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④約束は裏切らない

 そこへ背後から茂みが音を立てた。


「ボーマ………動くなよ?」

「………それ以上、言わんで下さい、隊長」

 しかし我慢できず、二人はゆっくりと後ろを振り返ると、茂みからさらに小さな野豚が姿を現した。角もまだ小指ほどの長さで、今にも泣きそうなつぶらな瞳で、寂しそうな声を上げる。


 タイサとボーマは肺を空にするかのように、大きく息を吐いた。


「ボーマ………驚かすなよ」

「いやぁ、すいません………って隊長、俺はどっちの意味で言われたんですかね? やっぱり豚の方ですかね? あぁ、その顔はそれっぽいですね」

 ボーマがタイサの表情を見ると静かになった。

「隊長、前向いてもらっていいですか?」

「ん? ああ、そうだな。早くあいつらの所に帰らないと―――」

 タイサが前を振り向くと、柔らかく湿ったものに顔をうずめる。

 一瞬にして視界が奪われ、さらに不快な臭いが鼻の奥まで刺激する。


「ぶはぁっ」

 一体何だとタイサが顔を後ろに避けると、彼の前には大きな穴が二つあった。穴からは空気が何度も出入りし、獣臭い空気を吐き出している。

 タイサは視線を上へと向けた。

「ボーマのお母さんじゃないですか………いやぁ、どうも初めまして」

「………隊長、ここでもそれが言えるなんて………俺、マジで尊敬しますよ。まぁ、生きていたらですけど」

 人間の大人と同じ長さの角をもった巨大な豚。馬車より大きな()()は、タイサ達にあらゆる怨念を込めて睨みつけ、そして大きな雄叫びを上げ放った。


「逃げるぞ!」

「了解!」

 タイサとボーマは、野豚を縛った棒を持ったままそれぞれ左右に逃げ出す。

「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 だが二人は互いに引っ張り合う結果となり、盛大に転倒した。

 巨大な野豚は前足で地面を何度か削ると、地面を揺らしながら走り込んで来た。

「ひ、引かれるぅっ!」

「ボーマ、飛べ!」

 タイサはボーマの体を全力で蹴り飛ばし、横へと吹き飛ばす。ボーマは間一髪巨大な野豚が削った地面の横に倒れ込んで九死に一生を得る。タイサもまた蹴った足を即座に引いて、難を逃れた。


「隊長、どうしますか!?」

 通り過ぎた巨大野豚は、奥にあった数本の大木を根元からへし折って自らの勢いを止めると、何事もなかったかのようにその場で振り返り、タイサ達に再び目標を定める。

「もちろん逃げる」

 タイサの言葉に異論なしと、ボーマはタイサよりも先に森の中を駈け出していった。

 タイサも負けじと捕獲した野豚が縛られた棒を掴むと、それを引きずりながら追いかける。


「隊長! 何持ってきてるんですかっ!? もう諦めて捨ててくださいよっ!」

「馬鹿野郎! 貴重な食料だぞ! これがないと困るだろうが!」

 森の木々を避けながらタイサとボーマは、カエデとエコーが待つ野営地まで走る。巨大野豚はその体格から木々を避けられず、倒しながら進んでいくため、その速度は随分と落ちていた。

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