⑫タイサ対シドリー
「魔法障壁!? デルさんが言っていた戦法とはこれの事なの!」
強力な腕力と魔法による防御、さらに回復魔法を操る姉妹がいる。タイサとエコーはデルからの情報を身をもって理解する。
エコーの連続攻撃はシドリーの魔法障壁を三枚だけ破壊するに留まった。エコーはこれ以上の追撃は無理だと判断し、すぐに後退して距離を稼ぐ。
「小娘ごときにっ!」
シドリーは自分の隙を突かれた事に顔をしかめ、エコーに視線を向ける。そして体を半回転させると、持っていた右手の斧を投げ放った。
「やらせるかぁっ!」
タイサもまた左に回転させ、地面に叩きつけられた左の大盾を起き上がらせると、エコーとシドリーの間に挟ませ、投げられた直後の斧を真下へと弾く。だがその衝撃はタイサの力をもってしてもさばき切れず、さらに不十分な姿勢も相まってエコーに向かって体が吹き飛ばされた。
「隊長!」
「こいつぁ………司令官を名乗るだけはある。今まで戦った誰よりも、強い」
そう言いながら立ち上がったタイサの体は未だに無傷。盾も左の大盾に深い傷が二カ所刻まれたが、杭の射出機構に影響はない。
「成程。報告通り………いやそれ以上の硬さだ。私の一撃を受けてもなお、その腕を普通に動かす事が出来るのだからな。正直、左肩ごと切断するつもりで放ったのだが、どうやら考えを改める必要がありそうだ」
一体どんな体の作りなのかと、シドリーは小さく笑いながら地面に刺さっている斧を拾い上げる。
「だが、防ぎきれないのならば意味はないな」
またしてもシドリーの姿が消える。
「隊長、右です!」エコーが叫ぶ。
相手の動きを察する力はエコーの方がやや上手。タイサは彼女の進言に従い、右の大盾を側面に構えた。
「分かっていても意味はないぞ、人間!」
シドリーは既に二本の斧を地面に水平に振っている。
盾で受けたとしても、その力はタイサの体を強制的に左へともっていく。それを瞬時に判断したタイサは、左の大盾を下に向けながら右手に衝突させた。
「これなら!」
二本の斧が右腕に触れる直前、タイサは地面に向かって左の杭を打つ。放たれた杭は文字通り地面に刺さる杭となって彼の体を支える柱となった。
凄まじい力と硬さが衝突する。シドリーの放った一撃はタイサの右の大盾、複数の金属で層を作っている装甲の三枚目まで食い込んだが切断とまではいかず、さらにタイサを吹き飛ばすはずだった衝撃は、左の杭で耐える事に成功する。




