①三人
魔王によって抉られた隕石跡。その窪みを中心とした中央広場は最早憩いの場としての景観を失っていた。
窪みを囲っていた鉄や木の柵は家具や馬車の残骸で補強された防壁として使われ、本来入る事のできない窪みの中は負傷した騎士や冒険者、逃げ遅れた街の住民達の野戦病院兼避難所として活用されていた。
タイサとデルが広場に入ると、先に到着していたエコー達が近付いてきた。
「隊長! ご無事でしたか」
エコーがタイサの上下に目を動かし、特に目立った怪我無い様子に胸を撫で降ろす。
「ああ。幹部級の魔物を二匹追い返してやったが………そっちでは何か情報を掴めたか?」
「そこからは私が話すわ」
話に割って入ってくる紅の神官服の女性と彼女の服に掴まっているイリーナの姿があった。
「フォースィか!? 何だよ、随分と久しぶりだな!」
「えぇ。イリーナがお世話になったようね、お礼を言わせてもらうわ」
「お父さん、ありがとうございました!」
イリーナが深々とお辞儀すると、デルの表情が途端に険しくなり、タイサを睨みつける。
「お父さんって………お前達、まさかっ!」
「違・い・ま・す!」
デルがタイサとフォースィを交互に指さすが、すぐにエコーが大声で否定する。
タイサは頭を掻きながら、溜息をついた。
「………フォースィ。その呼び方を教えたのはお前の仕業か?」
「違うわよ。私は色々な事を教えただけ。その中で、あなたに当てはまる言葉を選んだのはこの子よ」
意地悪くタイサに向かって笑みを見せるフォースィ。
「さぁ、詳しい話を聞きたいのでしょう? こっちにいらっしゃい」
彼女が先に歩き出す。だが、タイサは機嫌の悪くなったエコーと細目で睨む親友に挟まれていた。
「俺は何も悪くないんだって………」
到着して早々、彼女の掌に乗せられた気分に陥ったタイサは、言い訳の一つも信じてもらえず、片の力を落としながら中央の天幕へと向かう事となった。
「タイサ殿か。よく来てくれた」
天幕の中では、蒼獅騎士団の団長ヴァルトが地図と睨み合っていた。
「ヴァルト卿、ご無事で何よりです………ですが自分は既に………」
王国騎士団を辞めている。タイサはここで西部方面の巡察に行き、アリアスの街で起きた事、弾劾裁判によって王国騎士団の地位を失った事を包み隠さずに報告する。
デルはタイサらしいと半ば呆れ、次に困った奴だと苦笑して返した。ヴァルトも最初は驚いていたが、すぐに表情を戻し、タイサの話を最後まで聞いていた。
「確かに、西部方面は囮とも言える………タイサ殿、君の身に降りかかった事は察して余りあるが、今は一人でも戦力が欲しい。協力してくれ」
「分かっています。事実を知らせる為にも、国民や友を助ける為にも自分はここに来たのです」
その言葉に全員が頷く。




