⑥全ては敵の手中に
「そう。その魔王とは一体誰の事なのかしら? 貴方達はここを手に入れて一体何をするつもりなの?」
フォースィがバルバトスに問いける。
「マオウサマハ、マオウサマダ。ソレイジョウデモ、ソレイカデモナイ」
バルバトスは隠すつもりもなく、魔王について語り始める。
「ワレラニトッテノ、ミチビキ。キュウセイシュ。キボウ。カミ。ソレゾレガ、ソレゾレノ、ヨビカタデ、ソンケイト、イフヲモッテ、ヨンデイル」
バルバトスは首をぐるりと一周させた。
「ワレラハ、ニヒャクネンマッタ。ダガ、オマエタチハ、カワラナカッタ。ダカラ、モライニキタ」
「二百年………魔王軍と王国とが手を結んでいた時代ね………あの頃に一体何があったの?」
フォースィの言葉に、バルバトスは僅かに顎を引いた。
「ワスレテイルダケデモ、ハラダタシイ。ヤハリ、オマエタチハ、カワッテイナイ。コレカラモ、カワラナイ」
その言葉に合わせて、北側で大きな音が鳴り響く。
「何の音だ!」
デルが音のする方向に顔を向けると、バルバトスが体を震わせて笑っていた。
「ウゴクナ。スグニ、ワカル」
バルバトスが右手が持つ筒を空に向け、一発の弾丸を放つ。その球はこれまでの鉄球とは異なり、高い音を延々と鳴らし続けながら赤い線を空高く直線状に引いていった。
同時に、北側の城壁が騒がしくなり、その声は次第に大きなものへと変わっていく。
「ワレラノ、シレイカンハ、ジットスルノガ、ニガテナノダ」
城壁で待機している騎士達が次々と何かに弾かれるように宙を舞い、地面へと落下していく。そしてデル達の前を通過する際、城壁には白と黒のメイド服を纏った猫の亜人が巨大な斧を左右に持ちながら走り抜けて行く姿が見えた。
「しまった、南門がっ!」デルが叫ぶ。
魔王軍の司令官自らが城壁に取りつき、各門の周囲を急襲して回っている。デルは彼女の向かう先にある南門へと体を向けた。
「モウ、オソイ」
空中で待機していたバードマン達が、空白地帯となった城壁に次々と接近し、背中に乗せていたゴブリン達を大量に降ろしていく。
ゴブリン達は城壁の上を手際よく占拠し、さらに鉄球を放つタネガシマを高所から街の中へと向けた。
ついには東門の扉までもがゴブリン達の手によって開けられていく。
「サァ………コノマチモ、アケワタシテ、モラオウカ」
開けられた門の奥では、土煙を上げながら近づいてくる蛮族達の群れが見えていた。




