男爵家の悲劇2
次女のセシルは、アンヌの不祥事とその負債額によって、嫁ぎ先の伯爵家から離縁された。
当時、セシルは二十四歳。嫁いで七年目であったが未だに子供を身ごもる気配もなかったため、離縁はすんなりと進んだ。
その背景には、セシルの夫である伯爵に若い愛人ができ、その愛人が妊娠したことも理由の一つでもあった。理由が理由であるため、伯爵家は多額の慰謝料をセシルに渡したのは言うまでもない。もっとも、その慰謝料はセシルに渡ることなくフォード子爵家の賠償金と消えた。
それでも、まだ残る賠償金。
美し過ぎるとまで言われたセシルの美貌がここで悲劇を生んだ。
彼女は、他国のハーレムに売られたのである。
その後の消息は不明だ。
四女のコレットもまた、嫁ぎ先から離縁された。
夫の店がフォード子爵家によって乗っ取られ、夫とその両親たちは夜逃げしたのだ。しかも妻であるコレットを一人残して。
それだけなら可哀そうな妻で終わったかもしれないが、夫の店の連帯保証人になっていたコレットは、夫たちの莫大な借金を背負う事となったのである。
借金の返済相手はフォード子爵家である。
コレットは子爵家が経営する高級娼館で働くことが決まったのだが、それに待ったをかけた人物がいた。以前、コレットを街で見かけ、一目惚れしたと言うのだ。既に老境にかかっていた高位貴族で、近々、爵位を息子に譲って王都の館で隠居生活を始めるのだと言う。その際、恋い慕うコレットを手元に置きたいと言う話である。
一見、求婚にも思える内容だが、老貴族には正妻がいたため、コレットは囲い者になるしかない。
ただ、正妻は領地に居るため、王都の屋敷に来ることはなく、一緒に生活しないことを言われ、コレットは老貴族の愛人になる事を承諾した。
これで、彼女自身の借金はなくなり、残っていた子爵家の賠償金支払いもここで終了した。




