異世界から日本へ
基本、職員のセリフだけです。
こちらは、ハ〇ーワーク付属・異世界就職係です。
異世界での就職を希望される方の支援を行っております。
また、異世界から日本に就職を希望される方の支援も行っております。
日本滞在中は、日本国憲法の遵守をお願い致します。
「はい、次の方、どうぞ。
異世界から日本での就職希望の方ですね。
どのような職種をご希望でしょうか?」
「職能が活かせる仕事、ですね。
前職が『魔法使い』と。
そうですね、探索魔法が使える方など待遇面がお勧めですが、如何でしょう?」
「そのような地味な魔法は習得していない、と。
そうですか。残念ですね。意外と求人数も多いんですけれども。
他に使える魔法は何がありますか?」
「攻撃魔法しか使えない方となると、ちょっと求人が限られますね。
日本では攻撃魔法を使う機会がありませんから、母国で需要があるのであれば、そちらの方が待遇は良いかもしれませんよ?」
「そうですか。平和になってしまって、需要が無くなってしまったと。大変でしたね。
ですが、日本でも、攻撃魔法となると、なかなか。
細かいコントロールはお得意ですか?」
「そうですか。苦手、と。
え?、ああ、そうです。
細かいコントロールが出来ると、生鮮食品用の氷魔法など結構需要がありますので」
「火魔法しか使えなくて出力重視となると、火力発電所での燃料係とかですけど、こちらもある程度コントロールは必要になります。やってみます?
では、こちらですね。
履歴書を書いていただいて、連絡があれば、面接を……」
「はい、次の方、どうぞ」
「種族特性が問題にならない職、ですか?
『サキュバス』の方ですよね?」
「魅了魔法を上手く使えないので、使わずに済む職、ですか。
むしろ使われると困りますけど。
ところで、その赤紫色の肌の色は、そのままが宜しいですか?
誤解を招きそうですので、都度、地球人ではない説明や証明が必要になると思いますが」
「そうですか。変化魔法も不得意なので、そのままの外見で、と。
そうですね、こちらなどどうでしょうか?
こちらでは今、感染症が流行っていますので、感染しない方を急募している医療系の求人がありまして、内容は雑用のようになってしまいますが……」
「やってみますか?
では、こちら履歴書と……。
こちらにお勤めの場合、これらの医療系の資格を取得されると、ステップアップも期待できますので、お勧めです」
「はい、職業訓練などのフォローも行っておりますので、是非ご利用下さい」
「次の方、どうぞ」
「前職『魔王』ですか。
こちらは国営の職業斡旋になっておりますので、民営と比べると給与面では、必ずしも……」
「構わない、と。
そうですか。では、こちら、どうでしょうか?
異世界から転職されてきた方が多くお勤めという事で、人事で異世界に詳しい方を募集されています」
「はい、では、手続きはこれで。頑張って下さい」
ご利用ありがとうございました。
本日の営業は終了いたしました。
またのご利用をお待ちしております。
読んで下さってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。