艶やか猛女課長!
青野蒼斗の勤め先は花映化粧品会社だ。花映社の規模はそれほど大きくないが、生産する香水の売上は結構好調で、会社の資産は既に 20 億円に達していた。
ただ横須賀は観光業が盛んな都市だから、市内で見ると、この会社は中堅下級の規模に過ぎない。
青野蒼斗は花映社で「誇り高き警備員」—— つまり保安員として働いている。
花映社の所在地は翠嵐ビル。このビルは全部で 4 階建てで、花映社が全階を貸し切って使用している。
青野がビルに着くと、まず警備員の休憩室に行って制服に着替えた。
「おい、夏目忠!今日はどうしたんだ?いつもは大きな声で自慢話してたのに、なんでこんな静かだ?」休憩室のドアも開けないうち、青野の声が部屋の中に響いた。
夏目忠は警備隊長で、青野は人付き合いがよくて細かいことを気にしない性格だから、休憩室の仲間たちとも意見が合う。
だが青野が休憩室に入ると、すぐに会社の営業部長・佐伯美玲が顔を曇らせて自分を見つめているのを見た。
「クソ、またこの女か」佐伯美玲を見て、青野は一瞬で状況を理解した。
夏目忠や他の警備員たちは、みんな横で黙っていて大きな声も出せない。その表情は、「青野、今日は大変だぞ」と言わんばかりだ。
佐伯美玲は黒いヒップスカートを着て、セクシーで艶やか。背も高く、黒いストッキングを履いた美脚は、男を狂わせるほど魅力的だ。
だがこの女は、顧客に対しては無限に親切だが、部下に対しては氷のように冷たい。
青野と佐伯美玲の間には前から「恨み」がある —— 一回、夏目忠たちが佐伯美玲のスタイルについて吹き込んでいた時、青野が仲間たちと気持ちを合わせるため、「佐伯美玲のお尻は、触ったらきっと気持ちいいだろう」と言ったことが原因だ。
偏って、その言葉を佐伯美玲本人に聞かれてしまった。
それ以来、佐伯美玲は青野を恨み込んだ。
青野自身も「無念」だと思っている —— 夏目忠たちは「佐伯美玲は顧客と同棲している」など、もっと過激なことを言っていたのに、なぜ自分だけが「的」に当たったのか。
しかし佐伯美玲は営業部長で、警備部のことは管轄していない。
それでも佐伯美玲は青野を常に「見張って」いて、荷物運びなどの重労働があると、躊躇もせずに青野に頼む。青野は力があるから、そんなことは気にしないが。
さて話は戻る。青野は手をこすりながら、ぎこちない笑顔を浮かべて言った:「佐伯部長、おはようございます!今日も本当に美しいですね。どうしてこちらまでお越しになったんですか?」
佐伯美玲は冷笑して言った:「青野蒼斗、君は 30 分も遅刻したね。今月で 3 回目の遅刻だ。会社の規定によれば、解雇してもいいレベルだ」
青野の心がガクンと落ちた。彼は佐伯美玲をにらみつけ、心の中で「この女、本当に手強い!やっぱりいつも俺を見張ってたんだ」と思った。
夏目忠は慌てて仲裁に入り:「佐伯部長、青野はまだ若いので物事のわかり方が足りないです。もう一回チャンスを与えてください。遅刻分は給料から差し引けばいいですよ」
青野もすぐに同意し:「そうです、そうです!」
佐伯美玲は夏目忠を厳しくにらみつけ:「夏目隊長、まだ君のことを言っていないでしょ?前の 2 回、青野が 40 分と 1 時間遅刻した時、なぜ記録に残さなかったんだ?君も隊長を辞めたいのか?」
夏目忠は小さなリーダーだが、もう 50 代に近くてこの仕事を得るのは容易ではない。しかも佐伯美玲は社長・白川霜雪の側近だ。だから彼女を怒らせるわけにはいかず、ただもの言いながら黙るしかなかった。最後に青野を無念そうに見て、「力に及ばない」と伝えた。
青野は呆れて言った:「佐伯部長、您は営業部の部長でしょ?こちらの出勤管理まで管轄するのは、人事部の上司たちを無視しているようじゃないですか?」
佐伯美玲は冷たい声で言った:「つまり、俺が余計なことをしているって言うの?」
青野はため息をついて:「ええ、それは您自身が言ったことですよ」
佐伯美玲は怒りで顔が真っ白になった。この野郎、胆が大きすぎる!自分の威厳を無視している!彼女は歯を食いしばって:「待ってろ!今から人事部に行く!」と言い終わると、部屋から出ていった。
休憩室のドアを開けたばかりで、後ろから青野の声が追いかけてきた。
「ちょっと待て!」
佐伯美玲は心の中で冷笑し、足を止めた。「この野郎、やっと怖くなったのか?謝ろうとしているのか?哼、どんなに謝っても、絶対に許さない」
彼女は振り返って青野を見た —— 青野が屈服した表情を見たかったのだ。
だが青野は皮肉な口調で言った:「佐伯部長、胸ボタンが外れちゃったよ」
佐伯美玲は本能的に下を向いた。
彼女の黒いスカートには胸ボタンがついていたが、本来はしっかり締まっていたのに、どうしたわけか外れていて……
言わずもがかり、佐伯美玲は性格は厳しくて恩知らずだが、肉体的な魅力は確かにある。これは彼女の「実力」だ!
佐伯美玲は思わず「あっ」と叫び、顔が真っ赤になった。急いで背を向け、素早く胸ボタンを締め直した。
その時、青野がゆっくりと言った:「佐伯部長、本当に俺を解雇すると、これから俺をいじめることができなくなりますよ?反正、外で保安の仕事を探すのも難しくないです。でもそうなると、您はもう俺の上司じゃなくなりますよ」
佐伯美玲の心がガクンと動いた。「そうだね、保安の仕事は特別なものじゃない。いや、解雇しちゃいけない。この野郎をゆっくりいじめなきゃ」
そう思うと、彼女は振り返って厳しい声で:「俺がどうするか、君に指図されるわけじゃない」と言い、廊下に向かって歩いていった。
急いで歩きすぎて、足をつまずいてスリップした。思わず悲鳴を上げ、ドン引きで転ぶ寸前だった。
この床は滑りやすい大理石だから、これから転んだらけがをする可能性が高い。
その瞬間、佐伯美玲は目の前で人影が一晃った。
次の瞬間、自分は誰かの体の上に倒れ込んだ。
もちろん、その人は青野蒼斗だ。此刻、佐伯美玲は青野の体の上に乗りかかっていた。
二人の姿勢は非常に曖昧だ。
本来、青野は佐伯美玲を直接掴むこともできたが、迷いもせずに「横になる」選択をした。
佐伯美玲は耳まで赤くなった。
青野はすぐに正しい態度で:「美玲姐、俺は大丈夫です。痛くないです」
この野郎、また機会を逃さない性格を発揮している。
佐伯美玲も、青野が自分を助けてくれたことを考えると、責めるわけにはいかなかった。
青野もすぐに起き上がった —— 体にはまだ佐伯美玲の香りが残っていて、この感覚は本当に忘れられない!




