武田拳心が仲介!佐伯の誘いと青野の選択
白川霜雪は依然として白い小さなスーツを着て、清冽で仕事のできる雰囲気を放っていた。
「死んだ蒼斗!また遅刻したね」花泽桃凛は小さな拳を握って「給料を減らすよ」と言った。
青野蒼斗は花泽の機嫌が良いのを見て、自分も気持ちがよくなった。にっこり笑って「減って減っていい。反正嫁にも娶えないから、君に赖るよ」と言った。
花泽はポップリと舌打ちして「くそっ!本当に美人なのに、君この牛糞に挿すわけ?」
青野はにっこり笑って「花は牛糞に挿すのが栄養が良いんだよ」
花泽はまたポップリと「君は夢見てるの?言ってるよ、たとえ女が着物だとしても、姉は君が着れない高級ブランドだ」
青野はふふっと笑って「俺は女の着物を着ないよ。でも女が着物を着ないのが好きだ」
花泽はたちまち顔が赤くなり、「汚い青野蒼斗!君は本当に変態だ」と啐いた。
白川はそばで二人の話がどんどんエスカレートしているのを見て、どうしようもなく咳をすると「いいからいいから。君たちは会うたびに喧嘩しないと気が済まないの?」と言った。
青野はにっこり笑って花泽のそばに座った。花泽も離れなかった —— 心の中では本当に青野を嫌っているわけではなかった。
白川は話を一旦止めて「青野蒼斗、今日君を呼んだのは、いい知らせがあるから」と言った。
青野は一瞬愣けて「どんないい知らせ?」と聞き返した。
白川がにっこり笑って「この件は、全部桃凛に感谢しなきゃいけない」
青野はすぐに花泽を見た —— 困惑していた。
花泽はこの時少し照れくさそうに「外公が実は高手で、奈良でも高い名声があることを今さら知ったの。こっちのことを外公に話したら、『少林在家門人の団体が絡むから、この件は複雑で厄介だが、長辈たちと一緒に大阪に行って久保グループの楊家少主に会い、話し合ってこの怨みを解決しよう』と言ってくれたの」
青野は心から嬉しかった —— まさに眠い時に枕が届くようなものだ。がすぐに「花泽の外公が本当にこの件を解決できるか」と心配になった。
「外公の名前は?」青野が問った。
「武田拳心!」花泽が答えた。
「わかった」青野は深呼吸をして「君たちはここで待って。ちょっと用事があるから処理してくる」と言って社長室を出た。
青野はもちろん武田拳心を知らなかった —— 国外から帰ってきたばかりで、国内の武術界の事情はまったく知らなかった。
オフィスを出ると、青野は警備員の休憩室に行った。まず雾岛静に電話をかけて武田拳心のことを聞いた。雾岛は「花泽と武田の関係」を聞き、さらに「武田が長辈たちと一緒に大阪に行って怨みを解決する」と聞くと、すぐに大喜びした。
雾岛が哈哈大笑して「青野蒼斗、君は本当に幸運が良いな。奈良は武術の聖地で、武田拳心長辈は『奈良武王』と呼ばれて威望が高い。今回彼が出面してくれれば、久保影尊はどうしても面目を付けてくれるだろう」
青野は鼻を掻いた —— 他人に頼る感じは好きではなかったが、こんな大きなトラブルを解決できればそれで良かった。ほっとため息をついて心の中で「解決できれば良い」と思った。
電話を切ると、青野は休憩用の竹の椅子に横になった。扇風機が回っていて、非常にくつろげた。
この日は何事もなく平穏だった。
青野は気持ちをリラックスさせ、处々と歩き回りながら、時折佐伯美玲をからかったり、花泽桃凛を邪魔したりして —— 小さな日々はとても楽しかった。
午後、もうすぐ退社時間になった。青野は竹の椅子に横になり、隣の若い警備員たちが扇风机をかけながら、彼の自慢話を聞いていた。
その時、佐伯美玲が来た。
この妖艶な女は黒いミニスカートを着て、白い太ももは豊かで丸みを帯いていた。上半身の豊かさは溢れ出そうになって —— この女の体つきは本当に人を夢中にさせる。彼女が来ると、若い警備員たちはすぐに緊張した。佐伯美玲は妖艶だが、強い存在感を持つ女だから。普通の若者は彼女を見ると、みんな自惭形秽してしまう。
青野だけは、警備員だった時からこんな自覚がなかった。これが佐伯美玲が最初、青野に特别に不満を持っていた理由だ。
佐伯美玲が入ると、若い警備員たちに「ちょっと外で待って。青野蒼斗と仕事のことで話したいから」と言った。
若い警備員たちはすぐに四散した。佐伯美玲は手早く戸を閉めた。
休憩室には電気をつけていなかったので、すぐに薄暗くなった。薄暗さの中で、無端に情欲的な雰囲気が湧き出した。
青野はすぐに緊張し、落ち着かなくなって興奮した。「クソっ、佐伯美玲は俺に献身しようとしてるの?」「俺はどっちでもいいけど、この場所はちょっと刺激的だろ?」
佐伯美玲が近づくと、青野は彼女の体から漂う誘惑的な香りを嗅いだ。
青野はすぐに起き上がった —— 体が反応してしまい、立っていないと照れが隠せなかった。「美玲姐、何か用?手伝うことがあったら言って。すぐにやるよ」
この時、佐伯美玲がこんな態度を取ると、彼は口先でからかう勇気がなくなった。
佐伯美玲はふっと笑って、青野のそばに来ると突然、青野の膝の上に座った。
「クソっ!」
青野はさらに落ち着かなくなった —— 佐伯美玲のお尻の柔らかさと弾力を感じた。「美玲姐……」喉が渇いてきた。
佐伯美玲はきゃっきゃっと笑って、突然青野の首を掴んで「臭い小子、平気で大胆だったのに、どうして今は臆病になったの?」と言った。
青野はふふっと傻笑りした —— 佐伯美玲の本当の意図が分からなかった。
佐伯美玲が続けて「夜は時間がある?俺の家で夕食を食べない?」と問った。
「クソっ!」
これは明らかに「デートの合図」だ!
青野は心の中で興奮したが、すぐに「ええと、時間がないんだ」と答えた。
冗談だ —— 橘柚绪を退社に迎えに行かなきゃいけないし、橘柚绪もここに住む時間があと数日しかないから、逃すわけにはいかない。それに、橘柚绪に「少し時間をくれ」と約束したのに、まだ変わることもなく夜に間違いを犯すわけにはいかない。
「君子は財を愛でも、道に従う」だろ?
佐伯美玲は一瞬愣けた —— 青野が拒否するとは思わなかった。目つきが暗くなって「どうして?」と問った。
青野は美女を怒らせたくなかったので、すぐに苦しい顔をして「美玲姐の家で夕食を食べたいと思うのは一万回もあるよ!でも白川社長と花澤部長が、夜は一緒にいなきゃいけないって言ったんだ」
佐伯美玲の顔色はすぐに和らいで「それなら、夜遅く俺の家で夜食を食べない?」と問った。
青野は呆れた —— この女は本当に渇いているんだ?
「うん、いいよ」と答えた。
本当に行くつもりはなかった —— 自分の性質を知っているから、本当に行ったらきっと問題が起きる。でも今は一旦応じて、夜に適当な理由をつけて拒否すればいい。
佐伯美玲は青野が応じたのを見て、すぐに嬉しそうに笑って「那就这么定了(それで決まりね)」と言った。その後青野の頬にキスをして、ゆっくりと立ち去った。彼女が去ると、当然香りが残った。
青野の最初の反応は、頬の口紅の跡を拭くことだった。花柳界の老手だから、誰にも見られないように痕迹を残さないのは常識だ。
佐伯美玲が去った後、八卦好きな若い警備員たちがすぐに囲みかかり、色々聞いた。
青野は彼らに八卦のネタを渡すわけにはいかなかったので、真面目な顔をして「佐伯主管が、最近このビルが不安定かもしれないし、俺たちのチームの中に外部の人に買収された人がいるかもしれないって言った。気をつけなきゃいけないって」
若い警備員たちは顔が青くなって、すぐに忠誠を誓った。
青野は真面目な顔をして「俺はもちろん君たちを信じてる。でもこの件は、絕対に広めちゃいけないよ」
彼らはすぐに「はい!」と答えた。
青野は心の中でふふっと笑った。
佐伯美玲が青野を找ったのは、「青野が好きで結婚したい」というわけではなかった。ただ、佐伯美玲も風流な女だった —— 普段は美色で顧客を喜ばせていた。青野に「男らしい魅力がある」と感じて、「一夜限りの恋人になって、一晩一緒に過ごそう」と思っただけだ。
以前の青野であれば、佐伯美玲のような美女は求めても得られないものだった。が不幸にも、今の青野は橘柚绪に出会って —— いわば「改心した」のだ。
午後 5 時、青野はきちんと自分のシャリーを運転して橘柚绪を退社に迎えに行った。この男は白川霜雪と花泽桃凛のボディガード兼運転手だが、よく両方の雇い主を置いて不管不顾に行く。
白川と花泽も青野の性質を知っているので、寛容に対応していた。
今、奈良武王武田拳心が出面してくれることで、青野も雾岛静も、白川霜雪も花泽桃凛も —— みんな大大方々と胸を緩めた。
茶屋に着くと、橘柚绪も退社の準備をしていた。青野が来ると、自然に車に乗った。
雾岛静はいなかったので、青野は茶屋に長く滞在しなかった。
帰る途中、夕日が燃えていた。
大通りには太陽の光が差し込んできらきらと輝いて —— これは良い天気だった。前の道はまるで幸せな康荘大道のようだった。青野は運転しながら橘柚绪に「柚緒姐、夜は何を食べたい?俺が奢るよ」と言った。
橘柚绪は一瞬愣けて「それより、食材を買って家で料理を作ろう?」と言った。
青野は少し面倒だと思ったが、橘柚绪はそれを見て「俺の作った料理が嫌い?」と問った。
「もちろん嫌いじゃない」青野は愛嬌話が得意だったので、すぐに「柚緒姐が疲れるのが心配だから」と言った。
橘柚绪はこの話を聞いて心が甘くなり、淡く笑って「そんなに疲れないよ」と言った。
その場で青野は橘柚绪の意見に従い、一緒にスーパーマーケットに食材を買いに行った。食材を買った後、アパートに戻った。
料理を作る時、青野はちゃんとそばで野菜を洗ったり摘んだり手伝った。
明かりが輝き、雰囲気は温かくて甘かった。




