③十極の合流
「なればこそです。住民達に伝わるには時間がかかる………戦うなら今しかありません」
今この場で討つべし。ベルフォールは再度攻勢を主張する。
デルは二人の団長の表情を窺うが、彼らもこの状況をすぐに住民達に伝える事には躊躇っていた。
「まだ我々は負けてはいない。ここで蛮族を打ち倒せば事はそれで済む。ゲンテの街が襲われた以上、王国騎士団としての責任は問われるだろうが、これ以上の失態は重ねたくない」と、ザルーネ。
だが住民へは蛮族侵入の可能性があるという形で注意喚起は行っておくと、デルの気持ちを汲んだ締め方となった。ベルフォールもその程度ならばと頬を緩ませ、異論を挟まなかった。
最後のヴァルトも異存はないと、小さく頷く。
「………もし負けるような事があれば、蛮族の大群がブレイダスに、二万の住民達に向かいますよ?」
自分でも情けない反撃だと思う程に、デルがなけなしの言葉を放つ。
「分かっている。だが蛮族相手に、我々はこれ以上負ける事は許されないのだ」
空気が変わる前にと、ザルーネは吐き捨てるように言葉を残して天幕を出ていった。それに併せてヴァルトが無言で、ベルフォールはデルに勝ち誇ったかのような顔つきでこの場を去っていく。
「敵の強さは尋常ではない。何故それが分からないのか………」
デルは自分で持ってきた敵の布陣図の上に拳を置き、手を震わせた。騎士団や街を住民達を失ってからでは遅いのだと、自分の心に訴えかけるように口ずさむ。
「デル団長」
銀龍騎士団の騎士が様子を見に来た。彼は何度も外で声をかけたのですがと謝りつつ、伝言を持ってきた。
「フォースィ殿が団長を呼んでおられます」
その言葉に、デルは思わず振り返った。
「その様子だと、蛮族達の恐ろしさを理解してもらえなかったようね」
野営の隅で佇む赤いワンピースを着た女性。街娘のような姿には似合わない竜の細工が施されている魔導杖を片手にしたフォースィは、日没後の生暖かい風に当たりながら、近付いてくるデルの表情を読み取った。
「何故ここにいる? あの集落で何かあったか?」
「私に怒らないで? 集落では何も起きてないし、私があそこにいたとしても何もする事はないわよ………私がいるのは、あなたの部下に依頼されたから」
彼女はデル達が旅立った後、集落に残った銀龍騎士団のフェルラントに依頼されたと説明する。




