031 兄妹いちゃいちゃ
「お兄ちゃん早く〜!」
「自分で用意しろ!」
と言いつつ準備してしまうのが妹に甘い俺の悪い所だな。
ゲームをセッティングして、テレビに繋げる。
ソファに姫乃と夜華が座り、コントローラーを渡す。
さて俺はどうしようか。
「お兄ちゃんはここ」
「どこだよ」
「ここっ」
「はぁ……」
時々、幼児退行するというか……あるんだよな。
特に仕事のストレスがあった時と寂しくなった時。今回は後者だろうか。
夜華は立ち上がり、俺がソファの上に座る。そして夜華は俺の上に座る。
「へぇ」
姫乃から少しだけ怒気の籠った声が流れた。お、怒っているのだろうか。
「姫乃、羨ましい?」
「別にいいですけど。燐くんと夜華さんは家族ですからね」
姫乃はすまし顔で答える。その割にチラチラとこちらを見ていた。
「お兄ちゃん頭撫でて」
「ったく……甘えん坊な妹だ」
「いいなぁ」
何だか姫乃さんからそんな声が漏れた気がしたが気のせいだろうか。
まぁいい。夜華とはまたしばらく別れることになるし、いっぱい甘えさせて充電させてやろう。
今回の件、俺にも悪いところがたくさんある。
何だかんだあっても双子は世界一可愛い。
それから1時間。日本を代表するトップアイドルの夜華と学校で一番人気の姫がロボットゲームをやっている。
あの二人だけ写真を撮ってネットにアップしたらいい匂いがしそうとか可愛すぎるとか言われそうだけど……映像を含めるとドン引きするに違いない。
「ここで増援って嘘でしょ! ああ、もうゲロビ当たんない!」
「覚醒使いますね。何だかよく分かりませんけどこの機体強いですっ!」
今はずっと協力プレイで高難易度のステージをやり続けている。
最初は不慣れだった姫乃もあっと言う間に操作を理解して、完全に熱中してしまっていた。
ゲーム系はハマりやすい体質なんじゃないかなって思う。
「うーん!」
1戦闘の合間のステージセレクトの画面で夜華が伸びをする。
そのたびに俺に体を預けるんだよなぁ。こうやってみると夜華も大きくなったなぁと思う。
妹の成長が嬉しくもあり寂しい。今はトップアイドルとして活動して、いずれは恋人とかもできるんだろうか。そう思うと辛い。
こういうこともいずれはできなくなるんだろう。
夜華が振り返って俺に抱きついてきた。ハグしてという合図だ。ぎゅーとしてやると嬉しいらしい。
本当に甘えん坊だな。少しぎゅっとすると夜華が離れて再び、向き直った。
「お兄ちゃん肩揉んで」
「夜華のじゃこらないだろ」
「それどういう意味!?」
上から覗いても下がよく見えるんだよな。
でも下手に胸があると男が寄ってくるから夜華はこれでいい。
「お兄ちゃんの馬鹿、首絞めてやるー」
両手手を伸ばしたついでに俺の首を絡みつくように絞めてくる。
ちょっと意地悪を言うとこうやって俺にいたずらするように構ってもらおうとするんだよなぁ。
「こらやめろぉ」
「やめなーい」
夜華が両手を伸ばして俺の首に手かけたり、ペタペタ顔を触ってきたりする。
やれやれこうなるとこうしてやるしかない隙だらけの夜華の脇腹を優しく揉む。
「わひっ!?」
夜華の体が跳ねる。万歳して弱点さらす時点でこうなるって分かってるはずなんだけどな。
多分、仕返しされるの前提でちょっかいかけてくる。妹なりの愛情表現なんだろう。
昔から夜華が何か甘えた行動をとってきたらくすぐってやり返すのが日常茶飯事だった。
妹ゆえに殴ったりはできんしな。
「夜華の大好きな脇腹マッサージだぞ。いっぱい揉みほぐしてやるからなぁ」
「そんなのす、好きじゃないもん。きゃはは! 強くしないで!」
「喜んでくるくせに。ほら、ステージ開始したぞ。このままクリアしろよ」
「む、むりぃ! でも、やってやる……ひゃわっ! わ、腋は駄目だって」
「いつも腋晒した衣装着てるくせに」
両腋を責めるとさすがに悶絶するか。
コンボ決める時につっついてやって邪魔したり、集中しなきゃいけない場面で肋骨のあたりをぐりぐりすると強めに反応する。
普段は弱くして刺激を最小限にするのがポイントだ。
本当に嫌だったらすぐ離れるはずだし、やっぱり構ってもらいたいんだと思っている。
「ちょ……くふふふ! 今、いい所なんだから、もうっ!」
大きくなってもこういう所は変わらないな。
妹とこうやって過ごす時間も少なくなるんだろうか。
苦戦しながらもステージクリア。その時は全力で夜華の脇腹や脇の下を責めまくった。
「夜華、おめでとー!」
「きゃはははあっ! それは無理っ! 無理っ!」
我慢できず立ち上がり、夜華はコントローラーを持ちながら俺から離れた。
「お兄ちゃんの馬鹿、えっち!」
「妹には欲求しねーよ」
俺は立ち上がり、ソファから離れる。これで兄として構ってやるのは終わりでいいだろう。
夜華もすっきりしたのか再びソファに座る。
だが気になったのが一つ。
「姫乃どしたの」
「い、いえ」
姫乃がじっとこっちを見ていたのだ。二人プレイ中にも関わらず、明らかに途中から視線が泳いでいた。
「もしかしてお兄ちゃんに構って欲しかった? 姫乃もお兄ちゃんの上に乗る?」
ま、まじか。妹は正直どうでもいいんだが姫乃が俺の上に乗るのはやばい。
それだけで興奮し、下半身に血流がめぐる。はいって言われたらどうしよう。
「わ、私は遠慮します」
「その割に顔を赤くして物欲しそうにしてるじゃない」
「してません!」
断られたのはちょっと惜しいなって思ったりする。
「夜華さん、次のステージ行きますよ」
「はいはい。お兄ちゃん、お腹空いた!」
「燐くん、ベーキングパウダーあるのでパンケーキでも焼いてくれませんか」
「あいよ」
確かに姫乃はずっと俺と夜華とのじゃれ合いを見続けていた。
あれが家族同士のじゃれ合いといえばそうなんだろう。あれを姫乃とやるとなるとやっぱり俺が我慢できんかもしれん。まぁいいか。
しかし。
「もう23時なんだけどなぁ」
明日も休みだし問題ないと思うけど今からパンケーキ食べるってことはまだ起きてるってことだよな。
いつも23時頃には寝る姫乃がこの時間まで起きているのは非常に珍しい。
そうして幾多の戦いを経て、最高難易度のステージをクリアすることができた。
「やったーっ!」
夜華と姫乃は嬉しそうに手をたたき合った。
「久しぶりにプレイしたけど勘取り戻したわぁ」
「すっっごく楽しかったです。いやぁ白熱しましたね」
「おー、お疲れ様」
喜びを分かち合っている所、家族として非常に微笑ましい。
「ふわぁ……安心したら眠くなってきたわね」
「ええ……分かります。もう23時くらいですかね」
「姫乃、ほらっ、今の時間」
スマホを光らせて見せてやる。姫乃が驚いて後ずさった。
23時どころか、もう朝の3時だったつーの。あと2時間もすれば日が昇る時間帯だ。
「ぜ、全然気づきませんでした。……でも3時だと思うと体がヤバイです。ふわぁ……眠いです」
「うーん、あたしも……。ねぇお兄ちゃん寝所に連れてってぇ」
「燐くんだっこ」
「君らなぁ」
まぁいいか、世話のやける妹達を助けるのは兄の役目。
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