第八章「転移」
〜番号札248番、2番窓口へ〜
大学病院と言うのは毎日こんなにも
人が溢れているのか。
あの日から1週間、今日は彼女が1ヶ月に
1度行う抗がん剤投与に同行していた。
投与を終えた彼女が、遠くから微笑みつつ
オレの元へ走って来る。
!!
一瞬、激しいフラッシュバックが。
「凄く気分が良いの、こんなの初めて」
今まで見たことも無い満面の笑みを浮かべている。
「今日は気分が良いから、ラーメンが食べたい!!」
普段から食にも気を配っていた彼女からは
想像できない言葉が。
突然、激しい頭痛が・・・
「うぅっ!?」
〜キィーーン・・・〜
飛行機???
次の瞬間、今まで経験した事のない
激しい耳鳴りが。
〜キィーーン・・・〜
〜キィーーン・・・〜
視野が薄れていく・・・
意識も薄れていく・・・
身体が鉛のように重い・・・
〜ピー、、ピー、、ピー、、ピー〜
白い天井。
規則正しく描かれた格子。
見知らぬ天井?
右手には温もりが。
何日眠っていたのだろうか。
あの日見た大粒の涙を流す彼女がそこにいた。
「癌だよ。」
「転移したんだよ。」
「私の身体から。」
「ダメだよ、2度も救うなんて。」
叶ったんだな、あの日の願いが・・・
自ら右胸に手を添える。
そこには、あの日手を添えたベースらしきものが。




