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Lost19 ブレイダス防衛戦  作者: JHST
第六章 停戦
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⑧ブレイダスからの脱出

「済まない、遅くなった」

 真っ先にタイサは頭を下げる。


「気にするな」

 最初に言葉を返したのは隅の木箱に座っていた戦友(デル)だった。焼け焦げた服や装備は新調され、包帯で巻かれた左腕の上からは新しい手甲が巻かれていた。

 彼の傍では板で組まれたベッドがあり、そこでは鎧を脱いだイリーナが寝息をたてていた。デルがフォースィから聞いた話では力の使い過ぎらしい。


「まったく大の大人が情けない。少しは落ち着いたのかしら?」

 少女の声と同時に、タイサの後頭部が杖の先で叩かれる。赤いスカートと上品な白い服を纏った十二歳、十三歳の女の子だったが、タイサは黒髪と彼女と同じ長さの魔導杖でその正体がフォースィだと気付く。

「あぁ、迷惑をかけた………その服、似合ってるぞ」

 少しでも機嫌を取ろうと、タイサは目から下で笑って見せた。

「煩いわね。好きで着ている訳じゃないの。エコー、後でそこの駄目男に女性の褒め方を教えておきなさい? そうしないと、さっき私に色々な服を薦めてきた変態と同じになるわよ」

 不機嫌になった彼女は、エコーに全てを任せると奥へと進んでいった。

「それは困りますね。分かりました、後で()()()()と教えておきます」

「ぐむむむむ」

 エコーは唸るタイサの横で口元に手を置いて笑い出す。。


 数分後。

 街の外周へ偵察に出ていたボーマ、騎士達への指示を出し終えたシエンがそれぞれ本部に集合し、状況の報告と今後についての話し合いが行われた。

 デルは全員に声をかけ、地図の乗った机を中心に円をつくるように集めさせる。


「それでは立場上、俺が話を進めさてもらう………まずはシエン、報告を頼む」

 デルは集まっている仲間の中で、唯一立っている女性騎士に声をかけた。

「はい。現在生存している騎士は八十五名。うち戦闘が行えない重傷者は十五名です。既に脱出の為に必要な数の馬車を確保し、物資と重傷者の運搬を指示しています」

「………脱出か、まぁそれしかないだろうな」

 頬杖をついていたタイサは、既に進められていた事に反論しなかった。フォースィ達も事前に聞かされているらしく、意見らしい意見も出ない。

「まぁ、ここにいても何もする事がないからな。ボーマ、魔王軍の動きはどうだった?」

 デルが話を進める。

「ういっす。奴らは本当に撤退したようで、街の外、さらに外壁の上からも見て回りましたが、特にそれらしい姿は見られませんでしたね」

 物資も揃い、敵もいない。脱出するには十分な条件が揃った事になる。


「なら明日の出発に問題はなさそうだな………あるとすれば」

 デルがタイサに顔を向けた。

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