⑨一点突破
「隊長、囲まれました」
「分かってる、ボーマのせいだ」
タイサは左腕に取り付けていた盾についた布を取り払うと、完成した『杭打ち』が姿を表す。巨大野豚の角を加工して取り付けた真珠色の『杭』は、大きな盾からはみ出るようにその先端を見せ、鉄壁の名前に恥じぬ防御力と近付く者を貫く異様さを見せつけていた。
「俺のせいですかい………それよりも隊長、背中のはまだ付けないので?」
ボーマが意地悪く笑い、タイサが背負っている布で巻かれた平たい物を指差す。
「………まぁな。俺自身もこいつにまだ慣れていない。まずは片方だけだ」
「了解」
訓練されたゴブリン達が剣を次々と抜き、奥では矢を構えてタイサ達を狙い始める。
タイサは背後のゴブリン達と向き合うと両手を叩き、気持ちを切り替えた。そして足首を何度も回し、盾を前面に構える。
「ボーマは最後尾。俺の突撃に合わせて、そのでかい奴を後ろに放ち、後方の敵を牽制しろ」
「あいあいさ」
ボーマが大鉄球を肩に乗せ、根本の鎖を握りしめる。
「エコーとイリーナは中盤だ。俺とボーマの左右に回り込む敵を優先しろ」
「了解」「分かった!」
エコーは腰から細い剣を抜き、イリーナが両手を握りしめる。
タイサは城壁から見える範囲で、最も音の大きい場所の目星を遠目でつける。
「全員で中央広場を目指す。絶対に遅れるな!」
「「「了解!」」」
タイサが正面の敵集団に向かって走り出す。
まずは左腕の盾を前面に構えたままゴブリン達から放たれる矢の全てを弾く。さらに剣を持って近付いてくるゴブリンはタイサの勢いに勝てずに城壁の外へと弾かれるか、足元を崩して転倒し、無惨にも全員に踏まれていった。
一部のゴブリンは盾の上を飛び越えようと跳ねるが、中盤を守るエコーの針のように細い剣が、空中にいるゴブリンの額や心臓を突き刺していく。さらにイリーナがゴブリンの腕を掴み、そのまま複数体を巻き込んで城壁の外へと放り投げていった。
「さぁさぁ! 近寄ると潰れるぜぇ!」
ボーマが背後を詰めようと追いかけてくるゴブリン達に、大鉄球を投げつける。放たれた黒い塊は真っ直ぐにゴブリン達を砕き散らして進んでいく。そしてどういう原理かは分からないが、ボーマが鎖を引くと鉄球はぴたりと止まり、投げた持ち主の手元に戻っていく。
「隊長! 前方に降りる階段があります!」
盾によって視界の狭いタイサに代わって、エコーが声を上げた。




