表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/22

夫が犯罪被害にあう


何時も通りの平凡な一日であるはずだった。

それが警官からの連絡で、非日常の日々が始まった。


「アーサー氏が刺されて傷を負っています。急いで、病院までお越しください」



取るものもとりあえずアンヌは病院へ向かった。

病院の受付で夫の病室を聞き、焦る気持ちを抑えきれずに足は小走りになっていた。


バンッ!!!


「アーサー!!!」


アンヌが勢いよく病室に入ると、そこにはベッドに横たわっている夫と、警官らしき男性がいた。

どうやらアーサーに事情を説明している様子だった。


「アンヌ…」


ドアの音でアーサーと警官がアンヌの方を見る。

アーサーは顔色も悪く、声に覇気もなかったが、見る限り命に別状はなさそうだった。

ホッとしたアンヌは、ベッドに近づく。


「よかった。無事だったのね」


「すまない。心配かけたね」


涙ぐむ妻にアーサーは申し訳なさそうに謝罪した。


「奥様ですか?」


警官がアンヌに声を掛ける。


「あ、はい。そうです」


「ご主人の怪我は軽傷で、命にかかわることはありません。

急に背中から刺されたのですが、誰かに恨まれたりしたお心当たりは有りませんか?」


「なっ!?」


「ああ、気に障ったらすみませんが、こちらも仕事ですからね。

先ほど、ご主人にもお聞きしたんですが、これといって恨みを買うようなことはないと話されましてね。

犯人はこの女なんですが、ご存知ないですか?」


そう言って、警官はアンヌに一枚の写真を見せる。

最近、普及し始めた写真だった。

上級階級では娯楽の一つとして購入する者が多いと聞くそれは、一般庶民には手が出ない値段故に見るのは初めてだった。


まるで小さな写実絵のように見えるそれは、白と黒とのモノトーンであった。

写真からでもわかる乱れた髪に、焦点のあっていなさそうな目、窶れはてた容貌はまるで老婆のようであった。


知り合いにもいない顔である。


(どう見ても私やアーサーよりも年上だわ。街に親しい人はいないし、前の処でもこんな人いなかったわ)


「いいえ、初めてみる顔です」


「そうですか」


「あの、この人が犯人なんですか?」


「ええ、もう捕まえていますからご安心ください」


「どういった人なんですか?」


「それはこれからの事情聴取で解る事ですよ。まあ、恐らく衝動的な犯行でしょうね」


「しょ…衝動的…」


アンヌは絶句した。

だが、無理もなかった。

通り魔的犯行と言われたのである。

つまり、アーサーを狙ったのではなく、運悪く被害者になったと言われたのだから。


「恐らく、今出回っている()に侵されての犯行でしょうね。貧民街で多かった事件が、街でも起き始めたんでしょう。

何かわかりましたら、またご連絡いたします。では、今日はこれで失礼を」


警官はアンヌとアーサーに一礼すると、用は済んだとばかりに病室を後にした。

残ったのは、未だに衝撃から戻ってこれないアンヌと、何かを思い出したかのような目をしたアーサーだけがいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 文章の中で表現されている、下記の警察の文言ですが、ここは組織ではなく、個人を示しているので 文章の表現としては警官とするのが正しいと思います。警察組織が声なんかかけないですよね。 ・警…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ