7/22
【ex-04c】ティアレ(Tiare)
南方辺境の修道院。
石造りの礼拝堂に、精霊の名を織り込んだ聖句が低く響いていた。
観測ユニット・ティアレは、静かに跪いて命を待つ。
彼女に与えられた詩型は「観測」――戦うためではなく、敵の兆しを読み取り、報告するためのもの。
剣を振るうことも、矢を射ることもできない。
「命令:任地に赴き、外界の兆候を記録せよ」
冷たい声が降り、背に刻まれた符印が淡く光を放つ。
それは彼女の存在理由であり、逃れることのできない拘束。
やがてティアレは、修道院を後にして小さな村へと歩みを進める。
その地で出会う少女リーシャとの邂逅が、命令しか知らぬ彼女に新たな揺らぎをもたらすことになるとは、まだ誰も知らなかった――。