3DAY
炎久斗一途になった冬華は、炎久斗の為のプレゼントをデパートに選びに来たようです。
そんな冬華ですが、選んでいる最中のある出来事をきっかけに、心にもやもやとした気持ちができてしまいます。
☆*☆*☆*
昨日の冬華と炎久斗の一件を見てしまった煇はもやもやとした朝を迎えますが、冬華に振られていないことを知り、一安心。
それに加え、冬華と一緒に買い物をしたお陰で少し気持ちが落ち着いたようです。
7日間のクリスマス
3DAY
昨日あの後、彼からのrinではスタンプと一緒に手応えを感じるような内容のメッセージが送られてきた。
やっぱりこのまま一緒に過ごしていけばうまくいく気がする。
さらにその生活に加えて、クリスマスに彼に贈るプレゼントなんかも用意しておけば絶対にうまくいくこと間違いないだろう。
《煇〜!今日空いてる??》
《うん、昨日言ってた買い物?》
《そそ!何時からなら大丈夫そう??》
《いつでもいいよ。早くて十時かな》
《わかった!じゃあ十時煇の家行く!》
流石、煇。
私が言わんとすることは大体察してくれている。
暫く経って煇の家に行くと、煇のお母さんが家に招き入れてくれた。
珍しい。いつもは煇が出迎えてくれるのに。
「煇ー?冬華ちゃん来たわよ〜」
「あ、はぁーい。今行くー」
なんかちょっといつもと違う。
家突した時は玄関開けたら階段の途中にいるか、リビングから顔出すか、なのに。
今日に限ってはこの時間に行くってちゃんと言ったにも関わらず、出たのがお母さんで煇本人はまだ自室…。
どうして…?
「ごめん、冬華。お待たせ」
「ううん、全然いいよ。なんか今日、いつもと違うけど…なんかあった?」
「え?別になんもないけど…どうして?」
「そう?ならいいんだけど…」
「それよりさ。もう行く?それともゲームしてから行く?」
「んー、行こ!」
「おっけ、じゃ、いってきまーす」
そして私たちは煇の家を出て、煇の家から一番近いデパートへと向かった。
駅前ということもあって、ちょっと変わった物から流行りのものまで様々な商品が沢山の店舗に並んでいる。
中でも私の一番のお気に入りは、トラストショップだ。
もちろん理由は私がトラストが好きだから。
一番好きなのはラッフィだけど、あの子はトラスト・アクアでしか扱っていないぬいぐるみだからここには居ないのが少し残念。
とは言え、今日は炎久斗くんへのプレゼントを買いに来たわけだから、私のことはどうでもいい。
煇から少しインスピレーションをもらいつつ、昨日のことも参考にしつつ、プレゼントを選んでみよう。
「ね、煇。煇ってどういうもの欲しいなって思う?」
「え?俺?んー…やっぱり俺はゲームが好きだからゲーム欲しいって思う…」
ダメだ。煇らしすぎて参考になりそうにない。
「けど…」
お?
「三年になって試験勉強が忙しくなってからは、ストレス発散によく音楽を聴くことが多くなってさ。音質が良いスピーカーとか、ノイズキャンセリングのイヤホンとか欲しいなって思うようになったかな」
「なるほどねぇ…」
イヤホンとかスピーカーとかかぁ。
高くてもイヤホンなら二万…。スピーカーだと…三万弱…くらいかな。
高いな…。
とりあえず行くだけ行ってみるか。
「うん、じゃあ、オオタ電気行ってみよ!」
早速目的の場所にて、イヤホンやスピーカーを見てみるも、どの商品もどこか違う…。
「……えーと、その商品はぁ〜…あ、これか?うん、ノイズキャンセリング付き。で、ワイヤレスとハンズレス通話可。最長音楽再生時間が…五時間だって」
「うーん…。なんかなぁ…。色…がなぁ…」
「あー…黒だから、か?こっちなら白とピンク…なんだけどな…」
それもちょっと…。白もいいけど、炎久斗くんは赤が似合うから…。
「あ!冬華冬華!これは??」
煇が目を輝かせて指した先には、赤色のワイヤレスイヤホンがあった。
「最長八時間、ワイヤレス、しかも生活防水からのノイズキャンセリングだぜ!!ちょっと派手色だけど…。コスパもいいし、いいんじゃねーの!?」
なんか…煇可愛いな。花咲か爺さんのしろみたい。
私が本当のこと隠して付き合わせちゃってるのがすごく悪い気がしてきたな…。
「…うん、これにする」
それから私たちは買い物を済ませて、オオタ電気を出た。
「なぁ、冬華?なんか暗いけど大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。なんでもない」
「…そか。うーん」
「な、何?」
「よし!着いてこいっ!」
そう言うと煇は私の手を掴んで、エレベーターに乗り込み、八階の数字を押した。
ドアが開くと、そのフロアには飲食店や軽食店がずらりと立ち並んでいた。
「何があったか知んねーけど、甘いもんでも摂れば元気なるだろ!お前のことだし!ダスタックにでも行こうぜ!!」
「うん…ありがと…」
すると、煇はニカっと笑って私の手を引いて店内へと入っていった。
今月のメニューは、クリスマス限定メニューで「ホワイト・スノー・キャラメル・フラペチーノ」というものと、「ホワイト・スノー・抹茶・フラペチーノ」というものがあった。
注文しているお客さんと、それを復唱している店員さんはもう魔術師になれるんじゃないかってぐらい舌が回ってる。
「すみません、ホワイト・スノー・抹茶・フラペチーノと、ホワイト・スノー・キャラメル・フラペチーノください」
新たに魔術師一人誕生。
「はい、千二百円です」
「お願いします」
「ちょうど、頂戴いたします。こちらのレシートが引換券になるので、あちらのカウンターで店員にお見せください。ありがとうございました」
あれ…?今…私の分払ってくれた?
てか、注文も…聞かないで…。なんで飲みたいなって思ったもの、わかったんだろ。
「煇?なんで…?」
「え?そんな顔、してた。あと、ここは男の俺が払うのが常識。…あ、できたみたい。はい、これ。冬華の分!」
「あ、うん」
…なんだろう。このもやもやした気持ち…。変なの。
煇から渡されたそのキャラメルフラペチーノは、どこまでも甘く、隣で満足そうに抹茶フラペチーノを飲む煇の顔は、とても可愛いらしく見えた。
☆*☆*☆*☆*
今日は朝から、昨日の冬華と炎久斗とのあの光景が頭にこびりついて離れない。
きっと変なとこで話を聞き始めてしまったのかもしれないとはわかっていても、もしかしたら…と、考えてしまうと頭が痛くなる。
もしこのまま冬華が炎久斗のとこに行ってしまって俺の元からいなくなってしまったら?
そんなの、絶対に嫌だ。今までずっと一緒だったのに…!
《煇〜!今日空いてる??》
冬華……!!
《うん、昨日言ってた買い物?》
《そそ!何時からなら大丈夫そう??》
《いつでもいいよ。早くて十時かな》
《わかった!じゃあ十時煇の家行く!》
良かった…!やっぱり、あれは告白とかじゃなかったんだ…!!
でも昨日付けたりしたり、盗み聞きしたりした手前、合わせる顔がない…。
そんなことを考えていると、あっという間に十時になってしまった。
間も無くして、冬華の声が玄関口から聞こえてきて母さんが俺を呼ぶ。
もう、行くしかない…。
「ごめん、冬華。お待たせ」
「ううん、全然いいよ。なんか今日、いつもと違うけど…なんかあった?」
やっぱり。
流石、冬華。一瞬で俺がおかしいってこと見抜いた。
もちろん昨日付けてたとか、盗み聞きしてたとかもあるけど、あんな必死こいてプレゼントしてた相手目の前にして、流石に平然としてるなんて…キツい…!!
「え?別になんもないけど…どうして?」
「そう?ならいいんだけど…」
それから俺たちは、そのまま買い物に行くということになった。
ただ買い物に行く、というだけだったらまだよかったのだが、なんと驚いたことに昨日買い出しに行ったデパートに行くと言うのだ。
嘘だろ…?そんなとこに行ったら俺…。緊張で絶対おかしくなっちゃうよ…!
そして着いた、最寄りのデパート。
おい、昨日の今日だぞ…。とりあえず落ち着け、俺。
冬華との買い物、ただそれだけだ。
その事象に集中するんだ…!
デパートの案内版の前に着くと冬華はスマホを取り出して、何かを調べ始めた。
『友達にあげたいプレゼントランキング!2020〜総集編〜』
友達…。
もしかして、俺か…?
「ね、煇。煇ってどういうもの欲しいなって思う?」
…や、やっぱり…俺、なのか!?
「え?俺?んー…やっぱり俺はゲームが好きだからゲーム欲しいって思う……けど…。三年になって試験勉強が忙しくなってからは、ストレス発散によく音楽を聴くことが多くなってさ。音質が良いスピーカーとか、ノイズキャンセリングのイヤホンとか欲しいなって思うようになったかな」
「なるほどねぇ…」
なんか生返事だな…。
俺じゃないのか?
中々答えの見えない不可思議な冬華の行動に疑問を抱いていると、突然冬華は顔を上げた。
「うん、じゃあ、オオタ電気行ってみよ!」
「お、おう」
なんだろう。
よくわからんけど…。
自分へのちょっと贅沢なご褒美…って風なのもありえる…か?
オオタ電気に着くと、冬華は足早にイヤホンコーナーに向かった。
中でも、ワイヤレスの物に関心があるようで、冬華が手に取った商品を俺がスマホで調べて、どんな物か詳細を詳しく伝えた。
本当は隣で突っ立って見てるだけでも良かったんだけど、もし自分用だったとしたらそれ買って「合わなかった」とかで損して欲しくないし。
「うーん…。なんかなぁ…。色…がなぁ…」
「あー…黒だから、か?こっちなら白とピンク…なんだけどな…」
それに対しても微妙な顔をする冬華。
だったら…性能も色ももっと違うものがいいってことか?
あ、いいもの…あった!!
「最長八時間、ワイヤレス、しかも生活防水からのノイズキャンセリングだぜ!!ちょっと派手色だけど…。コスパもいいし、いいんじゃねーの!?」
「…うん、これにする」
冬華はその商品を見た途端、明るい顔になった。
けどそれも刹那、だんだんと暗い顔になっていってしまった。
会計を済ませオオタ電気を出たころには、冬華の顔は寂しそうとも、悲しそうとも言えない複雑な表情をしていた。
…何があったかはわからないけど、俺にできることはただ一つ。
「よし!着いてこいっ!」
俺は冬華の手を握り、エレベーターに乗って八階のボタンを押した。
前に母さんに教えてもらった。
辛い時には、甘い物を摂るのが一番だって。
だったら、今もきっとそう。
冬華をダスタックの新作で元気付けてやるんだ。
エレベーターから降りると、冬華は驚いて目を丸くしていた。
「何があったか知んねーけど、甘いもんでも摂れば元気なるだろ!お前のことだし!ダスタックにでも行こうぜ!!」
「うん…ありがと…」
よかった、やっと冬華が笑顔になった。
でも、ちゃんと満面の笑み見るまでは安心できないよな。
店の前のドアを押して中に入ると、暖かい空気がふわっと外に溢れ出た。
「はい」
「あ、ども」
このドア開けてる間にちょこちょこ急ぎ足で入るって言う動作が地味に可愛い。
…今月のメニュー、さっき冬華見てたから飲みたいのかな。キャラメルラテとか好きだし。
「すみません、ホワイト・スノー・抹茶・フラペチーノと、ホワイト・スノー・キャラメル・フラペチーノください」
「はい、千二百円です」
「お願いします」
「ちょうど、頂戴いたします。こちらのレシートが引換券になるので、あちらのカウンターで店員にお見せください。ありがとうございました」
レジを済ませると、冬華は少し戸惑った様子で俺に声をかけてきた。
「煇?なんで…?」
「え?そんな顔、してた。あと、ここは男の俺が払うのが常識。…あ、できたみたい。はい、これ。冬華の分!」
冬華にはただ、笑顔で俺の隣にいて欲しい。
それが、俺の願い。
「…甘い、美味しい……。ありがとね。煇」
そう言う冬華の顔は、とても嬉しそうな笑みに変わっていた。
今回もお読み頂きまして、ありがとうございました!
なんやかんやで十時ですね…。集合時間から十二時間…むしろ丁度良い…かも、なんちゃって…。( ˊᵕˋ ;)
今回、前回と出てきている『トラスト』ですが、某テーマパークがモデルとなってます!
気がついた方はいらっしゃいましたでしょうか??
それでは!最後までお読み頂きまして、本当にありがとうございました!