影尊の苦悩と氷情の助言～修罗、氷情を引き返そうとする
大阪市、大阪マンション。
既に午前 1 時になっても、大阪マンションは依然として明かりが輝いていた。
2 階の書斎で、白いシャツを着た青年が顔を青くして座っていた。
この青年の着ている白いシャツはイギリス製の手作りで、シルエットがはっきりとして、言葉で表せない高級感と飘逸感を持っていた。
青年は見た目は若く、まるで日本の漫画に出てくる桜の木の下の少年のように美しい顔をしていた。まるで絵の中の人物で、生きた人間のようには見えなかった。
見た目は 18 歳に見えるが、実際には既に 30 歳だった。
彼こそ、久保グループの少主・久保影尊だ。
久保影尊は非常に不機嫌だった。
さっき、確かな情報が入った —— 雷暴の足は完全に不具になり、もう治る可能性はないということだ。つまり一夜の間に、2 人の猛将を失ったことになる。
それだけでなく、この件はきっとルート消息から広まるだろう。堂々たる久保グループの、才能あふれる少主・久保影尊が、同時に少林在家門人の「延」の字輩の大物でありながら、ただの警備員である青野蒼斗を始末できないという話は、少林在家門人のこの名刺を丸裸にすることになる。
内緒を知っている人は「青野蒼斗が単純な警備員ではない」と疑うだろうが、噂話を聞いた人は「少林在家門人は全部ダメ貨で、花拳繕いだ」と思うに違いない。
以前、武当山でもこんな茶化した出来事が起きたことがある —— 武当山玄武宮の道士が 2 人のチンピラに殴られたのだ。当時世論は大きく波乱し、人々は「武当山の武術は笑い話で、今のハイテク時代に武術は花拳繕いだ」と思うようになった。
実のところ、久保影尊はその 2 人のチンピラが高手が装ったもので、玄武宮の道士に復讐するためだったことを知っていた。
今では武当山は「武術で健康を保つ」などと宣伝することも敢えてしなくなった —— 誰も信じないからだ。
名声を完全に失ったのだ！
久保影尊は今、まさにこんな境遇に直面していた。
もし少林在家門人のこの名刺が、最後に玄武宮と同じような結果になったら、久保影尊の日子は悪くなるだろう。それは別にしても、「永」の字輩の釈永龍師叔祖が絶対に許してくれない！
久保影尊の目が回転し、再び悪辣な計画を練り始めた。
その時、戸の外から足音が伝わってきた。
久保影尊の聴力は恐ろしく、耳を少し動かすだけで誰が来たか分かった。元々氷のように冷たかった彼の目に、突然熱狂的な光が閃いた。
部屋に入ってきたのは女性だった。
この女性は深赤色のチャイナドレスを着て、髪を貴婦人スタイルに結んでいた。見た目は 28 歳くらいに見えるが、実際には既に 38 歳だった。顔は美しくて高貴な雰囲気を持ち、体つきは豊かで太ももが長く —— チャイナドレスを着ると、男を狂わせる魅力があった。
彼女が入ってくると、香りが漂ってきた。
彼女こそ、久保影尊の小姨・久保氷情だ。
久保氷情は手に優雅に碧玉のお盆を持ち、お盆の上には冷やした白木耳蓮子スープが入っていた。
「小凌」久保氷情は久保影尊のそばに来て、唇を動かしながら言った —— 言葉には言い表せない誘惑力があった。その唇はさくらんぼ色をして、思わずキスしたくなるような魅力があった。
久保影尊は手を伸ばして久保氷情の柔らかい手を握り、少し興奮して「おばさん」と呼んだ。
久保氷情は嫣然一笑して、蓮子スープを彼の前の机の上に置いた。「こんな時間まで起きているの？何か悩み事があるの？」少し間を置いて「でもどんな悩み事があっても、まずおばさんが作った蓮子スープを飲んで」と言った。
久保影尊は頷いて、蓮子スープを持ち上げて速く飲み干した。その後心から「本当に美味しい。おばさん、いつまでもおばさんが作った蓮子スープを飲めたらいいのに」と言った。
久保氷情の眼中に満足と嬉しさが浮かんだが、すぐに憂いため息をついて「愚かな子だね。いつかは結婚するんだから、おばさんがいつまでもそばにいられるわけ？」
久保影尊は急いで「いいえ、おばさん。おばさん以外は誰とも結婚しない。この世の女性に、おばさんの万分之一にも及ぶ人はいない」
久保氷情は微微一笑んで「また戯言を言って。私は君のおばさんだよ？いい加減におばさんをからかわないで」
久保影尊は久保氷情を見上げて、非常に真剣な表情をした。「なぜこんなくだらないことに気を遣うの？今生、おばさん以外の女性は好きになれないと知っている」
久保氷情の顔が赤くなって朝焼けのように、まるで酔ったようだ。一時的に心が乱れた。
しばらくして、久保氷情は突然話題を変えて「小凌、どんなことがあったの？おばさんに話してみて。もしかしたらおばさんが助けられるかもしれない」
久保影尊も小姨の心の中に壁があることを知っていたので、急かすわけにはいかなかった。この話題をこだわらず、今の青野蒼斗とのことを全部話した。久保影尊は小さい時から小姨の久保氷情と親しかったので、久保氷情の前では自由に弱さを見せ、何でも話せて、一縷の保留もなかった。
久保影尊が話し終えると、久保氷情はすぐにこの件の核心を理解した。「小凌、また人を派遣して青野蒼斗を殺そうとするの？」と問った。
久保影尊は低い声で「青野蒼斗は绝对に死ななければならない。彼が生きていれば、少林在家門人のこの名刺は笑い話になり、俺も笑い話になる」
久保氷情は一瞬考えて「いけない。もう人を派遣して青野蒼斗を殺すわけにはいかない」
「なぜ？」久保影尊がすぐに問った。
久保氷情が言う。「この件は本来、もし順調に雷暴と武田東が青野蒼斗を殺せれば、全ての痕跡は速く消えるだろう。が今は武田東が死に、青野蒼斗は無事だ。君は南区警察署にすでに痕跡を残している。一筋一筋調べれば、様々な手がかりが君を疑うようになる。もし再び手を出せば、燕京の人が君に注意を払うだろう。その時、燕京の上層部に君を倒そうとする人がいれば、君は非常に危険だ」
久保影尊は一瞬で寒気を感じた。
小姨の分析が非常に道理があることを知っていた。
ここ数年、久保影尊は順調に進んできた —— 每件の事を完璧に処理し、上の人も下の人も文句を言えないようにしてきたからだ。がもし自分の行動があまりに大胆すぎれば、やはり人に不快にさせるだろう。
昔、東北の喬四爷はどんなに傲慢だっただろう？
東北で指導者の車を追い越したことで、指導者の注意を引いた。最後にそれから間もなく、喬四爷は東北で完全に取り締まられた。
人間の力は国家機関には敵わない。
久保影尊は困惑して「おばさん、今どうしたらいい？」
久保氷情は微微一笑んで「小凌は一番頭がいいから。今はただ怒りで頭が混乱しているだけ。ちゃんと冷静になって考えれば、きっと方法が思いつく」
久保影尊はこの話を聞いて考えに耽った。
しばらくして「有った！」と言った。
久保氷情は嬉しそうに「話してみて」
久保影尊が言う。「色々な関係を利用して青野蒼斗を有罪にする。青野蒼斗が本当に刑務所に入ったら、刑務所の中で手を出す。もし青野蒼斗が逃げたら、それはさらに良い —— 人を派遣して殺せばいい」
久保氷情が言う。「そうだ、これが一番良い方法だ。何事も急ぐわけにはいかない」
久保影尊は計画がまとまって、ほっとため息をついた。突然立ち上がって久保氷情の腰を抱き、唇にキスをした。「ありがとう、おばさん。おばさんがそばにいなかったら、きっとよく間違いを犯すだろう。だからおばさんは離れていけない」
久保氷情はたちまち顔が赤くなって「早く離して！こんなに大きくなったのに、どうしてまだ礼儀知らずなの？」その足を踏み出す仕草は人を夢中にさせる魅力があった。
久保影尊は見とれてしまった。
久保氷情は振り返って去った。
楊家マンションには屋根裏部屋があり、その屋根裏部屋は空中の建物のようなデザインをしていた。美しくて豪華な造型だった。
屋根裏部屋の中はまるで宮殿のように、ここが久保氷情の住む場所だった。
久保影尊はこの小姨のために、本当に心血を注いでいた。
久保氷情が屋根裏部屋に戻ると、床には白い白鳥の羽根でできたカーペットが敷かれていて、裸足で踏むと、その感触は言葉で表せないくらい気持ちよかった。
この時、屋根裏部屋には明かりがついていなかった。
一片の暗闇だった。
久保氷情が入ってきて最初にしたことは靴を脱ぎ、裸足で踏み込むことだった。その後、チャイナドレスを脱いで、中の完璧な体を見せた。
紫色のランジェリーを着ていて、体つきは極めつけて美しかった。
がその瞬間、彼女の顔色が突然変わった —— ベッドの前に男が座っていることに気づいたからだ。
たった一瞬で、彼女の体は稲妻のように動いた。1 秒もかからずに、紫色のパジャマを着てベルトを締めた。
「どうして来たの？」久保氷情はベッドの前の男を冷たい目で見た。
ベッドの前の男は見た目は 20 代だが、髪は全部白い。白い坊主頭に黒いスーツを着ていた。
彼こそ、久保氷情の師兄・修羅だ。
修羅は微微一笑んで久保氷情を見て「师妹よ师妹、君の体つきはますます良くなったね。師兄の俺でも、君に心を動かされそうになる」
久保氷情の眼中に怒りが浮かんだ。
修羅がまた言う。「が君の実力は少し退化したね。俺がこんなに長い時間来ているのに気づかなかった」
久保氷情は鼻哼みをした —— 自分の実力が退化したわけではないことを知っていた。ただこの師兄があまりに変態で、実力が円熟した域に達して、空間や環境と一体化しているからだ。
彼はどこにいても、人に「当然ここにいる」と思わせる。
これが久保氷情が一時的に気づかなかった理由だ。
「無駄なことは言わない。何か用？」久保氷情が冷たく言った。
修羅は淡淡と笑って「師父が君に帰るように言っている。外に逃げ出している時間は十分だ。まさか、本当に君の甥と一緒にいたいの？こんな面目を失ってもいいの？楊家はこんな面目を失ってもいいの？」
久保氷情の眼中に怒りが浮かんで「話す時は注意しなさい」
修羅が言う。「君がやったことがあるのに、師兄が言ってはいけないの？さっさと俺と一緒に帰れ。師父が手配した —— 君を俺に嫁がせるんだ。これが君の運命だ！」
「夢見てる！」久保氷情が冷たく言った「绝对に君に嫁がない」
修羅はふふっと笑って「そう？これは師父の意思だよ。師父の意思に逆らえば、どんな結果になるか分からないぞ。もう一度聞くよ —— 帰る？それとも帰らない？帰らないなら、師父に報告する」
久保氷情の眼中に恐れが浮かんだ。一瞬考えて「師父に会うために、俺は君と一緒に行く」
修羅は満足そうに笑って「それが正しい選択だ！」
