魔法少女と「あい・すくりーむ」
お題:「狂気」「アイス」「布団」
声劇三人台本 10分 (0:3)
魔法少女になりたい!そんな女の子たちのお話。
お題:「狂気」「アイス」「布団」
声劇三人台本
魔法少女になりたい!そんな女の子たちのお話。
魔法少女グリーン(鈴木真紀) 9歳女の子 カラーは緑色
魔法少女イエロー(佐藤ゆり) 9歳女の子 カラーは黄色
魔法少女レッド(鈴木麻里奈)9歳女の子 カラーは赤色
___________________
夏休み、三人の少女たちが集まり扇風機を囲んで仲良くごっこ遊びをしている。
レッド「この町の希望――魔法少女たち――グリーンは二階から華麗にジャンプし、イエローは1キロ走ってはつややかに微笑み、レッドは髪型一つで別人に変装した。」
イエロー「んー。ちょっと地味かも。」
グリーン「いやさー、まずそのグリーンとか名前やめない?」
レッド「あれ?分かりやすい方がいいってみんなで決めたじゃない。」
グリーン「いや昨日はそうだったんだけど、今日はそんな気分じゃなくて。」
レッド「まぁ、たしかに。その日によって名前を変えたいよねぇ。」
グリーン「そうなんだよね。」
イエロー「え?じゃあ、普段はカラーで今日は別の名前にしようよ。」
イエローの言葉を聞いて、グリーンとレッドが顔を見合わせる。
グリーン「いやそれも、なんか.……。カラー名自体がなんか嫌っていうか。」
レッド「今日は、もっと名前について話をしたいのよね、楽しく。」
イエロー「.……?名前についての話じゃないの?」
グリーンとレッドが顔を見合わせて笑う。
レッド「まあ、そこはおいおい決めましょう。」
グリーン「せっかくなんだから拘りたいよね。」
イエローこと「ゆり」は納得いかないままだが、名前の候補を書き留めることにした。
イエロー「う、うーん。二人はどんな名前がいい?」
イエローの言葉にグリーンは詰まってしまった。グリーンこと「真紀」は昨日の会話が楽しかったのでまた同じことをして遊びたかっただけなのだ。
グリーン「どんな名前.……。」
そんなグリーンを見て、レッドこと「麻里奈」はするべきこと心得ていた。
レッド「そんなすぐには出てこないわよ、ゆり。名前をつけるためには私たちもっとお互いを知らなくっちゃ。」
イエロー「たしかにそうだね。じゃあ.……わたしは書き留める紙をもってくるね。」
立ち去った「ゆり」の背中を恨めしそうにみるグリーン。
グリーン「書き留めなくたって.……。一緒に話してくれればいいのに。」
レッド「まぁまぁ、真紀。ゆりだって形にして残したいのよ。一緒に遊べて楽しいじゃない。」
グリーン「それはそうだけど.……思ってたのとなんか違う。」
戻ってきたイエローが、ふてくされているグリーンを見て勘違いする。
イエロー「ごめん。わたし覚えていられなくて。書き留めないとだめなの。真紀や麻里奈のこと知りたいって思ってる。仲良くなりたいよ。だから怒らないで。」
グリーン「怒ってないよ。.……怒ってない。」
レッドはにこりと笑って話を変えた。
レッド「じゃあ、イエローは私たち魔法少女のショキ(書記)ね」
イエロー「ショキってなあに?」
レッド「楽しかったことを書いて残す人のことよ。」
グリーンはそれを聞いてピンとこなかった。書き残してどうするんだろう。
今いっしょにいるから今をいっしょに楽しみたいのに。一人だけ書き物をするなんてイエローが可哀そうじゃないか。
グリーン「別に要らないよ。ショキなんて。」
イエロー「えっ。.……真紀、わたしショキやりたい。」
グリーン「無理しなくていいよ。わたしは皆でおしゃべりしたい。」
本当にグリーンが名前が嫌で変えたがっていると、思っているイエローはグリーンの気持ちがなかなか掴めない。それどころかグリーンのために早く名前を決めてあげなくちゃと考え、まじめに紙と鉛筆を持ってきたのだった。
イエロー「え.….…、おしゃべりしているよ?」
グッと息をのむグリーンを見てレッドはフォローする。
レッド「イエローはちょっとおニブさんよね。」
イエローはシュンと落ち込んだ。何かやってしまったのだろうか。
「……わたし何かしちゃった?.….…みんなと仲良くなりたいだけなの。それは本当なの。だからどうしたらいいのか教えて。」
謝るイエローを見て、罪悪感と感謝でどんな表情をしていいか分からずうつむくグリーン。
グリーン「一緒に話してくれたらいいの。一緒に昨日みたいに笑いたいの。(少し悩んで)……書き物をしたら顔が見えないじゃない。」
イエローはハッとした顔で納得した。
イエロー「そっか。本当だね。書き物してたらみんなの顔が見えないや。わたしもみんなの顔がみたいよ。」
うつむいていたグリーンが少し顔をあげたのを見て、レッドはにこりと笑った。
レッド「じゃあ、楽しかったことはわたしが後で書いておくわ。」
_________________
女の子三人の笑い声が部屋に響いている。
イエロー「あはは!じゃあ、真紀はラベンダーだね!『ラブ・エンダー!』」
レッド「ゆりはレモンバームで本当にいいの?」
イエロー「もちろん!さっぱりした匂いが好き。」
親の許可を得て、グリーンが香油を並べている。
グリーン「麻里奈はローズウッドがいいよ。麻里奈にぴったり。」
レッド「ありがとう。ローズウッドなんて初めて知った。いろんな種類があるんだね。」
グリーン「じゃあ……、じゃあ名前も決まったことだし、いつものやろうよ!」
イエロー「いいよ~。」
レッド「もちろん!」
_____________
布団を前にして3人がなにやら叫んでいる。
レッド「あっ。魔物『あい・すくりーむ』が現れたわよ!」
グリーン「なに!私たちのアイスクリームを奪おうというのか!」
イエロー「なんて非道!許すわけにはいかないわ!」
イエローが掛け布団を積みあげ、その陰で声を変えて喋った。
イエロー「(魔物のふり)我が名は『あい・すくりーむ』!布団から生まれた思念なり!同じ白い存在というのにアイスクリームだけ持て囃されるのは我慢がならん!!この恨みを叫ばずしていられようか!」
レッド「うああっ。耳が!耳がぁ!」
グリーン「ローズ!?……きさま!」
イエロー「私にまかせて、ラブ!」
イエローが布団の裾を持ってぐるぐるを魔物の周りを走る。
布団は電球のような形になった。
イエロー「これで身動きは取れない!そのまま電球になりなさい!」
レッド「レモン!?一人で行動は危ないわ!」
グリーン「大丈夫!私がついてる!……ラベンダーキック!」
グリーンは椅子の上に登って、魔物に仕立てた布団にジャンプして真ん中を大きくへこませた。
布団は綺麗なハート形になった。
グリーン「どうだ!上がへこんでハート型になったぞ!これでは愛しか叫べまい!」
イエロー「(魔物のふり)ぐぁぁぁぁぁ!いや、まだだ!私はまだ白い!アイスクリームへの恨みは消えぬ!消えてたまるものか!」
レッド「みんな!よくやったわ!……あとは私にまかせて!」
レッドがピンクのシーツを持ってくる。
レッド「くらいなさい。ローズマジック!」
イエロー「(魔物のふり)はっ。ピンクのシーツだと?そんなもので私は変えられない!……なっ!?かけるな私に!ピンクになってしまう!恨みが!恨みが!消えてしまう!」
ピンクのシーツでピンクのハートになってしまった魔物を前に三人は決めポーズをし、『あい・すくりーむ』に魔法をかけた。
グリーン「これが私たち魔法少女のちからだ!」
イエロー「夢を!希望を!現実にする!」
レッド「魔法少女トリプルアセット!」
グリーン「無事退治できたな!」
レッド「ええ!」
イエロー「いまや『あい・すくりーむ』は『あいす・くりーむ』となってクリームを愛して止まない存在になったわ!」
三人は顔を合わせて笑いあう。
グリーン「……ふっ。駄洒落じゃんか!あはは。」
レッド「ハート型のアイデアがすごく素敵だったわ!ふふっあはは。」
イエロー「ピンクのシーツを持ってきたときはどうするのかと思ったよ。あははは!」
グリーン「わたしたち、最強の魔法少女だね。」
イエロー「うん!」
レッド「また遊びましょうね。」
イエロー「うん!」
魔法少女三人は仲良く後片付けをして、また遊ぶ約束をするのでした。
「ダーク」というお題があったのですが、書くことが出来なくて入れることを諦めました。
ハッピーエンドじゃないと書けないかも。