殺人嫌疑浮上~青野、警察に引き取り調べ
橘柚緒が突然言った。「雾岛さんが言った家には住みたくないの」
青野蒼斗は一瞬呆れた —— 心の中では嬉しかったが、同時に矛盾していた。「なぜ?そっちの条件はここよりずっといいのに」
橘柚緒は一皿の料理を炒め終え、皿の縁を布巾で拭いながら言った。「特に理由はない。人の恩恵を受けたくないだけ」
青野は橘柚緒の顔色が急に不機嫌になったのを見て、「わかった。しず姐に断っておく」と言った。
実のところ、青野は頭の回転が速いから、橘柚緒の本音が分からないわけではなかった。
単純だ —— 橘柚緒は自分と離れたくないのだ。もし雾岛の家に住むと、二人が会う機会はきっと減る。青野もそっちに住むわけにはいかないし、住んだとしても「同棲」になって、噂になって誰にも悪い。橘柚緒の両親も受け入れられないだろう。
今の場所では、二人はもっと時間を過ごせるし、他人にも文句を言われない。
橘柚緒は青野に「心态を変える時間」を多く与えたいと思っていた。
青野は心の中で「良心の葛藤」を捨てた。橘柚緒の体には本当に恋しがっていて、離れられなかった。毎晩橘柚緒がシャワーを浴びているのを見れるのも、非常に幸せなことだった。
もちろん、青野には確かめられないことがあった —— もし本当に橘柚緒の体を得たら、今のような気持ちを保てるか?自分に自信がなくて、これが橘柚緒を本気で侵犯しない理由の一つだった。
夕食を食べ終えると、橘柚緒はお皿を片付けた。その後おやすみを言い合い、青野は自分の部屋に戻った。
午後 10 時になると、橘柚緒がまたトイレでシャワーを浴び始めた。
水音が哗哗と聞こえてくると、青野はバネのように跳び起きた。これが彼にとって最も興奮する瞬間だった。
「手に入らないものが一番良くて、最美しい」
青野は震えながら、トイレの中で全ての服を脱ぐ橘柚緒を見た。彼女の完璧な白い体が丸見えになった。
青野は興奮して、手をズボンの中に入れた。
が彼が最も楽しんでいる時、電話が突然鳴った。青野は驚いて携帯を取り出して応答した。
佐伯美玲からの電話だった。
電話を繋ぐと、佐伯美玲が甘い声で「青野蒼斗、今時間があるの?」と問った。
青野は焦って「今日は時間がない。後で話そう」と言ってすぐに電話を切った。その後、急いで「定位置」に戻って盗み見を続けた。
幸い、橘柚緒のシャワーは速くなかった。青野は「偉大な征程」を続けた。
発散し終えると、青野は満足してベッドに横になった。「自分は本当に卑屈だ」と思った —— 佐伯美玲が「本物の関係」を待っているのに行かず、ここで「空腹を満たす」だけだ。
この夜は何事もなく平穏だった。
翌日の朝、青野は橘柚緒を通勤に送った。橘柚緒を見ると、頭の中には彼女がシャワーを浴びていた姿が浮かび、心が浮き浮きした。
橘柚緒を送った後、青野は車を運転して花映社に行った。
会社に着くと、すぐに佐伯美玲に会った。佐伯美玲は青野に対して「恨み深い」表情をしていたが、青野はただふふっと傻笑りして何も言わなかった。佐伯美玲も青野にこれ以上話しかけず、振り返って去った。
青野はがっかりしなかった —— 佐伯美玲は美しいが、彼女の私生活がだいぶ乱れていることを知っていた。花映社はバーではないので、「一夜限りの関係」の後にそれぞれ別れられない。
昼休みの時、本来平穏だった花映社で意外な出来事が起きた。
サイレンを鳴らす 2 台の警察車が、どんよりと花映社のビル前に停まった。
青野は警備員の休憩室で仲間たちと「地主」をしていたが、音を聞いて「クソっ、俺を狙ってるのか?」と心がぎゅっと締まった。
どんな場合でも、青野は引き退くわけにはいかなかった。カードを捨てて「外で見てみよう」と言った。
警備員たちは青野に一蓮托生で、彼について休憩室を出た。
太陽が強く照りつけていた。
青野が仲間たちを率いて出ると、2 台の警察車から計 6 人の警察官が降りてきた。全員紺色のシャツの制服を着ていた。
6 人の中でリーダー格ののは、女性警察官だった。
この女性警察官は紺色のシャツを着て警察帽をかぶり、表情は冷たくて颯爽とした魅力を放っていた。一见しただけで、「役人の家のお嬢様」と分かる —— 気品があり、普通人は彼女を見るとすぐに自惭形秽して、直視できなくなる。
この女性警察官は北条真緒といい、24 歳だ。腰にはリボルバーを携帯していて、中には弾が込まれていた。普通の警察官は正式な任務以外で弾を入れることが許されないが、彼女は特例だった。
青野は北条真緒たちの前に来て、最初に見たのは北条真緒の胸だった。
これは彼の「職業病」のようなもので、見た後に心の中で点数をつけた ——36C、悪くない。
北条真緒はすぐに青野の視線を察知し、顔色が急に冷たくなった。
が、「胸を見られた」だけで怒るわけにはいかなかった —— 言い出せない理由だ。青野は平気で、にっこり笑って「美女ちゃん、どんな用事?」と言った。この男の口調は、まるでチンピラだった。
北条真緒は冷たく青野を見て「ここの責任者は誰?」と問った。
青野は口先は軽いが、心の中では慎重だった。「責任者を找うのはなぜ?俺たちの白川社長は、誰でも会うわけじゃないよ」
北条真緒は青野とくどくど話す気がなく「お前の名前は?」と問った。
青野が言う。「俺は夏で、夏博涛という。ここの警備隊長だ。どうしたの?」
後ろの警備員たちは愣けたが、誰も青野の嘘を暴かなかった。
北条真緒の目が輝いて「お前の部下に青野蒼斗という人がいるだろ?」と問った。
青野の心がぎゅっと締まった ——「クソっ、果然俺を狙ってる」。が「俺は犯罪してないじゃん?どうしたんだ?」
青野は心の中で疑問だらけだが、表情は変えずに「はい、部下に青野蒼斗という人がいる。彼に何か用?」と言った。
「彼を呼び出せ」北条真緒が冷たく言った。
青野が言う。「呼び出してもいいが、少なくとも何のために找うか言ってくれ?青野蒼斗は俺がよく知っている。徳知体美労が全面的に優れた良い青年だ」
後ろの警備員たちは、警察が来た時は心配していたが、青野が自分を自慢するのを聞いて笑いたくなった。が本当に笑うわけにはいかないので、我慢しなければならなかった。
北条真緒は冷たく青野を見下して「機密なので言えない。すぐに彼を呼び出せ」
青野がだるそうに言う。「おー、そうか。だったら彼がどこにいるのも機密だ。言えないよ」
北条真緒の後ろにいた男性警察官が、すぐに威勢よく前に出て「さらに言い返せば、公務執行を妨害する。拘置所に入りたくなければ、ちゃんと答えろ。ここで冗談を言う場所じゃない」と怒鳴った。
青野はふふっと笑って「あらあら、警察さん、なかなか威張ってるね。怖いですよ~。来い、俺を捕まえなさい」と言って手を差し出した。
男性警察官は激怒して、キラキラした手錠を取り出して青野を繋ごうとした。
青野がにっこり笑って「言っておくけど、俺は微博の大物 V をたくさん知ってるよ。韩寒も俺の友達だ。俺を繋いだら、微博で曝光するよ。『乱暴な取り調べをして、善良な民衆をいじめる』ってね」
男性警察官はこの話を聞いて一瞬呆れた —— 本当にこれを恐れていた。
一旦曝光されたら、上司は「民衆の怒りを収めるため」に自分を処分するだろう。
男性警察官は意気消沈して後ろに下がった。北条真緒は嗤うように言う。「お前が善良な民衆?ただの悪徳民だ」。その後、部下に指示を出した。「小周、小佐伯、入り口を守って。誰も外に出さない。俺たちは中に入って責任者を找う」
北条真緒は言って残りの 3 人の警察官と一緒に中に入った。青野はこの時、邪魔するわけにはいかなかった。がこの様子を見て、「事態が悪い」と分かった。
「クソっ、この警察は俺を找うのはなぜ?俺は犯罪してないじゃん!」
青野はどうしても理由が分からなかったが、一つ確かなことがあった —— 警察の到来はきっと久保影尊と関係がある。久保影尊はこれで甘んじて受け入れないつもりだ。
青野は一時的に整理がつかなかった。
彼が考えている時、夏目忠が突然ビルから出てきて「青野蒼斗、どうしたんだ?」と叫んだ。
北条真緒たちはすぐに足を止め、全員青野を振り返って見た。
「お前が青野蒼斗?」男性警察官はすぐに凶暴な目つきになった。
青野はふふっと笑って「そうだ、俺が青野蒼斗だ。どんなに興奮しても無駄だ。俺は男が好きじゃないから」
男性警察官は冷笑して「今は口先が上手いだけだ。後で泣く時がある」
その後、北条真緒も冷たく青野の前に来て、キラキラした手錠を見せて「陳さん、殺人事件と関係がある疑いがあるので、一緒に戻って調べに協力してください」と言った。
青野のように平然とした人でも、この時は驚いた。「殺人?俺が誰を殺したんだ、クソっ!」
周りの警備員たちも顔色を変えた。
北条真緒は眉を寄せ、手錠を直接青野の手に繋いだ。
「2 日前、横須賀中央商店街の携帯店に行って、店長の近藤狭香を殴打しただろ?」
青野は頷いて「そうだ。あの女はこんなに太くて丈夫だったのに、死んだって言うの?」
北条真緒が言う。「彼女は今日の午前 8 時、心臓発作で死亡した」
青野は少し安心して「2 日前のことだから、俺と何関係があるんだ?」
北条真緒が言う。「近藤狭香の家族は、『青野に殴打された後、体調がだんだん悪くなり、心臓にも問題が起きた』と話している。近藤狭香には心臓病の既往歴がないので、この件の起因はお前だ。だから調べに協力していただく必要がある」
青野はこの話を聞いて「わかった」と言った。




