表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

第1話 観測ユニット、任地へ

 霧が晴れたのは、村の鐘が朝を告げたときだった。


 ティアレはひとり、林道の外れに立っていた。

 外套のように大きめのジャケットのフードを深くかぶり、その奥で、灰色がかった銀の髪が揺れている。


 彼女の肩には、観測機材のアンカーが取り付けられていた。黒と青の無機質な筐体が、明滅する微細な光とともに、周囲の魔力濃度を静かに記録している。


 「……観測モード、継続。異常なし」

 小さく、ティアレはつぶやいた。


 この村に派遣されたのは、数時間前のことだった。


 南方の辺境。王国の地図にも載っていない、無名の村。

 村には襲撃の予兆があるとされ、戦闘型ノクシアが先行して投入される予定だった。


 だが、その前に送られたのは、観測ユニット――つまり、ティアレだった。


 彼女の任務は、敵影の記録と精霊詩の揺らぎの検出。

 戦闘は想定されていない。されてはならない。


 「……命令は、敵意の有無を判断し、帰還の可否を上層に送信すること」


 フードの奥で、彼女の目が淡く光る。

 感情ではなく、機能で状況を測る目だ。


 しかし――村の中から、誰かの悲鳴が上がった。


 瞬間、ティアレの体がわずかに動いた。

 命令にはない行動。それでも、彼女の手は、腰に装着された通信装置に伸びていた。


 「ティアレ。観測を中断し、移動します」

 それは、彼女の中で芽吹いた、はじめての“判断”だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ