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昔の求婚者


美人姉妹として有名だったローリー男爵家。

アンヌも侯爵家に侍女として働いていたが、貴族の子息からの求婚はあった。流石に高位貴族からの申し込みは無かったが、男爵家や子爵家からの申し込みは多かったのだ。

その中には資産家として有名な処からも申し込まれていた。

父親のローリー男爵は、三女のアンヌの嫁ぎ先には特に気を配っていた。

なにしろ婚約者を持つ侯爵家の次男と恋仲なのだ。噂が広まれば嫁ぐこともままならなくなる。その上、アンヌは結婚適齢期のギリギリの年齢でもあった。アンヌを不憫に思っていたノーバンド侯爵夫妻も、何かと良い縁組を持ってきてくれていたのだ。


(お父様なんて、資産家の男爵との婚姻を特に望んでたわ! お母様がいい顔をしなかった相手なのに!


私が嫌だって言っているのに、「身の丈に合った相手だ」とか、「男爵は資産家で苦労しない」とか、「相手もお前を酷く気に入っているんだ」って、何度も言いつのってきてたほどよ。

お父様は良くても私は嫌よ!

だって、既に私にはアーサーがいたのよ?

それに男爵は私より十歳も年上で、特に美形でも何でもない相手だったわ。

しかも、あの女(ヴィクトリア)と一緒で成り上がり者だった。あの女(ヴィクトリア)の実家よりも質が悪くて、金貸しで財を成した男よ?

お金で爵位を買ったと有名だった!

そんな下賤な男の元に嫁ぐなんて冗談じゃないわ!!!

だからかしら?

あの頃は、アーサーがとても素敵に見えたわ。大勢の男性の中で一際輝いていたもの!

名門侯爵家の次男で、文武両道に秀でた上に、さわやかな美男子。彼に憧れなかった女性なんていなかった位よ!

アーサーと結婚して生きていけるなら、家族も姉妹も友達も何もかも捨ててもいいと思っていたの。どんな苦労だって、彼と一緒なら耐えられるって)


親の心子知らず、とはこの事だろう。当時のアンヌにとって、男爵との結婚は、これ以上ない縁組であったのだ。

確かに、男爵は高利貸しから伸し上がった男である。

だが、その金利もかなり良心的なものであり、何もやましい処はない。

爵位もそうだ。

金で買ったと言われれば、それまでであるが、借金返済が出来なかったボンクラ貴族から買い取ったものだ。しかも、相場の何倍も出してのものである。

男爵が爵位と領地を買い取ったお陰で、そこの領民は飢えから解放されたのだ。事実を知る貴族にとっては、十分紳士的で、そこら辺の貴族よりも貴族らしい男性であったため、大変評判が良かった。

だが若い貴族子弟にとっては、金貸しと言うだけで悪いイメージを想像してしまうもの。忌避する令息や令嬢も多かった。アンヌもその一人であった。世間知らずのお嬢様には、余計に悪いイメージしか湧かない相手でもあった。




(幸せだったわ。なのに……今は毎日がつまらない…。どうしてかしら? 王都に戻ってきた時はこんなことになるなんて考えてもみなかった)


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― 新着の感想 ―
[一言] 金貸しの存在が恥ずかしいのではない、下らない理由で金を借りる人間が恥ずかしいのだ。 事業資金とか邸宅建設とかの返せる目処が立ってる場合と飢饉とかみたいな緊急事態なら兎も角、遊興費を借りに来…
[一言] 身の丈に合わない結婚って、親戚づきあいだけで実家が破産するから… ご祝儀がこのレベルで、祝宴予算がこのレベルと、家格に見合った出費があるのですわ。 爵位が大きく違っても結婚できるのは、爵位に…
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