第六章「告白」
ニットワンピの彼女は白く輝いていた。
〜キィーーン・・・〜
甲高いエンジン音、腹に響く爆音。
ここは伊丹スカイパーク。
オレが最も好きな場所である。
鯨のごとく巨大な機体が飛び立つ光景に
心打たれた幼少期。
パイロットになりたいと思った。
だが今は医学を目指す大学1年生。
2浪して京都大学医学部に合格。
隣に佇む女性は2歳年下、医学部に
ストレートで合格した秀才。
それだけでも億劫になってしまうのに
オレは彼女に恋をした。
オレが告白する事を、彼女は当然のごとく
理解していた。
「抗がん剤治療だよ。」
「癌だよ、私・・・」
大粒の涙を流しながら。
オレの気持ちを拒絶させたいのだろう、
彼女はそう強く言い放った。
予感は的中した、薄々感じてはいた。
世間一般で言う「闘病中」という言葉が
何を意味するのか。
病、そう癌である事は理解していた。
それでもオレは彼女の側にいたいと思った。
心が折れそうな時・・・
副作用で体が辛い時・・・
未来を見失いそうになる時・・・
どんな時も、支えるのでは無く
手を取り共に歩みたいと。
人が嗚咽して泣く姿。
久しく見ていなかった。
おもちゃを買ってもらえない悔しさに
嗚咽して泣く少女のように。
オレはそっと彼女の肩に手を回し、
引き寄せ強く抱きしめた。
降り始めた雨はやがて雪に変わった。