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【書籍化】身内の世話に疲れた俺が選んだのは学園のお姫様と家族になることでした  作者: 鉄人じゅす
間章

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057 実は……

 そしてその日の夜。


「今日はいっぱい歌って楽しかったぁ。燐、またデュエットしようね!」

「ああ。しかし鈴華は体力あるよな。全然疲れてなかったじゃないか」

「うん、あらゆるお稽古させられたから体力はあるのよ」

「体力関係のお稽古はしなかったのか?」

「片桐家に相応しくないことは当然ね……」


 なるほどな。日本古来ならお稽古かつ女の子だったら想像がつくな。

 鈴華が得意そうなアイドル的な歌やダンスはとてもじゃないがやらされそうにない。

 花とか琴とか絶対鈴華には無理な気がする。


「でも良かった。歌とか踊りは誰にも見せたことがなかったから……本当に何にもできないポンコツじゃなかったんだ」

「私と鈴華さんは得意分野違うってことですよ。だから必要以上に自分を卑下する必要ないです」

「……姫乃」


 姫乃の優しい言葉に鈴華は表情を緩める。


「ああ、これからは鈴華ができることをやっていくといいと思う。そうすりゃ片桐家も見返せるしな」

「燐、ありがとう! 私頑張るから」

「でも家事一般くらいはできてほしいものですけど」


 おっ、いい時間だな。テレビの電源を入れて、チャンネルを変えようとリモコンを手にしようとしたら鈴華と手が重なる。

 まさかチャンネル争奪戦か。


「いくら燐でもここは譲れないわ。……わたしをめちゃくちゃにしていいからここは譲って」

「ちゃっかりすげーこと言うな」


 姫乃にも呆れられてるじゃないか。そんな可愛い顔で言われたらそそるけど、できるわけがない。


「鈴華は何の番組が見たいんだ。俺は録画でもいいんだが……」

「このフィギュアのジュニア選手権にね。わたしの推しの選手がいるの!」

「鈴華さん、もしかしてそれって」

「朝也くんって子が今のわたしの推しなのよ! 今、流行りのアサリストってわけね」


 そのままチャンネルを変えると弟の朝也が出場しているフィギュアの大会の映像が映し出された。


「きゃーーーアサだぁー! 今日もすっごくかっこいい……」


 鈴華はテレビに齧り付いてしまう。まさか鈴華が朝也のファンだったとはな。

 朝也は顔が良くとにかく女性ファンが多いのは知っていたがここまでになると驚きだ。


「燐くんが好きだと言いつつ、他の男に目移りするんですね」


 鼻で笑う姫乃に対して、鈴華はぐわっと目を見開いた。


「燐への想いと推しへの想いは別者よ。別にわたしはアサとどうにかなりたいと思ってないもの。遠くて彼を応援できればいい。推しを知らないなんて姫乃は勉強不足ね」

「イラッ」


 口でいらって言う人を初めて見た。

 言ってることは最もだが鈴華にだけは言われたくない。姫乃の心情はそんな所だろうか。


「アサには双子の妹がいてね。それがあのヨルカなの! わたしの推しの二人が双子だなんて最高すぎる。二人が敬愛する二番目のお兄さんのお嫁さんになりたいわ」


 うん、それ俺なんだよなぁ。

 そのお兄さんは俺だと言うべきか? すでに姫乃は夜華と毎日のように連絡取り合ってるって聞くし。


「鈴華さんは推しに愛を捧ぐのも結構ですが、もう少しニュースなども見た方がいいですよ」

「ふんだ」


 鈴華はその言葉に視線を背けた。


「ニュースなら見てるもん。それにちょっと前からお気にいりのコメンテーターのお兄さんがいてね」


 とても嫌な予感がした。


「スティーブMって人なんだけど、なんとアサの一番上のお兄さんなのよ! 言ってることがすごくわかりやすくて、勉強になるわ」

「最近は発言のクオリティが下がってると思いますけど、気にならないんですか?」

「ふぇ? じぇんじぇん」

「鈴華さんはお願いだから変な男にひっかからないでくださいね」


 鈴華が急に俺の顔をじっと見つめてきた。


「燐ってアサによく似てる感じがするのよね。だから好きになっちゃったのかな」

「まぁ最近似てるって言われるかもな」

「でしょ! 燐ってアサとヨルカが言っていた大好きな2番目のお兄さん像にそっくりなのよね〜」


 こいつわざと言ってるんじゃないだろうか。

 普通そうはならんだろ。姫乃が大きくため息をついた。


「ヨルカは芸名でしたっけ。でも弟さんの本名は出てるんですよね。弟さんの本名はなんて言うんですか?」

「アサのこと。確か、葛西朝也だったかな。いい名前よね」

「じゃあ燐くんの本名はさすがに覚えてますよね」

「バカにしないで! 燐の本名は葛西燐音でしょ! それぐらい分かって……うん!?」


 さすがの鈴華も気づいたのかマジマジと俺を見てくる。

 仕方ない。


「はい、朝也と夜華の兄の燐音です。一応内緒な。騒ぎになるから」

「!?」


 突然鈴華の瞳から涙が溢れ出す。そのまま俺を抱きしめてきた。


「燐、結婚しよ。わたしをアサとヨルカのお姉さんにさせて」

「ちょっ」

「おいポンコツ! いい加減にしなさい!」


 お、姫乃さんがブチギレた。


「少なくとも夜華さんのお姉さんは私ですから!」

「何の張り合いだよ!」

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『身内の世話に疲れた俺が選んだのは学園のお姫様と家族になることでした』

2026年2月20日 発売です!

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