⑦到着
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最も目の利くカエデが腕を伸ばし、指を前へと向けた。
「兄貴! 街から煙が!」
飛龍に乗って二日目。間もなくブレイダスの街に着く矢先に、タイサ達は想像していた中で最も最悪な状況を目にする。
「既に始まっていたか………」
タイサの顔にしわが集まった。
数十秒もすると、全員が街から何本も上がる煙を何本も見る事が出来た。
「おいおいおい! こいつぁ、もう蛮族の仕業というより戦争っすよ、隊長!」
「どうしますか!? 隊長!」
ボーマとエコーが風の音に負けないよう、大きさな声を投げかける。
「カエデ! 煙の他に何か見えるか!?」
タイサも声を張り上げた。
「えぇっと! 街の上で何かが飛んでる! 他には………あ、街の南にある森で何かがいっぱいいる気がする! 多分街の上で飛んでいるのと同じ奴らだよ!」
「多分、バードマンです! お師匠様が言ってました!」
カエデの報告に、イリーナがタイサの背中から答える。
「例の空からゴブリンを降らせたってやつかっ!」
ただでさえ厄介な上に、放置も出来ない。タイサは再び妹に顔を向けた。
「カエデ、お前はそのまま上空から奴らを狙えるか!?」
「多分出来るよ! トリーゼさんから貰った武器もあるし!」
カエデが背負っている弓と矢筒を軽く叩く。
よし、とタイサは覚悟を決めた。
「カエデは飛竜に残って上空からバードマンを撃ち落としてくれ! 俺達は低空飛行から城壁に取り着いて降下、そのまま敵を攪乱させる!」
「隊長! 城壁はどこにしますか!?」「東だ! あそこが一番敵が多い!」
エコーの問いにタイサが即答する。敵が多い部分に突入し、混乱させる。その後、相手が態勢を整える前に撤退し、生き残っているであろう王国騎士団、又は冒険者ギルドの集団と合流する。タイサは全員に対して、決して無理をするなと最後に付け加えた。
「隊長! あの時の分までしっかり暴れて見せますよ!」
ボーマは布で覆われている巨大な球体を叩きながら、お先にと飛竜を降下させる。
「行くぞ!」「「了解!」」
タイサの号令で、残りの飛龍も一気に降下を始めた。
カエデは弓の張り具合を最短で確認すると、背中の矢筒から矢を三本取り出した。そして飛竜の背中に取り付けられている鐙に足を通し、さらにベルトで足を固定させると、やや前傾姿勢で立ち上がる。
「エコーさん、機を見て飛び降りてください!」
「分かったわ! カエデちゃん、よろしくね!」「はい!」
カエデは弦に矢を一本かけると、両手を開きながら弓を顔の横へと構えた。トリーゼから貰った矢じりの先端は赤い結晶で作られており、彼女が集中すると当時に赤い結晶が僅かに光り出す。




