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え....?キスされた?

え?夢?


依は唖然とする。


気...、のせい?顔が近かったから、あたっちゃっただけ?

口だった?

でも、感触が....。

唇だったのか他の部分だったのか、わかんない。


鉄平の顔のどこかが触れたことはわかるが、接触面積が小さすぎて、どの部分で依に触れたのかがわからなかった。


でも、でも、鉄平さんは正面を向いていたから.....、多分。

くちびる…?


目まぐるしく思考が駆け抜けていく。


依は、冷静を装うとする。 が、無理だった。

じわじわと、顔に赤みがさしていく。


“依さん。キスをして困らせてしまいましたか?嫌でしたか?”


しょぼんとしながら、上目遣いで聞く鉄平が、あざと可愛い。

キュンとしてしまう。


それよりも、やっぱりキスだった。

口の端にあたったのは、唇だった。

その事実に、さらに顔が赤くなる。


一応、外面では心配そうに依を窺う鉄平だったが、内心ではニヤついていた。キスに嫌悪感を抱かれてる感じがしない。


そして鉄平の想像通り、依はブンブン首を横に振り「嫌じゃないですっ。」と慌てて答えてくれた。


“よかった。”と、鉄平はふわっと笑って依を見つめる。

悪気がなさそうな天使な笑顔に、依は顔を赤くなったまま、グヌヌっと唸り声を上げるしかなかった。


しかし、場所が場所。

その前の会話で、キスをされるような発言はなかった気がする。

依は、理由を鉄平にドギマギしながらも尋ねた。


「な、なぜここに?」


“本当は、ぎゅって抱きしめたかったんです。

でも、この体じゃ出来ないでしょう。

でも、嬉しさがこみあげてきちゃって、衝動が抑えられなくて…。

それで、キスがしたいなって思ったんです。だから、目の前にあった唇に....。

でも!恋人じゃないから、壇上の想いで!

....端っこにしました...。本当は、ちゃんとしたかったんですが....。

すいません、依さんが可愛くて素敵な女性だと、改めて思ったら止まらなくなっちゃって。

唇が美味しそうで、思わずしてしまいした。”


鉄平の想いがどんどん加速してしまって、止まらなかったようだ。

それにしても、すいませんと謝ってるのに、ちっとも、悪気がなさそうだ。


なぜなら、鉄平は後悔なんかしてなかった。計算の上で、わざとしたのだから。


『少しでも、依の心に自分を刻みたい。忘れられたくない。』と、正直な気持ちが溢れて行動してしまったわけだが、依の『嫌じゃない』というお墨付きをもらって安心していた。


それに対して、依の心中は大混乱だった。


なんなのぉ(泣)鉄平さぁぁぁん。

思わずって、どういうこと??

女性が苦手だったはずじゃない?

実は、百戦錬磨の女泣かせだったりしたの!?

社会人になってからご無沙汰な私なんかじゃ、大人の恋愛って、わかんないのにぃぃ。

それに...、

嫌じゃなかった私が、一番わかんない!

マスコット枠だから?

いやいや、そんなことない。鉄平さんは小さくても幽霊でも、しっかりと男性だし。

なにより!

嫌と思う以前に、しっくりきちゃったのが問題!

安心しちゃったし、なんなら多幸感まであった気がする…。



こないだされた、ジェットコースターのような刺激的な沢崎とのキスと違って、鉄平とのキスは縁側で日向ぼっこをしているような温かさを感じた依。


依は、鉄平とのキスが課長のと全然違う事に困惑した。


課長の事は、人として好き...。

上司としても尊敬している。

でも...、

男の人として考えると、どうしても一番先にくるのは、おこがましいという気持ち。


対して、鉄平と先ほど話していた時のことを思い出すと...


鉄平と結婚するために努力すると、自然と口から出た。

身を引かずに、並び立てるよう自信をつけるといった。


課長の時と何が違うんだろう?

課長と付き合うために努力をしようという気持ちが、今のところ湧いてこない。

多分、休み明けに『YES』と答えたら、腹をくくって努力する自分は想像できる。

でも、やっぱり腹をくくってと思うところで、無理をしてるのは間違いない。


それに対して、鉄平さんと結婚できるかと言われた時は、自然と努力しようと思えた。


何が違うんだろう…。


依は、考えれば考えるほど、深みにはまっていった。






















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