037 片桐鈴華
美少女転校生の姿にクラス中が湧き立ったせいか休み時間にはあっという間に片桐鈴華の席は囲まれてしまう。
他の学年、クラスの生徒も廊下から覗き込んでいた。
長く伸びた黒髪は純度が高く美しい。ぱっちりとした黒の瞳に均整の取れたプロポーションは学園のお姫様に匹敵する美しさを誇っていた。
「転校は正直不安だったけど、こうやって声をかけてくれてとても嬉しいわ」
片桐鈴華は凛とした声を上げる。
その声色だけでごく一般的な女の子とかけ離れていることが見てとれた。
生まれつき持っているものと言えばいいのだろうか。この学園に通う生徒とは違う世界で生きていると評してもいいかもしれない。
今までの俺ではあれば気にもしないのだが姫乃の家族となると決して無視はできない。少しでも情報を集めないと。
クラスメイト達から矢継ぎに質問をされて片桐鈴華は丁寧に言葉を返していた。
「なんでこの学園に来たの? 前はどんな学校だったの?」
「天ノ川女学院に通っていたんだけどもう少し見聞を深めなさいって両親から言われてこの学園に転校することになったの。この学園は片桐家が出資しているからね」
「天ノ川女学院って言ったら大金持ちの令嬢とか皇族とかが行くところだろ? すっげー!」
「転校する前に大きなパーティを開くんだから大変だったわ。政治家や著名人を呼んで挨拶まわりをさせられて困ったものよ」
「すげぇ……スケールが全然違うんだな」
「彼氏とかいたりするの!? それ気になる!」
「女学院だったからそういった方と縁は無かったわ。この学園に来たのはそういうのも含めて学べてってことみたい」
「おおっ! じゃあ俺達にも可能性が!」
男子勢が特に沸き立つ。片桐鈴華と付き合うことができるかもしれないという望みがそうさせるんだろうか。
「でも、その……男の子には慣れてないから。優しくしてくれると助かるわ」
まるで懇願するような片桐鈴華のうるっとした瞳に男子達はハートを射抜かれてしまう。わかってやっているのか天然なのか。
妹の夜華だったら絶対わざとだろうな。
「その、えっと……片桐さん、その姫乃さんとは。さっき妹って言ってたけど双子じゃないよね。その似てないし」
おそらくクラスメイト皆が聞きたかったことを一人の生徒が聞いてくる。
さっきから姫乃はずっと前を向いたまま着席をしていた。
「ええ、双子ではないわ。でも彼女とは一応姉妹にはなるのかしら」
片桐鈴華はスンと答えた。
少しだけ雰囲気が変わったように感じた。誰もがその意味を考え、口に出すことを憚れる。
だが片桐鈴華はごく自然に続けた。
「片桐家は幕末から続く名家なの。血筋を重んじて次世代に繋げてきた。わたしの髪色を見れば分かるでしょう。日本人らしい黒髪。でもあの子は違う。片桐家に決して入ってはいけない血が流れている。当主である父が同じだとしてどちらが本物であるか分かるでしょう?」
「っ!」
がたっと姫乃は立ち上がり、背を向けたまま教室の外へと向かった。
次の授業は始まってしまう。だけど……家族を放っておくわけにはいかない。俺は姫乃の後を追った。
「……あの子を追ったみたいだったけど彼はどなたかしら」
「葛西くんだね。最近片桐さんと凄く仲が良いの」
「へぇ、付き合ってるのかしら」
「本人達は付き合っていないって言ってたけど。家族って話だし」
「家族……ねぇ。ふーん」
不穏なシーンが続きます。
「続きが見たい」って思って頂けるならブックマークと下側の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」の評価を頂けますと頑張れると思うので良ければ応援して頂けると嬉しいです。





