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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

フェアヌンフト!

作者: ciela

少しぐろっちぃ表現があります。

自己責任でよんでいただけるとありがたいです。


日久芳市において昨夜、男性が死亡しているのが見つかり、警視庁は、殺人事件として調査しています。

ー21日午前5時頃、日久芳市の路上で、男性が胸などを刃物で刺されて死亡した事件で、25歳の自称会社員の男が逮捕されました。

容疑者は、「高校時代いじめられており、恨みを晴らしてやろうと思った。」などと供述しておりーーー



ありきたりなニュースを消した茉奈はさらに興味のない知育番組に切り替えた。

ただ視界を通り過ぎるそれは頭には残らない。その空白は茉奈に「殺人」について考えさせるには十分だった。


嫌いな人を殺す。感覚的には正しいのかもしれない。

本能として嫌いな、あるいは恨みがある人を遠ざけるのは普通で、その人を最大限遠ざける方法はその人の死であり、それを実行することを殺人という。

ただ今の社会において、それはもちろん犯罪であり、それ相応の罰が下る。実行することは随分理性的ではないといえる。

言い換えると、殺人はその人のために、自分が刑務所に拘束、あるいは死ぬ行為だともいえる。

さて、人間は嫌いな人のために罰を受けるだろうか。答えは言うまでもない。

人は好きな人のために行動することがしばしばある。

その事実より、理性的な殺人とは、愛している人を殺す行為であると言える。


自分でも怖い考えにまとまってしまった茉奈は思考を誰かに投げたい気分になった。

投げる相手もいない茉奈はそのまま床に伏した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おはよっ!茉奈!」

黒髪のストレートに淡い朱色の瞳の美少女が茉奈に挨拶をする。


「んはよ。遥香。」

少し発音が悪い挨拶を交わし、他愛もない会話をしながら、茉奈と遥香は二人が通う伊唯高校に向かった。


伊唯高校はそこそこの学力があれば入れる学校だったが、治安が悪く、酒、たばこ、薬物、暴行、強姦が伊唯生の間で流行っていた。

伊唯高校の治安の悪さは有名で、制服を着ているだけで煙たがられたが、その劣悪な環境で犯罪を一切犯さず過ごした、というだけで、入学させる大学や採用する企業が多くあった。

そのため、茉奈はそれを知っていたが、自分程度の人間には何もないまま卒業出来るのだと思って入学した。

いつものように適当に授業を受け、適当に帰る。入学当初はただそれだけの日々を過ごしていた。

そのつまらない日々を壊してくれたのが遥香の存在だった。

誰にも絡まれないように、目を付けられないように過ごして、クラスでは存在していることを知っている人も数少ないのではないかという程に茉奈は影を薄くしていた。

それにも関わらず遥香は茉奈の存在を見つけ出し、曝した。影を薄くすることに関しては右に出る者はいない茉奈だったが遥香の前には手も足も出なかった。

しかし、茉奈にはそれがなぜか嬉しかった。もちろん、曝されることで、危険にも曝されることは理解していた。それを超える程の強烈な刺激が遥香にはあった。

以来、遥香とは旧友のように分かち合い、今では親友といっても過言ではない。


「おはよーございます!」


遥香はクラスのみんな向けに先程より少し硬く挨拶をする。


「遥香!おはよう!」


クラスで一番カーストの高い女子が挨拶を返す。こんな思考をしてしまっている自分に嫌気を差しながらも茉奈も軽く会釈する。

遥香は、カーストという概念にはとらわれず、しかし、友達は多くいた。


自分の席に着き、遥香と遥香経由でできた友達と話す。

最近のコスメが、誰と誰の恋路が、など、なんの内容も詰まっていない会話をする。

しかしそれは、茉奈の高校生活を充実させた。

程なくして、チャイムが鳴り、各々の席に着く。

茉奈は真面目に授業を受け、滞りなく学校が終わった。

茉奈は強い疲労感に襲われたが、達成感があることも否めない。

それから茉奈は、掃除当番のために遅れる遥香と一緒に帰るために昇降口で待つことにした。

しかし遥香は20分経っても現れなかった。どう考えても遅い。

時間の管理はよくできる子で、今までここまで遅れることはなかった。

約束を忘れているとは思えない。何かトラブルに巻き込まれているのではないかと危惧したが、ここを離れる訳にもいかず、動くことができなかった。


「大丈夫?」


とスマホでメッセージを送ってみたが、待てど暮らせど返事が来ない。


「探しに行くね。もし、いつもの場所に来てたら、メッセージちょうだい!」


とだけ送り、通知をオンにして、遥香を探しに行った。

遥香が掃除していた教室から待ち合わせ場所を道なりに探すが見つからない。

そこで、道なりにある教室も全て調べることにした。

一番西にある空き教室に遥香がいた。

男子生徒3人に囲まれ拘束されていて、今にも強姦が始まるというところだった。


「は?何お前?見てわかんない?この状況。」


茉奈に気付いた男子生徒の内の一人が、冷たく言葉を放った。

続けざまに、


「もしかして私も襲われたいとか?」


「気持ちわる!引っ込んでろブス!」


茉奈は激昂した。

男たちの野次は一つとして茉奈の耳には入っていなかったが、視界に映るものがすべてだった。

遥香が助けを求めている。

遥香が「逃げて」と言っている。

遥香を助けたい。

遥香を助けるためなら、人を傷つけても、それこそ、殺してもいいと思った。


茉奈は手元にあった大きめの定規で一番近くにいた男の目を潰した。

男は悶絶した。茉奈はそれを確認すると一番体格がいい男に向き直る。

体格がいい男はその巨体から繰り出される拳を茉奈に向けた。

それは茉奈の頬をかすめ、机を破壊する。茉奈は机の一部であった脚をナイフのように持ち、男の腹部に突き立てた。

鉄の棒を空洞を伝い、血が噴き出し、臓物が引きずりだされる。

その始終を見ていた一番小さい男が謝りだす。


「ごめんなさい!謝るから殺さないでくれ!この子の手錠は外すから!」


一番小さい男が、遥香の手錠に手をかけようとしたとき、


「遥香に触るな」


と耳元で呟き、先程まで机の天板だったものを脳天に振り下ろした。

一番小さい男は意識が朦朧とする。


男子生徒3人は視界を失ったり、臓物を失ったり、意識を失ったりしたが、誰一人として死んでいなかった。


「遥香!」


血みどろになった茉奈は今までその始末を見ていた遥香に抱き着く。

遥香の体は酷く震えていた。


「茉奈…私、怖かった。手錠、外してもらえない?」


「うん、怖かったよね…もう大丈夫だからね。」


茉奈は遥香の拘束具を外さず、男たちに振り返った。

茉奈は男たちを遥香の近くにあった拘束具で一人ずつ縛り始めた。

縛っている途中、茉奈は遥香に語りだした。


「遥香はさ、人を殺したことはある?」


「え…ないよ。」


「そっか、私も無いんだけどさ、遥香は人を殺したいと思ったことはある?」


「ないけど…」


拘束具を外してもらえない遥香は戸惑いつつも茉奈の質問に簡単に答えてゆく。


「ふんふん、じゃあ恨みをもつ人を殺す、というのは理解できる?」


「微妙かな。私は人を殺すことは絶対にしたくないけど、恨みを持つ人なら、いっそ死ねばいいのにとは思うかな。」


「じゃあ、人を殺さないのはなぜ?」


「え?普通に犯罪だからじゃない?」


「つまり、理性的に判断して、人は殺さないということかな?」


「まぁ、そうだね。」


この状況に慣れてしまった遥香は普通に応対し、自分の論理に近づいてきた茉奈は饒舌になる。


「じゃあさ、理性的な殺人って何だと思う?」


「理性があるから殺人はしないんじゃない?」


「あー、なるほどね。少し話を戻そうか。恨みがある人を殺すと犯罪になり、罰を受ける。言い換えると、恨みがある人のために自分が罰を受けるって言えるよね。」


「…ぅん」


「その人のために罰を受けてもいい人って誰だと思う?」


それが言い終わると同時に、茉奈は男3人の拘束し終えた。

また、聡明な遥香は自分の拘束具を外そうとじたばたともがいた。


「遥香、愛してるよ。大好き。」


茉奈はもう一度遥香に抱き着く。

遥香は必至に茉奈を遠ざけようとする。


「拒絶しないで…遥香、私のこと嫌いなの?」


「違うけど!死にたくない!」


「…え?私、遥香を殺すなんて一言もー」


「私のためなら罰を受けられるってそう言ってるんでしょ!?」


「ごめんね…私の言い方が悪かった…昨日まではね、そう思っていたんだけど…今、考えが変わったの。」


一応安心した遥香に興奮した顔で茉奈は告げる。


「理性的な殺人ってね、嫌いな人を殺すのでもなく、好きな人を殺すのでもなく、好きな人のために人を殺すことだって、私、気付いたの!好きな人には死んでもらいたくないし、殺したくもない、そこで、好きな人の障害となる人を殺すのが理性的殺人なんじゃないかって、私、思うの!」


ますます興奮していく茉奈とは対照的に、遥香の表情はだんだん曇っていく。


「だからね、私、今からあいつら殺すから、見ててね!」


そういって男たちの方を向き、茉奈は視覚を失った男に質問をする。


「どうして、遥香を襲おうとしたんですか?」


黙る資格を失った男に茉奈は、手に持っている鉄パイプで顔面を殴打する。

吹き出る血しぶき、折れ曲がる骨。教室に響き渡る断末魔。

それに耐えられなくなった視覚を失った男が答えようとする。


「そーー」


それでも茉奈は殴打を辞めない。


「口応えするな。」


理不尽な暴力、理不尽な応答に視覚を失った男は遂に息絶えた。

見るに堪えなくなった遥香はめを瞑るが入ってくる音により、状況の把握は難しくない。


茉奈は体格のいい男前に立ち、話始める。


「あなた、今回が初めてではないでしょう?この高校を辞めた女子生徒の多くはあなたが関与しているとか…」


体格のいい男は、反応せず、ただ俯いている。

それに腹を立てた茉奈は悪魔の所業に出る。

体格のいい男の臓物を引き摺り出した。

小腸から繋がっているピンクのそれらしいものをちぎり始めた。手が滑ってうまくちぎれないが、硬いところは鉄パイプの先端で切断していった。

人とは思えない咆哮にも物応じず茉奈は続ける。

全身に血が回らなくなった体格のいい男は顔が赤くなり沸騰しそうな体をして事切れた。

怯えながら見ていた遥香は血の匂いと初めて見た臓物に吐きそうになる。


茉奈は何も言わず一番小さい男に近寄り、その男の脚をぐちゃぐちゃにした。

そして、一番小さい男の拘束を外す。


「ほら、あなたは逃がしてあげます。」


とだけ言った。

脚が使えない一番小さい男は這いずるように茉奈から遠ざかる。


「どうしたんですか?歩かないんですか?」


茉奈は一番小さい男を抱き上げ地面に足を打ち付ける。

何度も何度も打ち付け、一番小さい男は痛みで気絶した。

茉奈は気絶したことが分かると、あっさりと脳幹に鉄パイプを突き立てた。

男は儚くなった。


茉奈は遥香の方へゆっくりとした足取りで近づき、もう一度遥香に抱き着き、愛を確かめ、拘束具の一切を外した。


「私、遥香を愛してるよ…」

とだけ遥香に伝えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


伊唯市において昨夜、男子生徒3人が死亡しているのが見つかり、警視庁は、殺人事件として調査しています。

21日午前5時頃、伊唯高校の教室で、男子生徒3人が死亡した事件で、17歳の同高校に通う女子生徒が逮捕されました。

容疑者は、「私は理性的な殺人をした」などと供述しておりーーーーー


ここまで読んでいただきありがとうございました!

楽しんでいただけたら何よりです!

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