032 おねむな二人
家族として夜華と姫乃を持ち上げた。
姫乃は部屋に入れるとして、夜華は……俺の布団に寝かせるか。
洗面場で寝支度をさせて、再びだっこをせがまれたのでまた持ち上げて寝床へと連れて行く。
姫乃をまず連れていくことにした。
「部屋入っていい?」
「はぁい」
姫乃の部屋には初めて入るかもしれない。家主の部屋だしな。
真面目な姫乃らしいきちっとまとめられた部屋だ。ベッドの上には大量のぬいぐるみがあった、ぬいぐるみが好きなのかな。今度ゲーセンで取ってくるか。
部屋のベッドに姫乃を下ろす。
「着替えてから寝まひゅ」
「おう、そうしてくれ」
姫乃はいつも可愛らしいピンクの寝巻きに着替えている。今日もそれに着替えるのだろう。
もう完全に寝落ち寸前だったようで、姫乃は立ち上がり、ハンガーラックにかかった。キャミソールを手に取る。あんな服着たことあったっけ。まぁいいか。
俺の姿関係なく着替えそうだったので部屋から出ることにした。
今度は夜華を抱えて俺の部屋の布団の上に下ろした。
「お兄ちゃん。たまには一緒に寝ようよぉ」
「たまにはって言うほど一緒に寝た記憶ないけどな」
「けちぃ」
「ちゃんと寝なさい。明後日から仕事だろ。明日はどうすんだ? いったん家に帰るか」
「前泊だから直接新幹線乗る。マネが荷物持ってるし」
「了解」
「お兄ちゃん」
「ん?」
「やっぱり一緒に帰らない?」
「帰らない」
「なんで?」
「……ここに大事な家族がいるからな」
「じゃあせめて一緒に寝て」
「ったく、わーったよ。本当に寝るだけだからな」
妹と一緒に一つの布団で寝るなんて人によってはぞっとされるだろうな。
でも夜華はこの年で社会の荒波に揉まれていてメンタルにダメージが行ってることもあった。
実家だったらこんなこともしないんだけど、またしばらく会えないんだし……少しでも妹の希望を叶えてやりたい。
実家に帰らない選択肢を取ってるんだから。夜華が寝入るまで頭を撫でてやることにした。
「お兄ちゃん……」
悪いな。でも俺だって我が儘を言わせてくれ。実家では一度も我が儘言ったことがないんだから。
翌日、目を覚ました俺はすぐにリビングの方へ足を運ぶ。
何だか早くに目が覚めてしまったな。
夜華は寝ぼすけだからまだ寝てるとして、普段早くに起きる姫乃がいつ起きてくるかだなぁ。
さすがの優等生も夜中に寝てこんな早くに起きることは難しいかも。
「ふわぁ……。朝飯でも作っておいてやるかな」
キッチンの方へ行こうとした際、通路の扉が開く。
恐らく姫乃だろう。
規則正しい時間に起きてるから自然と目が覚めたのかもしれない。
「おはよう」
「おはようございます……燐くん」
「……」
確かに間違いなく姫乃だった。
だが俺はその姿から目が離せない。
「すごくねむいです……」
「お、おお」
今、姫乃は非常に際どいキャミソールとピンクのショーツのまま俺の前に現れたのだ。
その薄く際どいキャミソールは豊満な胸の谷間がよく見えるものだった。
完全に目が覚めて凝視ししてしまう。
顔も体も完璧な女の子もあられもない姿、これはとても朝からキツイ。
確かに姫乃をベッドに下ろした時、着替えると言ってあのキャミソールを手に取っていた。
いつもはピンクのルームウェアを着て眠っている印象だったが、どうやらその下にこのキャミソールを着ていたのか。
もしくは寝る時はキャミソールだけにするのかもしれない。
思わず鼻血が出てしまいそうなほどの色気だったが、まだあの時の上下、下着だけで出てきた時の衝撃の方がマシだといえる。
「燐くん、私はソファに座ります」
「はぁ」
座ればいいんじゃないだろうか。家主の意向なので止めろとは言わない。
姫乃は俺の方を向き、ソファを指差す。
「旧妹にはするのに新妹にはしないんですか。同じ家族なのに」
何の話だと思ったが昨日のことを思い出すと答えは出てくる。
あの時夜華は俺を椅子にしてゲームプレイをしていた。姫乃が物欲しそうにこちらを見ていたことを覚えている。
あれと同じことをして欲しいということか。
でもあれは妹だったからであり、クラスメイトの姫乃に出来るかというと……。
だが断ることもできない。それは姫乃のことを女の子として意識してしまっているという意思表示になるから。
俺はソファに座って精神を集中させる。年頃の妹が座っても何の反応もしなかったじゃないか。
姫乃が座ったとしても大丈夫。きっと。
「よいしょ」
姫乃がどんと俺を背もたれにソファを座った。
麗しい金髪が眼前に広がり、甘い匂いにくらくらとする。姫乃が背を預けてきた。
そうなると視線は必然と下に行く。
でっか。
夜華と違って完全に下が見えないんですが、代わりに柔らかそうな胸の谷間が現れた。
こんなの後ろから揉んでくれって言ってるようなものじゃないか。
「座りごこちは微妙ですけど……安心感はありますね。燐くんは暖かい」
姫乃が俺の正面に向いてハグするように体を押し付けてくる。
そうだね。暖かいね。ドキドキして熱が出そうだ。俺も姫乃をぎゅっとしていいだろうか。
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