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第一章「出逢い」
水に慣れるという言葉がある。
春は新年度や新学期など、環境が新たになる季節。
不器用なオレは、この季節があまり好きではない。
ここは京都大学医学部。
大学に合格して楽しみにしていた、
キャンパスライフが始まった。
「基礎医学」に関する講義を受講していた。
4〜5列前の席には3人グループの女子がいる。
どこのカフェでランチするのかを
楽しそうに喋っている。
その内の一人にエキゾチックな雰囲気の
瞳の美しい女性がいた。
彼女と一瞬目が合ったが、オレは友人に
肩を叩かれ「バスケ、間に合わないぞ」と言われ
その場を立ち去る。
その日は、夕方から雨が強くなり
傘を持たないオレが、キャンパスの
出口で雨が止むのを待っていると、
その彼女がビニ傘片手にこう言った、
「私、雨天兼用の日傘があるから
これあげるよ。」と。