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身内の世話に疲れた俺が選んだのは学園のお姫様と家族になることでした ~姫との甘々な家庭は想像以上に最高です~  作者: 鉄人じゅす
1章

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035 誰が誰のために

「君には失望したよ。どれだけ言葉巧みだろうと中身が伴わねばならんとあれほど言っただろう」

「教授、自分は!」

「身の丈に合わない仕事ばかりやりおって。……去りたまえ。君()()ではどうにもならんこと……君がよく分かってるんだろうがな」

「くっ!」


 教授にため息を吐かれ、研究室から締め出されてしまった。

 どうしてこうなった。

 生まれてから20年以上勝ち組として生きてきた俺が相次ぐ苦難に直面している。

 教授も教授だ。初めて会った時は俺のことを稀代の院生と褒めたたえたくせに手のひら返しやがって……。


 俺、葛西美幸は全てに恵まれている。恵まれているはずだった。

 凡人の両親から生まれたとは思えないほどの整った容姿に得意の弁論術はあらゆる人を虜にした。

 才能豊かな弟や妹に慕われる葛西家の長男として威厳を出し続けていた。

 大学に進学した後はコンサル業に手を出し、得意の弁論術でコメンテーターとしてテレビ出ることも増えていった。

 大学でも学会で、多大な成果を出し続けた。

 俺のところに有力者や女達が集まり、連日のパーティ全てを手に入れた…そう思っていた。


 ここ2か月でそれが一変。仕事での失敗、学会での失敗が俺の栄光に水を差してしまった。

 理由はわかっている。


 弟である燐音の家出だ。

 燐音が100点満点の資料を作り、それを俺が120点のスペックまで引き出す。今までそうやってきたんだ。

 なのにあいつが家出してから急に連絡を絶つようになった。

 何度催促しても生返事しかしないし、ついにはブロックまでしやがった。

 燐音を諦めて他の奴らに作らせたらてんで上手くいかない。いくら俺でも10点の資料を100点にすることはできない。

 そこから凋落が始まった。まだ挽回のチャンスはあるが1年このままだとおそらく俺は完全に干される。


「くっそ! どいつもこいつも断りやがって」


 今まで女に困らない生活だったのに……俺の失敗が広まるとどの女も反応が悪くなりやがった。

 有力者のパーティに連れていっていい想いをさせてやったってのに。


 ああ、イライラする。

 俺が一番燐音の力を理解していたんだ。あいつは葛西家の中で最も突出した才能を持っている。

 インプットをした知識を分かりやすくアウトプットすることができる。だから俺が用意した資料を全部読み込んで完璧な資料を作るし、夜華のアイドル活動や朝也のフィギュアの活動に対しても適したアウトプットを提示できる。

 それを両親は家事を押しつけることで上手くやってたが……そんなことに燐音の才能を潰してんじゃねー!

 燐音の才能は俺が使ってこそなんだよ!


「ちっ」


 女と遊んで気張らしでもしないとな……。

 気晴らしに新幹線駅周辺ををぶらぶら歩いていた。こんな時は一人でいる女に声をかけるに限る。

 俺の言葉と顔とテレビ出演したことを告げると身持ちが堅い女以外はすぐに靡いてくる。

 せっかくだし、とびっきり可愛い子を……。


「ん?」


 駅の入り口で道行く人々の視線が一つに集まってることに気づく。

 そういう時は大体芸能人とか著名人とかがいることが多い。その視線の先に注目すると金色の髪を靡かせた正真正銘の美少女がそこにはいた。

 美女を見慣れた俺ですら息を飲むほどの美しさ。

 一瞬時が止まったかのような完璧な造形美、二次元から出てきたのではないかと思うほどだった。

 惜しむべきは年が離れすぎていることか。顔立ちからして高校生だろう。飲みに誘うという手段はできないがあの美貌はトライする価値がある。

 金色の髪をした少女の前に立った。


「ねぇ、今、時間あるかな。ちょっと君にとっていいかもしれない話があるんだけど」

「はい?」


 声まで可愛らしいのその金色の美少女は怪訝な顔を浮かべる。

 初対面ならこうなるのも当然。

 だが俺の顔を見た瞬間、不機嫌だった少女は急に警戒心を解き笑顔を見せた。


「まさかこんな所で会うなんて……。なんでしょう。()()()()

「え? あ、ああ」


 このパターンは今までにない。まぁいい。


「俺、スティーブMって言うんだ。こう見えてコンサルタントやっててさ。テレビにも出演したことあるんだ。見たことあるかい?」

「はい、あります。コメンテーターとして情報番組によく出られてましたよね。お会いできる日を楽しみにしていました」


 意外に好感触で驚いた。

 もう少しやっかいで少しずつ警戒心を解くつもりだったけど、見た目と違って緩いのか?

 ま、顔立ち的に高校生以下なのは間違いないからやり捨てるのは無理だけど仲良くなって損はなさそうだ。

 俺の凄さを見せつけてやる。

 スマホを取り出して、著名人と撮ったパーティでの写真を少女に見せてやる。

 興味を示したら誘ってやればいい。


「来月にまたこれと同じようなパーティがあってさ。気になる子がいれば連れてきていいって言われてるんだ。君くらいの可愛いさがあれば十分。どう? 興味ない」

「へぇ……すごいですね。外国の方ばかりじゃないですか」


「ああ、俺、大学はアメリカ行ってBA(学位)をとったからな。在学中にフランスの大学に短期留学して、今は仕事の度に日本に戻ってきてるんだ。拠点はアメリカにあってその内MBAを取る予定さ。どうだい、憧れるだろ」

「ふふっ」


少女は笑う。その笑みは何だかとても不愉快に思えた。


「外国の大学の学位は取ってないと聞きましたけど。しかも通ってるのはこの先にある私立大学ですよね。フランスの学校もオープンキャンパスだけって聞きました」

「……なんでそれを」

「ふふっ」


 少女は再びにこりと笑う。

 海外経験の話は俺の外の設定でその真実を知る者はわずかにしかいない。

 何でこんな見ず知らずの少女が本当の俺を知っている。


「お兄さんのことよく知ってますよ。二ヶ月前までのコメンテーターとしてのお兄さんは確かに凄かったです。私もまだお若いのに凄い方が現れたなって。でも最近のお兄さんは本当に薄っぺらいですよね」

「なっ!」

「外側だけで中身が伴っていない。その中身はきっと誰かが補っていたのでしょう。その誰かがいなくなってしまったせいで空っぽでのまま出演しなきゃいけなくなった……違いますか」


 何を言ってるんだこの少女。

 ブルーサファイアの瞳で全てを見抜かれているような感覚に陥る。

 だけどこんな子供に怯んではならなかった。


「中身ならすぐに伴う! あいつさえ戻ってくれば……!」

「戻ってきませんよ。少なくとも()()()はあなたの元には」

「っ! 君は燐音を知っているのか! どこだ、燐音は今どこにいる!」

「教えてどうするんです。教えたとして燐くんは自分の意思であなた方から離れているんですよ」


 その実感の籠もった言葉に俺の思考は鈍る。

 この少女は燐音のなんなんだ? もしかして母さんが言ってた燐音と一緒にいる女って……。

 いつも瞬時に解を出せるのに思考が空転し、想わぬ言葉を吐き捨てるだけで精一杯だった。


「あいつは誰よりも家族想いだ! 兄を見捨てることなんてしねぇんだよ!」

「ひどい人。そうやって子供の頃から彼に全ての面倒ごとを押しつけてたんですね」

「あいつも喜んでいた! 俺が成果を出すたびに……あいつは俺を自慢の兄だと言ったんだ」

「自慢の兄なら……何でもっと彼を見てあげなかったんですか。自分だけチヤホヤされて……弟は兄の道具ではないのですよ!」

「っ!」


 そんなはずはない。燐音はいつだって喜んでいた。

 俺が賞を取った時も夜華がトップアイドルに選ばれた時も朝也がグランプリを制覇した時も……。

 俺は間違ったことはしていない。


「そういうことかよ。燐音とグルになって俺をハメやがったな」

「声をかけられたのは偶然ですけどね。でも良かったです。燐くんを返す必要がないことをまた一つ理解しました。夜華さんはまだしも……それ以外の燐くんのご家族は最低ですね」

「燐音の力は俺が一番上手く扱えるんだよ!」

「違いますよ」


 少女ははっきりと否定の言葉を言い放った。


「燐くんがいないとお兄さんはお兄さんでいられなくなるけど、お兄さんがいなくても燐くんは燐くんのままでいられるです。つまり」


 少女は強く、俺を指さしてきた


「燐くんがあなたを一番上手く扱えるんです。だからお兄さんは使()()()()()なんですよ」

「……な……」

「頭を垂れればきっと燐くんは」

「ふざけるな! 弟に頭を下げるなんてできるはずねぇ!」


 俺は一歩下がり、少女から離れる。

 これ以上付き合っていたら全てを見抜かれてしまいそうだったから。

 もしかしたら燐音も近くにいるかもしれない。こんなふざけた姿を弟に見せるわけにいかない。


「オレを敵に回したこと、燐音もおまえもただですむと思うな!」

「私としてはお兄さんと仲良くしたいんですけどね。他ならぬ燐くんのお兄さんですから」

「覚えてろっ!」


 こんな年下の小さな少女に言いくるめられ、オレは逃げるしかなかった。


お兄さんとのお話はまだ続きます。姫乃さんのレスバは相当強いのかもしれません。

ここで素直になって謝ったのが夜華。

プライドが邪魔して敵対するのが御幸。

ここがターニングポイントですね。


いつものお願いですが

ざまあしてすっきりした後は是非ともポイントで還元頂けると嬉しいです、

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