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020 魔性の女

「ほんと冗談のつもりじゃないんだよ。姫乃に魅了されて、あぶないことをしようとした人は一人や二人じゃないんだ。姫乃を想うゆえにブレーキが壊れちゃうんだろうね」

「マジかよ……」

「だから姫乃が男子に冷たいのは仕方にないことなの。燐音っちも気をつけてね。燐音っち自身も」

「分かってる」


 時々、彼女の可憐さに心を奪われそうな感覚に陥ることがある。下着姿であられもない姿になった姫乃を見た時は本当にやばかった。

 今もあの時の姫乃の姿を思い出してしまう。家族だって思っているのに!


「コンクールも終わったし、姫乃といっぱい遊ぶんだぁ」

「いいじゃないか。姫乃も喜ぶと思うよ」

「つまり燐音っちも付き合ってくれるってことだよねっ」

「俺も付き添うの?」


 強制的に巻き込まれてる件。友人関係となるなら二人より三人ってのも分かる気がする。せっかくだし、姫乃と平原さんが仲良い件、ちょっ詳しくと聞いてみるか。


「平原さんは姫乃とどんな形で仲良くなったんだ? 中学からの付き合いって聞いてるけど」

「うん、そうだよ。中一の時同じクラスだったんだ。中一の姫乃写真見てみる? 無茶苦茶可愛いよ」


 本人が聞くと真っ赤になって阻止するだろうけど、姫乃はお菓子作りに集中している。

 平原さんに見せて貰ったスマホで撮った画像に姫乃と平原さんが写っていた。

 平原さんも可愛らしいが、やっぱ姫乃の印象的な金髪は凄く目立つし、可愛さも明らかに突き抜けている。

 こんな可愛い中学生いたらやばいだろうな。


 ……さらに気になったのはその写真は女子5人で写っていたことだった。


「あの当時、仲が良かった5人で撮ったんだ」


 そうか。姫乃にもちゃんと同性の友達がいたんだ。

 今は何となく平原さんしか親友がいないって感じだったけど……そうではなかったのか。


「他3人って今はどうしてるんだ? もしかして高校は別だったり」


 平原さんは少し表情が暗くなり、首を横に振った。


「全員今の学校に通ってるよ。クラスはどうだったかな。……もう付き合いもないし」

「え、なんで。喧嘩したとか?」

「それだったらまだ良かったんだけど。結局……姫乃が魔性の女の子だったのが原因かな」


 魔性の女。平原さんは姫乃の悪口を言うタイプではないから本当の意味なのかもしれない。

 彼女のまわりに何があったのか。


「一人はまだマシかな。成績トップの姫乃に何やっても敵わなくて病んじゃったんだよね。勉強がとりえで裕福とはいえない家庭の子だったから。この時はあたしもまだ姫乃は名家のお嬢様としか思ってなかったしね」


 姫乃の場合は美貌だけでなく、才覚もあった。

 おまけに妾の子とはいえ名家の人間。万物を与えられた人間の才能に嫉妬する子は誰だっている。


「次の子は長年片想いしていた幼馴染の男子が姫乃のことを好きになってしまった」

「ああ……」

「すごく揉めたよ。姫乃が強く傷つくくらい……、あたしが側にいなかったらかなり遺恨が残ったかも」


 それは今もありそうだな。同じクラスの男子で大半が姫乃に恋心を抱いている。

 抱いていないのは俺みたいな事情持ちか。和彦みたいに違う人に想いを寄せている人くらいだろう。


「最後の一人は姫乃自身に恋をしちゃった。それでちょっと犯罪まがいのことをしちゃってね。それ以上はあたしからは……」

「いいよそれ以上は。だから姫乃は同性の友人も少ないのか」


 初めて開いてくれた誕生日パーティ。家族じゃなくて友達同士でやらなかったのかなって思ったけど、そういう事情があったんだ。

 同性すらも虜にする圧倒的な美貌。学園一のお姫様だな。

 俺はまだ姫乃のことを知らな過ぎるんだろうなって思う。


「平原さんは姫乃のことを好きっぽいけど……そういう目では見てないよな」

「好きよ。初めて姫乃を見た時衝撃が走ったもん。あんなかわいい子見たことなかったし、絶対仲良くなりたいって思ってうざがられても根性入れて、声をかけ続けたよ」


 平原さんはちらりと姫乃の方に視線を向ける。


「後で知ったんだけど家庭環境のせいで姫乃は家族の愛情に飢えて人間不信になってた。あたしは嫌な言い方になるけど、家族とすごく仲がいいんだ。だから姫乃の求める家族愛を理解できないし、与えることもできない。でも……友達にはなりたいって思ったから」

「平原さん……」


「だからあたしだけは最後まで姫乃の友達でいたい。そう思ったんだ」

「その好きは姫乃にとっても嬉しかったんだろうね」


 姫乃が家族を求めたのに友達を求めてなかったのは平原さんが側にいたおかげなんだろうな。

 姫乃と平原さんはお互いにとって無くてはならない存在なんだ。


「そういう意味では燐音っちにはありがとうって思ってるんだ」

「え、何を?」

「姫乃の家族になってくれたことかな」

「……礼を言うのは俺の方だよ。だって俺が求めたものを姫乃が与えてくれたんだ。俺にとって姫乃は恩人で家族として大切な存在なんだ」

「だってぇ姫乃!」


 喋りに集中していて姫乃がすぐ側まで近づいていたことに気づかなかった。

 焼けたクッキーがあるトレイを両手で持ち姫乃は顔を赤くして立ち尽くしている。

 とんでもなく恥ずかしいこと言ってしまい、顔が赤くなりそうだ。


「クッキーと一緒で熱々じゃん。さぁ食べよ食べよ」


 こんな状況を作り出した平原さんは姫乃からトレイをひったくりテーブルの上に置いてしまう。

 顔を赤くする姫乃と目が合う。


「……まったく燐くんは何の話をしてるんですか」

「それは……。ごめん」

「私も同じ気持ちなので良いですよ」


 姫乃はそう言って平原さんの隣に座ってしまった。

 ああ、なんか胸がとても熱い気がする。姫乃もこの生活に満足してくれているなら本当に嬉しい。


 焼きたてのチョコレートクッキーは見た目からして非常に香ばしそうで店売りの物と遜色ない感じだ。

 お菓子作りは難しいと聞くがこの短時間でしっかり成功させるのはさすがだと思う。


「紅茶もいれましたよ」


 甘いクッキーには紅茶が合うよなぁ。

 さっそく平原さんがひとつまみし、俺も続けて1枚頂いた。


「美味しいっ!」

「焼きたてってマジで美味いな」


 店売りのものは冷めているのが普通なので熱々の焼きたてクッキーを食べられることはほとんどない。

 姫乃も自分でクッキーをパクリと頬張る。


「うん、なかなかです」


 ご満足ににこりとする。

 これで失敗でしたとか言うならどれほどのものが出来るのか驚愕だったわ。

 甘すぎない紅茶もクッキーによく合う。


 これは本当に満足だな。


「本当に上手だよな。いくらでも食べられるよ」

「昔はいろんな人に振る舞っていたんですけど、みなもと二人になってから余るようになってしまいました。燐くんがいっぱい食べてくれるのと嬉しいですね」


 さっきの平原さんの話か。昔はたくさんの友達に振る舞ってたけど今は……。

 いっぱい作っても食べてくれる人がいなければ寂しいよな。


「いっぱい作っていいよ。俺が全部食べてやるから」

「それなら腕がなりますね。燐くんはお腹がでっぷりするかもしれませんが」

「運動しないとヤバそうだ」

「そこはご自分で何とかしてくださいね~」


 全部食べると高カロリーなので残ったクッキーは明日以降のお楽しみでお菓子タイムは終了。

 紅茶を飲みながら3人での談笑を楽しむ。姫乃を真ん中に置いて俺と平原さんで両隣に座る。本当に良い昼下がりだ。


 平原さんは姫乃を手招きした。


「姫乃、カモン」

「ええ……。暑いんですけど」

「やだ! コンクールへの練習いっぱいで疲れたから姫乃成分を一杯吸収したいの」


 何だかんだ友達に甘い姫乃は後ろを向いて俺と向かい合わせになる。

 そのまま平原さんは抱きつくようにして、姫乃の艶やかな金髪に顔を埋めた。


「姫乃……髪の毛最高ぅぅぅ」


 変態みたいなこと言うなぁ。


「姫乃さんの中学時代!」「続きが気になる」って思って頂けるならブックマークと下側の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」の評価を頂けますと楽しいイチャイチャが見れるかもしれないので良ければ応援して頂けると嬉しいです。

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