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第二章「何者?」
結局、借りたビニ傘はあの日の
あまりにも強い風の為、見るも無惨な状態に。
まぁビニ傘だし次に逢う事もないだろうと。
ふと彼女の言葉が頭を過る。
「私、雨天兼用の日傘があるからこれあげるよ。」
ビニ傘の無惨な姿を思い出す。
あの日、彼女は大丈夫だったのか?
その時、通学途中にある大学病院から出てくる
日傘の彼女に遭遇する。
お互いに指差し、彼女が小声で一言
「あっ・・・」
オレは思わず「大丈夫でした?」と。
彼女は「平気、平気。今、闘病中でさ・・・」
何事もないように微笑んだ。
ん?
日傘の話をするつもりだったオレは、
その言葉を押し殺し、彼女の言葉に
何事にも耐え難い悲しみが湧き上がった
感覚を忘れる事が出来なかった。