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010 姫乃の気持ち

 飯を食い終えてすぐに姫乃の手を引っ張って校舎の裏へと向かう。

 二人で教室出た時も噂になったんだろうなと思う。

 校舎裏で姫乃に詰め寄った。


「姫乃さぁーん、何を考えてるのかな」

「何のことでしょう」

「学年一の成績の君が天然でやったわけじゃないよね」

「私、嘘は言ってませんよ」


 嘘は言ってないのが怖いよな。付き合ってもいないし、俺の声が魅力的だと言ってくれたことも事実。

 だけど騒ぎになってしまったじゃないか。


「でもいくら付き合っていないといってもあれだけの騒ぎだ。君と俺が特別な関係だってことはバレただろうな」

「ええ、家族ですからね」

「さも当然に……、それに俺との噂が広まったら嫌だろ? だから他人のフリしたのに」

「嫌じゃないですよ。私は燐くんと噂が流れても構いません。それに燐くんも別に噂が流れていいって言いましたよね」


 何でと思ったけど……姫乃は本当に俺との関係を嫌がってないことを知った。

 俺は姫乃が俺と噂をされるのが嫌だと思い込んでいたのだ。


「燐くんに相談してからにすれば良かったのも事実です。ただ……朝から不愉快なことがあったので」


 不愉快? そういえば遅刻ギリギリに校舎に入った俺とそれほど変わらず姫乃も校舎に入っていた。

 あれだけ時間差があったにも関わらずにだ。


「何があったんだ」

「いつものことです。校舎口で面識の無い別のクラスの男子に呼び止められて、付き合ってほしいって。私のこと何も知らないくせに……君を幸せにしたいだなんて抜かすんですよ。本当に不愉快」


 姫乃の家庭環境なんて知っている人はごくわずかだろう。

 姫乃が求めているのは彼氏ではなく、家族の関係だ。付き合って欲しい、幸せにするなんて言葉は逆鱗に触れると言っていいだろう。

 俺だって一歩間違えればすぐに同じような道をたどってしまう。


「燐くんとの噂が流れればこういうのが減ると思ったんです」

「そうだったのか」

「ごめんなさい。思ったより大騒ぎになってしまいました。燐くんにはご迷惑をかける形になったかもしれません」


 姫乃は大きく頭を下げた。普通の女の子であればここまで騒ぎにはならなかっただろう。精々からかわれるレベル。でも片桐姫乃は違う。

 学園で一番可愛いお姫様はやっぱり普通じゃないんだよ。

 彼女も自分の人気がここまでとは思ってなかったんだろう。

 入学以来絶えず告白をされてきた女の子。その影響力は恐るべし。

 この学園で姫乃を可愛いと思わない男子なんて皆無なんだ。


「やってしまったのは仕方ない」

「怒ってはいないんですか」

「どうせいつかはバレるんだし運が良かったかもしれないな」


 怒る立場に無いと言った方が正しい。俺は姫乃の厚意を受けて今の立場にいるんだ。

 ただ、しばらく男子からやっかみを受けるだろうな……。

 ま、陽キャで気の強い兄妹弟と生きてきたから人の敵意には耐性がある。大人の方がよっぽどこえーわ。


「一緒に住んでることだけはバレない方がいいな」

「そうですね。先生にバレてお互いの両親に連絡がいくと面倒ですし」

「でもバッサリ切ったよなぁ。姫乃がフッたあいつマジで落ち込んでたぞ」

「私の見た目だけで好きだって言ってくる人なんて……。どうせ私の出生を聞いたらどん引きして離れていくに決まってます」


 名家片桐家の私生児。恋人になるってことはそれに向き合うってことだ。

 俺たちのような高校生には荷が重すぎる。本当の意味で姫乃を支えたいという根性が必要になってくるだろう。


 姫乃がぴたりと俺の手のひらに触れた。


「せめて燐くんくらい良い声じゃないとですね〜。良いことしたら褒めてくれていいんですよ」

「はいはい、いいこいいこ」


 俺の声が好きすぎるってか。俺のことを弟扱いしつつ本質的に求めているのは父親なんだろうな。

 

 その後、姫乃と家族設定をもう少し詰めることにした。

 俺と姫乃は遠い親戚。先日亡くなった祖母ちゃんの葬式でたまたま出会う。

 その場で話をして意気投合。兄弟のいない姫乃が俺を弟のように思ってしまったためお昼のような騒ぎとなってしまった。

 そんな感じである

 これをクラスメイトにバラまくと男子からは羨ましがられ、女子からは姫乃にはもったいないって説得されていたが家族ですからという言葉で沈静化することになった。


 家族って言葉はほんと便利!


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