⑦小さな、しかし致命的な事件
「二百年前か。あれから母親の事で何か分かったのか?」
タイサが話を変える。
「まだ何とも言えないけれど、それでもここ最近分かってきた事もあったわ。取り敢えず、この後は王都に戻って、色々と事情を知っていそうな人に会ってくる予定よ」
「王都に? 誰だ?」
デルが首を傾げる。
「王国宰相クライル・バージル。彼はカデリアの勇者の仲間の末裔よ」
彼女の言葉に、タイサとデルは思わず顔を合わせた。
「おいおい、それは初耳だ。つまり―――」「お話し中、申し訳ありません」
タイサが話している途中、背後からエコーがボーマと共にやって来た。
「おぉ、エコー。済まないな、うちの妹を任せっきりで」
振り返ったタイサが申し訳なさそうな表情で苦笑するが、エコーは迷いながらボーマの方を向く。
そしてボーマの方が口を開いた。
「その事ですが…………隊長、ちょっといいですかね」
いつになく真面目な顔を作つくるボーマに、タイサも何かがあったと表情を戻す。
「どうしたボーマ。構わないから報告してくれ」
タイサが立ち上がり、二人の言葉を待った。
ボーマは『分かりやした』と頷いて口を開こうとしたが、エコーが彼の服を引き、やはり自分が話すと首を左右に振る。
「隊長、カエデちゃんの姿がどこにも見当たりません。恐らく敵に捕まった可能性が―――っ、隊長!?」
エコーの報告を最後まで聞き終える前に、タイサはその場を飛び出していった。
―――数時間後。
タイサはエコーと共に中央広場に戻ってきた。
広場では残っていた資材で組み直した天幕がいくつも張られており、街に残った馬や荷台をかき集めてきたのか、動ける騎士達が食糧や水、負傷者を次々と運んでいる。
タイサは近くの騎士に声をかけて本部の場所を聞き出すと、教えられた天幕を開いた。




