スイソウ
僕は心の中にスイソウを飼ってる
その中には多種多様なサカナがいて生き生きと泳いでいる
僕はたまに寂しくなる、辛くなる、楽しくなる
その時に溢れた感情を僕はサカナと呼んでいる
サカナはいつでも僕の味方
今日は僕の誕生日だ
誕生日はいつも水族館に行くと決めている
水族館の入り口から大きな水槽までの道筋を辿るだけで心が震えるのが分かる
今日は平日だったので人も少ない、好都合だ
僕はこの暗青色の世界を堪能していた
いつものルートでいつもの綺麗な魚たちを見て今年も最高の誕生日を過ごせた
「楽しいの、それ」
帰り道、雨が降りそうな曇天の中誰かに話しかけられた
後ろを振り返ると僕を指さして首を傾げる女の子がいた
誰だこの子?いつからいた?そんな思考が頭をよぎるがそれより先に彼女は話しを続けた「私は見てたよ、ずっと1人でぐるぐるしてるの」
言葉足らずな話口調と小柄な見た目から子供なんだなと直感的に感じた僕は諭すようにこう言った
「楽しいよ、1人が楽しい人もいるんだよ」
そう言い切り再度帰路に着こうとするとまたもや言葉足らずな話し方でこう言った
「私、楽しくない」
そろそろイライラしてきた僕は無視して歩き続けたが最後にこう叫ぶのが聞こえた
「私には分からない、みんなが喜ぶのも楽しむのも悲しむのも、私は楽しくない!」
はっとし振り向いて彼女の顔を見る
その時心のスイソウにサカナが生まれる感覚がした
感情を理解できないと嘆く彼女があまりに感情的に見えたからだ
曇天が霧雨に変わるその瞬間に僕は出会った。
僕の人生を変えてしまうほどの大きな大きな 「ヒト」に