⑭名もなき二人の英雄
「77柱って奴かっ!」
「何だ、知っているのか!」
また二人の視線が合う。
「何でお前が知っているんだよ」
「後でゆっくり話すさ!」
呼吸を合わせて二人は左右に振り返り、そのまま相手を切り替えて再度攻撃を繰り出した。
デルは接近してきたアモンの右腕を斬り付け、同様にタイサがバルバトスの頭部を盾で殴り付ける。
「………懐かしいな、デル」
「まったくだ。この年になっても体が覚えているものだな」
背中を合わせながら二人で小さく笑った。
「隊長!」
周囲のゴブリン達を片付け、エコー達が合流してくる。
タイサが相手に視線を向けながら叫ぶ。
「ここは俺達に任せろ。エコー達は予定通り広場に向かってくれ!」
デルが蒼い鎧姿のイリーナに気付く。
「イリーナ。君の師匠が随分と心配していたぞ」
フォースィは広場にいると彼が伝えた。
アモンとバルバトスが態勢を立て直し、デルとタイサを目標に定める。
「早く行け!」「了解!」
エコー達は中央広場へと進んでいった。
「………何だ? 騎士じゃねぇ変わった奴が出てきたな」
アモンは肩を回し、体の中で音を鳴らしながら両手の爪を構える。
「ミタトコロ、ボウケンシャ、カ。マダイキノコリガイタヨウダ」
銀色の人型。バルバトスは盾で殴られた顔の傷を撫でながら顔の凹みを元に戻す。
「デル………俺はどちらを抑えればいい?」
「狼男だ。あいつの速さで懐に潜られると戦いづらい」
デルの言葉で、タイサは敵の戦い方が予測できた。
「速い奴は、お前の担当だろうに………しょうがない。だが、倒せるのならば倒しても構わないな?」
「ああ、構わない。遠慮は無用だ」
タイサとデルがそれぞれ武器を構える。
「銀龍騎士団団長。『七速』のデル」「冒険者。『鉄壁』のタイサ」
「「いざ参る」」
二人は再び目標を切り替えると、タイサはアモンに、デルはバルバトスに向かった。
「はっ! そんなデカい盾じゃぁ、身動きが取れないだろう!」
アモンはタイサの左腕で構えていた盾を相手にせず、逆の右手を狙うように体を捻る。
「成程………確かに早い」
既にアモンはタイサの懐に潜り込んでいた。タイサは右手で剣を逆手で抜こうとするが、抜き終わった途端にアモンの左の爪の間に挟まれ、剣の動きを封じられる。
「終わりだ」
アモンの右爪がタイサの胸を貫く。鉄の胸当てに赤黒い爪が四本全てが食い込み、アモンは牙を見せて勝利の笑みをつくる。
だが、爪は思った以上に深く刺さっていなかった。
「こ、こいつ!」
アモンの表情が凍りつく。
「………悪いな。俺の体は頑丈なんだ」
タイサがアモンの右足を全力で踏みつけた。足の指を潰されたアモンが声を上げてのけ反ると、タイサは右手の剣を爪から外し、そのまま逆手でアモンの胸を縦に斬り裂く。
「まだまだぁ!」
体を横に向けながら、『杭打ち』の盾で内側へと腕を閉じてアモンを地面へと叩きつけた。そして足元で転倒した背中を見せるアモンに向けてタイサは盾を真下に向けて取っ手を握る。
巨大な土埃が舞い上がった。
石畳の地面は粉々になり巨大な穴が穿たれる。衝撃によって舞い上がった多くの石片が散らばって家屋の壁に穴を開け、ガラスを突き破っていく。
「意外にしぶとい」
戻した杭にはかなりの血がこびりついていたが、そこにアモンの姿はなかった。




