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最終章「新たなる旅路」

〜シャー、シャー〜

フィギアスケーターが颯爽と滑るような

車輪音が響く。


オレの癌は骨への転移もあり

競技用に製作され車椅子を常に愛用していた。


「先生おはようございます。」

「おはよう、でも今日は先生じゃないよ。」

「あっ、今日は抗がん剤の日でしたね。

頑張って下さい。」 

「ありがとう。」


彼女を見送った日から8年の月日が流れていた。

オレは臨床心理士として、患者さんの

心のケアを行いつつ、これまでと変わらず

抗がん剤治療も行っていた。


「Nature Medicine読みました?」

「もちろん。」


Nature Medicineネイチャー・メディシンとは、

研究者および医師のために生物医学分野に

おいてきわめて重要な最先端研究に特化した

生物医学ジャーナル誌である。

見出しには「アメリカで活躍する女性医師」の

特集ページとある。

時の流れと共にに、抗がん剤治療も

飛躍的に進化した。

最新の抗がん剤治療の研究と功績が認められ、

世界中にいる多くの癌患者たちが、

彼女の開発した抗がん剤により救われていた。


大学病院の中庭には、

大きな銀杏の木が植えられている。

そこでのんびりNature Medicineに目を通していた。

春の風に乗って甘い香りが・・・


「相変わらず銀杏の木が好きなんだね。」

「そうだね。」

「今後、あなたの抗がん剤治療を担当します

よろしくお願いします。」

懐しい声だ。

振り返ると白衣を着た彼女がそこにいた。


「ただいま。」

「おかえり。」

「少し痩せた?」

「あぁ・・・まあね・・・」

「だいぶ時間かかっちゃった、遅くなって

ごめんね。」

相変わらず泣き虫だ。

大粒の涙を流しながら・・・


「まだ、春は嫌い?」

「いや・・・」

「今、好きになった。」

「あなたの病は、私の病でもあるから。」

「私が治すから、必ず。」

「ダメだよ、医師が必ずなんて言葉は。」


「先生、銀杏の葉が色づく頃には

歩けるようになりますか?」

「大丈夫、約束する。」

「そして始めましょう、新たな二人の旅を・・・」


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