもなく、橘柚緒は非常に世話好きな女性だった。青野蒼斗のことを細かく配慮していた。青野蒼斗はうどんを美味しそうに食べるのを見て、橘柚緒は自分の碗の肉絲とうどんを少し取って彼の碗に入れた。

同時に、橘柚緒は青野蒼斗に問った。「今日はどこへ行くの?」

青野蒼斗はうどんを食べながらぼんやりと答えた。「今日の昼、ヤクザの斉藤竜太の兄貴分が紅運楼でご飯をおごるって言ってた。一緒に行こう」

橘柚緒は顔色を少し失って「不会い鸿门宴(陥阱の食事)じゃないの?」

青野蒼斗はふふっと笑って「どんな食事でも、食べ物があればいいじゃない」

さりげなく、万物を睥睨むような雰囲気を漂わせていた。これが青野蒼斗の自信だ —— 骨の髄まで染み込んだ自信。どんな小物が陰謀を企んでも、自分には関係ないと思っていた。

橘柚緒はこの話を聞いてにっこり笑った。自分が心配しすぎたことに気づいた —— 青野蒼斗はそんな簡単に騙される人じゃない。

紅運楼は中華料理を主力とするレストランで、バー街に非常に近かった。バー街は昼間になると静まり返り、数軒のカフェバー以外は開いていない。この紅運楼は多くの市民にとって少し神秘的な存在だった —— 横須賀市の多くの暴力団が話し合いをする時、この紅運楼を選ぶからだ。

此刻、紅運楼の二階では ——

斉藤竜太、江麻由子、本田翔が中年の男性のそばに恭しく立っていた。

本田翔の手は包帯で固定され、首から下げていた。医者の診断によると、彼の手は粉砕骨折しており、将来治ったとしても力が出なくなり、障害者手帳の申請資格があるということだった。

この中年男性は唐装を着て、意外にも教養のある印象を与えていた。彼の名前は岡崎龍造で、横須賀市城北地区の暴力団リーダーだった。

横須賀市は計 4 つの地区(城南、城東、城西、城北)に分かれている。

各地区にはそれぞれ暴力団のリーダーがいて、地下社会を支配していた。が 4 人のリーダーの上には「竜王」と呼ばれる存在がいた。竜王こそが本当の地下皇帝だったが、現在はほぼ「白い道」に転身し、地下社会のことはあまり管まわなくなっていた。彼の最も有名な肩書きは「慈善企業家」だ。

岡崎龍造は手下のヤクザを大勢連れて来ていなかった —— 実際、彼の手下には単なるヤクザはいなく、本物の精鋭しかいなかった。今日は手下の二大猛者を連れて来ていた。それは路不帰と白川天雷だ。

路不帰は 40 歳で、形意拳の高手だ。ゆったりした白い上着を着て、片側でくつろいでお茶を飲んでいた。一方の白川天雷は圧倒的な猛者で、牛のように逞しい体つきをして八卦掌を修行しており、36 歳の全盛期にあった。

岡崎龍造の名前を聞くと、人々はまず路不帰と白川天雷を思い出す。岡崎龍造が今日の地位と勢力を得られたのは、この二大猛者の力によるものだ。路不帰の形意拳は神業の域に達し、地下闘技場で 36 連勝し、地下闘王や各種高手を皆犬のように打ち負かした。白川天雷は短気な性格で力が人一倍強く、生きた牛を引き裂くこともできる。

この二大猛者がいれば、岡崎龍造は関羽と張飛を持つ劉備のように、千軍万馬をも防ぐことができる。

此刻、岡崎龍造は無表情だった。

斉藤竜太はそばで大きく息をすることもできなかった。

が白川天雷が先に話し始めた。「兄貴、本当にあの小僧に 100 万人民元を渡すつもり?」

岡崎龍造は白川天雷を見て「渡すかどうかは、まず彼の実力を見ないと分からない。この青野蒼斗は名前も知らない存在だが、敢えて挑発するということは、表面だけのことではないだろう」

路不帰は穏やかな性格だったので、同意して言った。「兄貴の話は正しい。小さな釘でも足を刺すことができる。用心深く慎重にやるのは間違いない。いつまでも力任せに喧嘩をすると、いつか転んでしまう」

岡崎龍造は淡く笑って「時代はもう昔と違う。以前のようにただ喧嘩と殺しだけでは生きていけない。竜王はそれをよく理解して、今では完全に事業を白い道に転換し、地下社会から退いた。我々は今のところ竜王のレベルには届かないが、少なくともその方向に進まなければならない。時代も技術も進歩している。我々の業界はますますやりにくくなる」少し間を置いて、斉藤竜太と本田翔を冷たく見て「早く言っただろう?主动的にトラブルを起こすな。この世には君たちより強い人がたくさんいる。井の中の蛙こそ、空の広さも地の厚さも知らず、人を見下す」

斉藤竜太と本田翔は慌てて頭を下げて「はい、はい。兄貴の教えを心に刻みます」

江麻由子は元々恐れを知らない女の子だが、岡崎龍造の威圧感の前では大人しくしていた。本来、江麻由子と本田翔の級別では岡崎龍造に会うことはできなかった。が今回の事件の経緯を把握するため、岡崎龍造が二人を呼んだのだ。

さて、斉藤竜太のこのようなトラブルについて、岡崎龍造は本来関心がなかった。が斉藤竜太は自分の手下で、青野蒼斗の言い分も手強いので、本当に斉藤竜太が青野蒼斗に傷つけられるのを見過ごすわけにはいかなかった。リーダーとしての責任があるからだ。さらに、岡崎龍造は青野蒼斗の正体と意図を知りたかった。

岡崎龍造は頭の良い人だったので、青野蒼斗に尋常に挑戦して面目を取り返そうとはしなかった —— それは下劣なヤクザのやり方だ。彼は食事を設けて、青野蒼斗の底力を探ろうとしたのだ。

だからこそ、岡崎龍造と斉藤竜太は根本的にレベルが違うのだ。

そんなことはさておき、此刻、青野蒼斗と橘柚緒も紅運楼に時間通りに到着した。二人はウェイターに案内され、二階の個室の前に来た。

戸を叩いて開けると、青野蒼斗はさりげなく先に中に入った。

橘柚緒はすぐ後を追った。

ついに両者が対面した。

岡崎龍造はすぐに立ち上がり、にっこり笑いながら青野蒼斗に近づいて「こちらが青野さんでしょう?お久しぶりです(敬意を表す言葉)!」と言い、まるで長年の旧友のように青野蒼斗を抱きしめた。

いわゆる「笑顔の人を罵らない」—— これが岡崎龍造の手口だ。

青野蒼斗はこのように抱きしめられ、意地悪いことを言うのも渋らされた。

二人が離れると、青野蒼斗は頭を掻いて「兄貴、こんなに親切にしてくれるのは、金を渡さないつもり?」

岡崎龍造は愣けた後、大きく笑って「青野さんは本当にユーモラスですね」

青野蒼斗は心の中で「ユーモラスなんてクソだ!」と思った。

岡崎龍造は続けて「青野さん、どうぞお座りください」

青野蒼斗は岡崎龍造の向かい側に座り、橘柚緒は青野蒼斗のそばに座った。

岡崎龍造が言う。「青野さん、この小弟たちは無知で喧嘩腰をつけてしまいました。この事件を聞いたら、すぐに厳しく叱咤しました」少し間を置いて、斉藤竜太に向かって「まだ青野さんにお茶を入れて謝罪しないの?」

斉藤竜太は岡崎龍造の命令に逆らうわけにはいかないので、慌てて「はい」と応えた。もちろん、斉藤竜太の心の中では不満があった —— 兄貴が自分のために出てきてくれないばかりか、敵の前で自分を叱咤して、まるで小僧のように扱う。

思ったところまで思っても、斉藤竜太はすぐにお茶を入れた。青野蒼斗、橘柚緒、岡崎龍造、路不帰、白川天雷にそれぞれお茶を差し上げた。

その後、再び岡崎龍造のそばに恭しく立った。

青野蒼斗は湯呑みを持ち上げ、岡崎龍造を見て「兄貴は明事理な人ですね。でも謝罪はどうでもいいんですよ。約束した金はどこですか?」

まるで金遣いのような態度をしていた。

岡崎龍造はにっこり笑いながら青野蒼斗を見つめた —— ますます青野蒼斗の正体が分からなくなった。

青野蒼斗は岡崎龍造に見つめられても、少しも気まずがらず、足を組んでお茶を飲んでいた。

この姿を見て、そばの白川天雷は不満を募らせた。彼は一気に立ち上がり、指をさして「小僧、生意気だな!」

青野蒼斗はふふっと笑って白川天雷を無視し、岡崎龍造に問った「兄貴、まだお名前を聞いていないんですが?」

岡崎龍造が答える。「鄙人は岡崎と申します。岡崎龍造です」

青野蒼斗が言う。「ああ、岡崎兄貴ですか!この手下さんは礼儀正しくないですね。でも大丈夫、僕が代わりに躾けてあげます」

話し終えると立ち上がり、白川天雷に向かって「小僧、生意気だな!」

白川天雷は愣けた後、冷笑して「どう?僕を躾けようと?」

青野蒼斗はにっこり笑って「そうだ。ダメ?」

白川天雷の眼中に怒りが閃いた。彼も一級の猛者だから、青野蒼斗のこんな傲慢さを許せなかった。冷笑一声で「よし、君の斤量を量ってやる」

白川天雷は話し終えると、大股で青野蒼斗に近づいた。一歩で 1.5 メートルも進み、瞬く間に泰山が崩れ落ちるような圧力と激しい風を起こした。

白川天雷の手は巨大な団扇のように広がり、一撃で青野蒼斗の胸に劈き下ろした。

この一撃こそ、八卦掌の秘技「大摔碑手だいしゃひいて」で、攻撃力抜群だった!

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