019 仲良く談笑
今日は休日、俺たちの休日の暮らしはお互いの趣味に理解のある感じとなっている。
俺は基本的にはプログラムを組んで、様々な便利アプリの開発に携わっている。
お金を稼がないといけないからな……。単純なバイトをする方が稼げる時もあるけど姫乃がさみしがるので現状はスマホで出来るお仕事をメインに行っている。
姫乃は読書が趣味のようで家事の合間に文庫本を手にしている。
電書よりも紙を好んでいて、そのジャンルは多岐に渡る。俺には隠しているがちょっとえっちなティーンズラブ系のものが入っているのも知っている。指摘するのはタブーなのでノータッチ。俺もエロ動画持ってるし……。
姫乃は家事をするために立ち上がろうとした。小説には栞を挟んで、ぽんと机に置く。
「いつも見るけどその栞、お気に入りなんだな」
姫乃が使っている本の栞はイチョウを押し花にしているようだった。姫乃の髪色にそっくりでとれも綺麗だ。
本よりも栞の方が大事しているようにも見える。
「ええ、昔……大切な人に頂いたものなので」
「そうなのか」
お父さんだろうか。それとも別の……。話題はそこで終わってしまったのでこれ以上は聞けなかった。
そして数分後、チャイムが鳴って平原みなもさんがマンションにやってくる。
「姫乃、遊びにきたよぉ!」
「来るなら連絡をしてくれないと」
「あはは、ごめんごめん。でもいると思ったからさぁ、葛西くんと」
それでやってきたのか。片桐さんの親友の平原みなもさん。
今時と言うと少し良くないが俺や姫乃とは違う印象をもつ可愛らしい顔立ちをした女の子だ。
「葛西くん、側にいる?」
「いるよ」
「おー! エッヘッヘ、やっぱ同棲だぁ。もうできちゃったのかな」
交際しているように言うんじゃない。インターフォン越しでの会話は迷惑となるので解錠し、平原さんはマンションの中へと入っていく。
「まったく……みなもったら」
「平原さんは結構遊びに来るの?」
「そうですね。燐くんが来るまで月1回くらいで泊まりに来てました。みなものお泊まりセットは置いてるんですよ」
「じゃあ一緒に住んでる件は案外すぐバレてたかもしれないな」
「燐くんとの件があってしばらく忘れてました」
でも平原さんと一緒に話してる所を見るとやっぱり二人は一番の親友同士なんだろうなと思う。
鍵を開けた玄関から平原さんが入ってきた。
「二人ともおっはよ~! ここが姫乃と葛西くんの愛の巣かぁ」
「その言い方はやめてください」
「完全にからかってるよなぁ」
出会った時は警戒していた平原さんもこの状況を認めてくれたのは素直にありがたい。
姫乃と仲良くできていることが大きかったんだろうと思う。
「クンクン」
平原さんが俺と姫乃の横を通る。
「二人から同じシャンプーの香りがする。これが本当の臭わせですかぁ」
「燐くん、シャンプーを分けましょうか。家族でも分けますよね?」
「ああ、妹は共用を嫌がったから普通だと思う」
気づいたのが平原さんだから良かったものの、他の人だったら別の意味で一騒動だろう。
このあたりも気をつけないと……。
「今日は暑いよね~。ちょっと涼ませてぇ」
夏が近づいてきて今日は気温が高くなっている。そろそろクーラーも使い始めてきた時期だ。
平原さんはリビングのソファに座り込み、クーラーの冷風で体を涼ませていた。
「みなもが来たわけですし、クッキーでも焼きましょうか」
「やったー! 姫乃のお菓子だぁ」
「クッキーかぁ、姫乃の作るお菓子は絶品だよな」
「楽しみにしてください」
俺と違って姫乃はお菓子関係が得意だ。ケーキとかもこだわって作ることができる。最近ちょっと教えてもらってるんだよな。
お互いの得意料理を教え合って姫乃と仲良く関係性を深めている。
今回はリビングのソファでまったり待たせてもらおうか。平原さんがソファの俺の隣に座ってきた。距離が近い!
「ねぇ燐音っち」
「燐音っち!?」
いきなりあだ名で俺を呼ぶ平原さん。今までつけられたことのないあだ名に驚いてしまう。
「姫乃が燐くんって呼んでるから燐音っち。同じように燐くんって呼ぶと姫乃に怒られそうだもん」
「平原さんはすげーな」
「もう他人行儀だなぁ。みなもでいーよ」
「女の子の下の名前はハードル高い」
「男子ってちょっとそういう系多くない? 吹奏楽部の男子もそんな感じだよ。あ、和彦っちって燐音っちと同じクラスだよね」
「和彦とも親しいのか?」
「うん。同じトランペットの奏者だしね〜。和彦っちめちゃくちゃ上手いよ」
俺の友人の和彦もそういえば吹奏楽部だっけ。
妙な所で繋がり出てしまうな。そういえば。
「そういえば和彦が言ってたな。同学年でトランペットのソロ奏者がいるって。目標にしてるって」
「いや〜照れるなぁ」
この感じだと平原さんの方が上手なんだろう。しかも1年でソロ奏者って詳しくなくてもすごいってのがわかる。
ただ和彦が目標だけでない感情を抱いていることは伝えないでおこう。
これだけ美人なら好きになるのもわかる。だけど親友、その恋は茨の道だぞ。
「平原さんってさ。モテるでしょ」
「ん~。そうかも、姫乃ほどじゃないけどね」
平原さんはスマホを片手にソファに雑に座る。
ショートパンツで寝転んだような体勢になることで健康的なふとももがうっかりと目に入る。
姿勢が綺麗な姫乃とは違う女の子の魅力にドキリとする。
「男子によく勘違いされそう」
「そーなんだよねぇ。なんか仲良くなったらすぐ告られる」
平原さんは誰とも付き合っていないと片桐さんが言っていた。
友情の範囲が極めて広いんだろう。可愛い子に優しくされたら好きになっちゃう気持ち何となく分かる。
「あたしって音楽第一だからさ。恋愛とか向いてないと思うんだよねぇ」
「そうなんだ」
「デートよりもトランペット吹いてる方がいいかなぁ。それに遊ぶなら友達と遊べばいいしね」
言わんとしていることは分かる。
実際俺も恋愛をしてこなかった人間なのでその気持ちがよく分かる。
今は同性の友達と馬鹿やってる方が楽しい。
……同性の友達もほとんどいないけど。
「でも燐音っちも気をつけなよ。姫乃を好きな男子はマジで多いからね。中学時代はエグかったもん」
「それは分かるよ。今もやっかみ受けてるし」
「姫乃が可愛すぎるせいでみんなおかしくなっちゃうからね」
いきなりバカなことを言い始め、思わず笑ってしまったが平原さんの表情は真剣だった。
「冗談のつもりじゃないよ」
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