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第五章「時間の共有」
惹かれ合うと、人の距離はこうも早く
縮まるのか。
カフェ、和菓子にイタリアン。
食事制限がないとは言え、毎日のように
彼女のリクエストが絶えない。
いい意味で可愛いわがままでもある。
でも・・・
今日は違った。
テニスサークルに所属する彼女は
ラケットのガットの張り替えで
ショッピングモールのスポーツ店へ。
彼女との待ち合わせでオレは
スターバックスカフェにいた。
そこに来た彼女はいつもとは違った。
〜コツ・・・コツ・・・〜
「今日は、脚の具合が良くないの。」
そう言いながらクラッチ杖を椅子の側に置き
ゆっくり腰を下ろした。
「京都へ行く前に、左脚にボルト入れたんだ。」
痛がる素振りも見せず彼女は言った。
「だから京都へ?」
「そうそう、御利益あるかな?」
「痛いのを我慢してテニス続けてて。」
「ヘルニアもあるからその痛みかと
思ってたんだけど。」
話はそこまでで、彼女はそれ以上を語らなかった。
むしろ語りたくなかったのか。
やはり・・・
「出よう。」
「連れていきたい場所がある。」
そう言って彼女の手を取り店を出た。
今日の空はどんよりと曇っていた。