⑧類は友を呼ぶ、呼ばれる?
「エコーさん、機を見て飛び降りてください!」
「分かったわ! カエデちゃん、よろしくね!」「はい!」
カエデは弦に矢を一本かけると、両手を開きながら弓を顔の横へと構えた。トリーゼから貰った鏃の先端は鉄でも骨でもなく、赤い結晶で形作られており、彼女が集中すると同時に赤い結晶が僅かに光り出す。
「いきます!」
右手で弦を弾き、矢を放つ。
放たれた矢の先端はさらに輝きを増し、赤い光が軌跡となって曲線を描く。まっすぐ飛ぶはずの矢は、街の上空を旋回するバードマンに吸い込まれるように曲がり続け、背中に突き刺さると同時に爆発。一撃でバードマンとその背中に乗っていたゴブリンを炎と煙で包み込んだ。
さらにカエデは残り二本の矢も放って二匹のバードマンを打ち落とし、短い時間ながらも城壁へ降りる隙間を作り出した。
「今だ! 飛び降りろ!」「「「了解!」」」
タイサの合図で東の城壁の上に飛び降りる。カエデはエコーを降ろした後、すぐに手綱を引き継いで飛竜を上昇させ、こちらの動きに気付いた三体のバードマンを撃ち落としながら旋回、音と光に集まって来たバードマン達の注意を自分へと向けさせた。
「二番手! ボーマいっきまぁます!」
着地したボーマは、背負っていた球体を布が付いたまま、城壁に集まってきたゴブリン達に向かって投げつける。
狭い城壁の上で投げつけられた巨大な球体は、ゴブリン達を弾きながら直進していく。そして、ボーマが持っていた鎖を引くと、球体が元来た道を戻る様に彼の手元へと戻った。
「よっしゃぁぁ! お帰りぃ、大鉄球ちゃん!」
球体を覆っていた血まみれの布が外れ落ちると、ボーマの目の前には彼以上の大きさの黒い球が置かれていた。
「それがお前の貰って来た武器か………まぁ、何というか………類は友を呼ぶとはこの事だな」
「え、良くないですか!? この滑らかな曲線美と手触り! あぁ! ずっと頬ずりしていたいくらいに最高なんですよ!」
呆れるタイサの横で、ボーマが実際に黒い球体に頬ずりして鼻息を荒くする。
「隊長、さすがに引きそうです」
「あぁ、エコーは俺の後ろにいなさい」
あれは見てはいけないものだと、タイサがエコーの前に立つ。
「お父さん、あの人は大丈夫なの?」
相変わらずタイサを『お父さん』と呼ぶイリーナは、眉をひそめてボーマを指さした。
タイサが腰を下ろし、イリーナの肩に手を置いて視線を合わせる。
「イリーナ、あれはな。変態って言うんだよ」
「変態かぁ。そうかぁ」
イリーナは何度も頷きながら、もう一度ボーマを指さす。
「変態」「隊長おおおおぉぉぉう!」
ボーマは女の子に変態扱いされ、両脇を絞めながら口を縦にして叫ぶ。
「小さな女の子に何て事を教えているんですか! それでも大人ですかっ!?」
「ぃやかましい! 第一、言われる側にそれを言う資格はない! そう思うんだったら、そんな姿を見せるお前が悪いっ!」
下らない話をしている間に、タイサ達はすっかりゴブリン達に前後を挟まれていた。




