柚緒の献身と青野の告白~黒田乱入で大打出手
家に帰ると、橘柚緒が青野蒼斗を誘って「ちょっと俺の部屋に来ない?冷やしスイカジュースを搾ってあげるよ」と言った。
青野は本当に行きたかったが、思い切って拒否した。「不了、今日はちょっと疲れたから早く寝たい」
橘柚緒の眼中にはがっかりした色が浮かんだが、何も言わずに「そうだね、ゆっくり休んで」と答えた。
青野はアパートに戻り、ドアを閉めた。電気をつけずに部屋は暗かった。その後タバコに火をつけ、火がきらめいた。
普段の青野はタバコを吸う習慣がなく、特に悩んだ時だけこうする。いつもは洒脱で何も掛け替えのない青野だが、今は橘柚緒が心を乱して矛盾していた。
一本タバコを吸い終えると、青野はベッドに横になって眠った。
が、眠りについたと思ったらノックの音がした。橘柚緒だった。
「青野蒼斗、寝てるの?」ドアの外で橘柚緒が呼んだ。
青野は起きてドアを開けた。橘柚緒は外に立って、青いホームウェアを着てポニーテールをしている —— シンプルで美しかった。
青野は橘柚緒が手にスイカジュースを持っているのを見て、心が温かくなった。
橘柚緒が嫣然一笑して「冷やしてあるから、飲んでから寝たら気持ちいいよ」と言った。
青野はにっこり笑って「柚緒姐、本当に優しいね」
橘柚緒は大喜びで「早く飲んで。邪魔しないから」と言って振り返って行こうとした。
青野が思わず「柚緒姐」と呼んだ。
橘柚緒は意識を戻して青野を不思議そうに見た。
青野が言う。「一緒に部屋で飲もう。話したいことがあるんだ」
橘柚緒の頬が少し赤くなった。青野が何を話そうとしているか分からなかった —— 告白するのか拒否するのか、どちらにしても心が乱れた。
最後に橘柚緒は頷いて部屋に入った。
青野はコップを取り、橘柚緒と自分用にそれぞれスイカジュースを注いだ。その後、一杯のジュースを一気に飲み干した。
「柚緒姐、俺は君のことが好きだ」青野が突然言った。
橘柚緒の頬はたちまち真っ赤になり、心拍数が上がってどう反応していいか分からなかった。
青野が続けて言う。「初めて君を見た時、君が他の人とは違ってすごく惹かれた。いつも君のことを夢に見るよ」
橘柚緒は話したくても言葉が出ず —— 心の中では青野のことが好きだったが、たくさんの不安があった。
「ちょっと待って、柚緒姐。話を最後まで聞いて」青野が言った。
橘柚緒は一瞬愣けて、何か違うことに気づいた。
青野が言う。「君を傷つけたくない。以前の俺は放浪者で、最低な男だった。一緒に寝た女がどれだけいたか数え切れない。バーで気が合ったら一緒に寝て、朝起きたらそれぞれ別れて絆を残さなかった。生まれてから師匠と一緒にいて、師匠は厳しく育ててくれた。だから頼る人がなくて独りで生活することに慣れていた。国外でのこの数年、何も掛け替えがなくて楽しかった。女と一生一緒にいる姿を想像できない」
橘柚緒の顔はたちまち青ざめ、震えながら「どういう意味?」と問った。
青野は深呼吸をして「本来は君と関係を持つだけで、これからのことは考えていなかった。でも今は矛盾している。こんな話をするのは、柚緒姐を傷つけたくないからだ」
「分かった…… 君は俺と絶縁したいんだね?」橘柚緒が哀しげに笑って「違うわ。俺たちは一度も一緒になったことがないから、絶縁なんてできないね」
青野は本来、ゆっくりと橘柚緒との距離を置くつもりだったが、橘柚緒が自分に対して太好了。そのやり方ではかえって橘柚緒を傷つけると思い、主意を変えて今すぐ話をはっきりさせた。
「柚緒姐」青野が言う。「君のことを気にかけていなかったら、こんな話をしない。単に遊びたかったら、さらに話す必要はない。打ち明けるのは、君のことがだんだん好きになって気にかけるようになったからだ。でも結婚したり家庭を作ったりすることには、まだ準備ができていない。結婚することさえ怖い」
橘柚緒は青野を直視して、彼の誠実さを感じ取った。その瞬間、悲しみは少し和らいだ。
「分かったよ、青野蒼斗」橘柚緒が立ち上がって「率直に話してくれてありがとう」と言った。その後青野の部屋を出た。
青野の心は一瞬虚しくなった ——「俺は本当に最低だ」と思った。がどうしても結婚したくなく、横須賀に絆されたくなかった。自由な生活に慣れていたからだ。
しばらくすると、トイレから水音が聞こえた。青野はさっきの憂いを一瞬忘れて興奮した ——「やっぱり本能の呼びかけに逆らえない」と思った。
今日は橘柚緒に話をはっきりさせたから、今後はもうこんな機会がないだろう。青野はためらうことなく跳び起き、壁のレンガの欠片を抜いた。
橘柚緒の艶やかな白い体が青野の目の前に広がった。青野は見とれていた。
がその瞬間、橘柚緒が疑わしげにこっちを見た。青野は大慌てでレンガの欠片を戻した ——「一世の名をここで潰すわけにはいかない」
これで青野はもう見る勇気がなくなった。すぐに橘柚緒もシャワーを終えた。
が青野は思わなかったのは、ノックの音がまたしたことだ。橘柚緒の足音だと分かった。
青野はドアを開けた。橘柚緒が外に立っている —— その瞬間青野は呆れて、体内の血液が沸き上がりホルモンが急上昇した。
今の橘柚緒は实在に妖艶でセクシーだった。紫のパジャマを着て、髪は濡れたままで額の髪が几重に重なっていた。その上、下着を着ていないことが明らかに —— パジャマの下から豊かな胸の輪郭が見えた。
青野はつらい思いで唾液を飲み込んだ。橘柚緒の表情は平穏で、むしろ少し冷たかった。部屋に入ると、青野のベッドに横になった。
青野がどもりながら「柚緒姐……」
橘柚緒が淡く冷たく言う。「君は俺とやりたいだけでしょ?来なさい。絶対に纠缠しないから、君が以前いた女たちと同じように、一夜明けたら離れる」
青野は橘柚緒の心が死んだような調子を聞いて、心が痛くなった。この時、欲望は一掃されてベッドの前に急いで行き、布団を引いて橘柚緒の体を包んだ。抱き上げて胸に抱き込み「ごめんね、柚緒姐」
橘柚緒は何も言わずに青野の肩に寄りかかり、涙が一滴滴こぼれた。その涙はきらきらと、見る人を哀しませた。
橘柚緒は本当に青野のことが好きになっていた。前夫の佐伯劣を選ぶ間違いをした後、恋愛には用心深かった。青野とは合わないことを知っていても、どうしても引き寄せられていた。
が青野の今夜の話は本当に傷ついた。一瞬、自暴自棄になって今のように献身することにしたのだ。
が今、青野の抱擁は橘柚緒に言葉で表せない感動と温かみを与えた。「自分は青野を間違って選んでいなかった」と思った。ただ運命が悪かっただけだ。
橘柚緒は静かに青野の胸に横になっていた。青野は橘柚緒の体を抱きながら、最初は心配だったが、だんだん彼女の体に惹かれ始めた。さらに致命的なのは、橘柚緒の体から天然の香りがどんどん鼻に入ってくることだった。
青野は本当に興奮した —— 橘柚緒の体を思い続けてきたからだ。
が偏にこの時、意外なことが起きた。外から車のタイヤが地面を擦る音が聞こえた。青野は心を引き締めて「トラブルが来た」と思った。
橘柚緒もこの瞬間、意識が戻って荒唐だと思い、慌てて布団で体を隠した。
青野はため息をついた ——「今日は橘柚緒を手に入れられないな」。今後はもう機会がないだろう。怒りが湧いて「誰がこんな時に邪魔するんだ」と思った。
その思いがまだ収まらないうちに、ドアがドンと一足で蹴り破られた。
続いて黒田鉄蔵が入り口に現れた。黒田は黒いカジュアルシャツを着てサングラスをかけ、丸坊主の髪型が非常に悪徳な雰囲気を放っていた。彼の目は部屋中をスキャンし、すぐに部屋の艶やかな状況を見抜いた。その淫らな視線を橘柚緒の体に落とし、最後に青野の身上に定着した。
「俺、悪いタイミングに来ちゃったか?雑魚のいいことを邪魔しちゃったな」黒田が冷笑して「雑魚、運がいいね。こんなエロい女、最高の熟女を手に入れたんだ……」
黒田の口は本当に悪趣味だった。この時、青野は黒田と口論するつもりはなかった —— それは青野のスタイルじゃなかった。
青野の眼中に寒さが閃き、鼻哼みをして突然矢のように飛び出した。体は白駒の隙を通るように速く、瞬く間に黒田の前に来た。その後パチンと、黒田の頬に強く平手打ちを入れた。
黒田は眼前がひらめくように何も見えず、頬に激しい痛みを感じた。頬が半分腫れ上がったことに気づいた。「俺は堂堂な警備王だ!こんな風に平手打ちをされるわけがない」と怒りが爆発した。
パチン!
青野はまた平手打ちを入れた。続いて黒田の腹部を一足蹴った。黒田はどたどた後ろに退き、ついに支えきれずに地面に倒れた。青野は黒田が反応する前に再び飛びかかり、足で黒田の顔を踏みつけた。




