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Lost19 ブレイダス防衛戦  作者: JHST
第六章 停戦
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④戦後の傷痕

 全てではないが、一つの戦いが終わった。

 どちらが勝者で、どちらが敗者かと聞かれても、明確に答えを示せる者はいない。

 その場にいた者でさえ、目的を達成できた人間の勝利だと言う者もいれば、ブレイダスの街を放棄した時点で蛮族達の勝利だと主張する者もいる。

 だがタイサにとっては他者が求める結論よりも、自分の命を含め、仲間達が無事であるかどうかの方が最も重要だった。


「隊長、何とか生きていますよ」

 中央の広場、無数のゴブリンやオーク達の死骸が散らばっている窪みの中で、一際太った男が胡座をかいて座り込んだまま、戻ってきたタイサに向かって小さく右手を往復させていた。

「隊長も副長もこんな戦いをアリアスの街で経験していたんですかね………これじゃぁ、命がいくつあっても足りやせんよ」

 疲れたボーマは、傷だらけの体を大鉄球に預ける。


「いや、今回の方が激しかったさ。よく生き残ってくれたな、ボーマ」

 タイサは手を上げていたボーマの手を叩く。

「デルの旦那も………まぁ、生きていて何よりで」

 一瞬言いかけた口を閉じようとした彼だったが、タイサの肩を借りて歩いているデルにも声をかける。

 だが、デルの左腕は黒く焦げており、皮膚はただれ、場所によっては皮膚の下が赤く見えている。顔の左側も同様で、頬や耳が強い熱によって本来の色を失っていた。


「ボーマ。フォースィは今どこに?」

「彼女なら窪みの中心にいるはずです。それと隊長………副長の姿が見えませんが?」

 デルの怪我から、ボーマはまさかと言いづらそうに聞いてみたが、タイサは小さく笑って返すと後ろを向いて答える。

「エコーなら妹を探しに行かせた。霧が晴れているのに空を飛んでいる様子がない」

「そういやぁ、こっちにも戻ってきた素振りはありませんでした」

 ボーマの答えにタイサも概ね予想していたのか、そうかとだけ頷く。そしてボーマに一休みしたら合流するよう声をかけ、デルと共にフォースィの下へと進み始めた。


 タイサが窪みの中心に近付くと、()()()()()騎士達の姿を見る事が増えてくる。ゴブリン達の死骸を運び、山にしていく者。即席の担架で運ばれる者。重傷か、それともすでに息がないのか、担架から垂れる腕についてた数本の指は、一つも動いていなかった。

 二時間に満たない戦いだったが、騎士達は精魂尽き果て、多くは虚ろな目をして座り込んでいた。

 そして窪みの中心に辿り着く。

 タイサは木箱の上に座る黒い髪をした少女の後ろ姿を見つけると、すぐに声をかけた。

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