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7日間のクリスマス  作者: 天河 弥月
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DAY2

 煇との遊びに断られてしまった冬華は、炎久斗とデートをすることに。

 予想外の出来事が次から次へと巻き起こり、冬華は混乱するも、幸せなようです。


☆*☆*☆*


 いつも通りの休日を過ごす予定だったはずの煇は、母親からの提案で冬華へのプレゼントの買い出しをすることに。

 自分の本当の気持ちを再確認して自身の想いをまとめますが、家路に着く途中、見てはいけないものを目にしてしまいます。

 クリスマス前の最後の週末。

 こんな貴重な休日は、炎久斗くんへのプレゼントの買い出しに最適…!

 と、いうことで、今日も煇の家に遊びに行って良いインスピレーションを貰おうと思ったのだが…。


《わりぃ、今日はちょっと親がどうしても買い物付き合えってうるさくて…。買い物なら明日でも行けるし…。ごめんな?》


 そう断られてしまった。

 …仕方ない。じゃあ一人で…。

 いや、でも待って。

 そうだよ、買い物なら明日でも行けるし、それなら今日は思い切って炎久斗くんを誘えばいいんだ…!

 そうと決まれば、早速rin(連絡)だ!


《炎久斗くん、今日ってヒマ??》


《うん》


《あの…もし良かったら一緒に遊ばない?》


《いいよ、何時からにする?》


 えっ、まさかの一発オーケー!?少し粘ると思ってたけど…。


《えっと…お昼くらい…かな?駅の改札前で待ち合わせでいい?》


《ん。じゃあ一時に駅の改札前な。色々回りたいから、いくらか持って来いよ》


《わかった!!》


 …ふぅ。すっごい緊張した…。

 それより炎久斗くん、「色々回りたい」って言ってたな…。どこに行くつもりなんだろう。


 それから私は炎久斗くんに会う為、精一杯のおめかしをして予定時刻の二時間前に家を出た。

 何も、家から集合場所までは三十分かかるかかからないかぐらいの距離で、そこまで離れている訳でもないのだが、一刻も早く彼に会いたい気持ちが勝り、今に至る。

 早る気持ちを抑え、待つ事三十分程。

 彼が遠巻きに見えた。

 嘘、まだ予定時刻よりも一時間も早いのに…!?

 私は見間違いかと思い、目を凝らしてもう一度その炎久斗くんらしき人を見ると、その視線に気がついたその人はスッと手を上げこちらに小走りで向かって来た。


「よっ、随分早いな。結構待った?」


「えっ、あぁ…いや、全然…!!」


「鼻も耳も赤いけど?」


 彼はそう言ってくすりと笑った。

 案外、今日は楽しい一日になりそうな予感。


「じゃ、行こっか。予定はもう立ててあるんだ」


 私の手を優しく取ると、彼は自分のポケットに突っ込み、ゆっくりと歩き出した。

 急展開…!!

 学校ではこんな距離感絶対にあり得なかったのに…!


 まず彼と最初に向かったのは、喫茶店だった。

 しかもそのお店は以前彼との会話の中で出てきたことがあるお店で、一度行ってみたいと話していた所だった。


「今日は外から眺めるだけじゃないよ、一緒に行こ」


「う、うん…!!」


 彼に連れられてゆっくりと店内に入ってみると、深みのあるコーヒーの香りが私の鼻に(かお)った。

 普段はお小遣いも少ないし、こんなお洒落(しゃれ)なお店に入る勇気もないしで中々来れなかったけど、炎久斗くんは何にも動じる様子もなくそこに佇んでいる。


「俺、お昼食べてきてないからここでお昼も済ませちゃっていい?」


「あ、うん!勿論!じゃ、私も食べてないから…」


「え?それで何時間も待ってた系?」


「う、うん…三十分ぐらいだけど…」


「…ぷっ、変なの。…だったら、この二人でシェアして食えるようなやつにしようぜ。すみませーん」


「はーい!!」


 彼はなんだか大きめのパンケーキ…?みたいなものに、ラズベリーソースとホイップクリームが乗ったクリスマスデザインのスイーツを注文した。


「あ、あとブレンドコーヒー、一つお願いします。冬華は?」


 えっ!?今下の名前で呼んだ!?なんで急に!?今まで苗字だったのに…!


「あっ、キャラメルラテ…お願いします」


「かしこまりました」


 店員さんが厨房へ向かうのを見届けると、早速私は先ほどの意味の説明を彼に求めた。


「え、呼んでないけど?」


 言っていた…けど、絶対にこの顔だとこれ以上の言葉は出てこないだろう。

 それから少しして、先程の店員さんが注文の品を運んできた。


「お待たせしました、キャラメルラテとブレンドコーヒーと、ホワイト・クリスマスです。ごゆっくりどうぞ」


 来た!って、予想以上に大きい!!


「食おうぜ?いただきまーす!」


 早速彼がケーキにナイフを入れると、しっとりもちもちとした生地のパンケーキが何枚も重なっているような断面が姿を表した。

 切り口からはパンケーキを挟みミルフィーユ状に、ラズベリーソースとホイップクリームが挟まれているのが(うかが)える。…飽きないかな。


「いただきます」


 美味しそうにパンケーキを頬張る彼を微笑ましく思いながらも、私自身も小皿に取り分け、頬張る。

 おお。ラズベリーソースの程よい甘みと酸味がパンケーキにしっとりと馴染んでいて美味しい。ホイップクリームの甘さもしつこくなくて丁度いい。パンケーキも、切った時に思った通り、しっとりもちもちしてる。

 ホワイト・クリスマス。

 来週のクリスマスは、どんなクリスマスになるのだろうか。

 このパンケーキのような優しい甘みとほんのりと温かさを持つような人が私の隣にいてくれるのだろうか。

 …そして、その相手は炎久斗くんなんだろうか。


「…どうした?そんな難しい顔して」


「えっ、ううん!なんでもないっ!」


 そうだ、目の前にいるんだった…!!ここで考え込んじゃったらバレちゃう…!


「あ、ちょっと、ストップ」


「う、うん」


 すると、彼は私の唇の縁を指で軽く撫でた。


「クリーム、着いてた」


 あ、舐めた。…これって…。ケーキ食べたりする時によくカップルで見る光景…。それを今私が…。

 嬉しさと驚きの余り、顔に熱が込み上げてくる。


「…?どした?」


「ううんっ!なんでもないっ!食べよ!!」


 私は自分の気持ちを紛らわすように口いっぱいにパンケーキを頬張ると、甘酸っぱいラズベリーソースの味が口に広がった。


 食事が終わると、次に彼が連れて行ってくれたのは映画館だった。

 今日上映していた映画のジャンルは大きく分けて、ファンタジー、アクション、恋愛物の三つだった。

 中でも私が一番目を引かれたのは、私が一番大好きなMicom (ミーコン映画制作会社)作品の新作映画だった。どうやら今作は、魔法をテーマにした映画のようだ。

 …とは言えど、きっと彼のタイプからして私の意見とは食い違いそうだけど。


「何観るの?」


「ん?お前は何観たいの?」


「え…と、私はMicomの新作観たいけど…。炎久斗くんは?」


「え、お前も?」


 『も』ってことは…?


「「じゃあ、それ観ない!?」」


 あ、被った…!

 想定もしてなかった事態と、予想以上の彼の興奮っぷりに思わず吹き出す。

 でも折角の休みだし、たまにはこんなことあってもいいかも。

 早速チケットを購入し席に向かおうとすると、彼に先に行くよう促された。きっとお手洗いか何かだろう。

 席に着いて少しすると、直ぐに彼が来た。

 それも、エルサイズのポップコーンとドリンクを二つ持って。


「はい、映画にはポップコーン。定番だろ!」


「ま、待って…すごく嬉しいけど、食べたばかりだよ?お腹いっぱいだよ?大丈夫??」


「気にすんな!観てりゃ勝手に手が伸びるから」 


 確かにそうかも…。テレビ見ながらのポテチとか、気づいたらなくなってるし。

 そんなやり取りをしていると、映画の広告が始まった。

 Micomの次作の広告、マナー、映画館の広告、アニメ映画の広告、ホラー、アクション、サスペンス…それから続くは…。


「あ、パントマイムの人!!」


「あー、シネマ泥棒な!これ地味にすげーよな!なんつーか…カッコいいっつーか。これ見て俺…パントマイムやり始めたんだよな…」


「え!?そうなの?」


 どうやら炎久斗くん曰く、シネマ泥棒がきっかけで様々なパントマイムの動画をネットサーフィンで視聴していて、パントマイムを独学で練習しているらしい。

 その独学で学んだパントマイムは、上手く行ったものは too nice(短編動画投稿アプリ)に投稿しているらしい。


「まぁ俺もまだまだなんだけどな。いつかは俺もあの人みたいになりたいよ…」


「あの人?」


「うん、クレッセント・ムーンって言うマジシャン?がいるんだけど、ネットサーフィンしてたら偶然見つけて。そんで、その人がやってたパントマイム、ただのパントマイムじゃないんだ…。ストーリー性があって…。どこか惹かれるとこがあって。俺もあの人みたいになりたい」


「へぇ…なれるといいね!その夢叶ったら、私絶対観に行くね!」


 炎久斗くんのこんな顔、初めて見たかも。

 今まではすかし顔ばかりだったけど、今日は初めてキラキラした目の炎久斗くん見た。

 すると、劇場は徐々に暗くなっていき、映画が始まる。


『全ての始まりは、一つのクリスタルからだった___』



○*○*○*


「はぁぁぁっ!!面白かったぁぁぁ!てか、みんないい人すぎたぁぁぁ…!!」


「…な…!!うぐっ……っ…!」


「えっ、泣いてる!?」


「べっ、別に泣いてねーし!!こ、これは…」


 炎久斗くん、意外と涙脆いんだ…。すごく意外。


「強がらなくていいよ、はい、ティッシュ」


「…お、おう。サンキュ」


「じゃ、落ち着いたら行こ?」


「…うん。……もう大丈夫だよ、行こう」


 それから私達は映画館を後にした。

 外に出るともう辺りは薄暗くなってきていて、大分肌寒くなっていた。


「最後に一緒に行って欲しいとこがあるんだ」


 彼はそう言うと、私の手を取り駅方面へと向かった。

 道中沢山の話をしたのだが、彼は普段大勢の女子から声をかけられている割には中々その子達の話が出ないのが不思議に感じた。

 少しクラスメイトの女子の話をしても、「俺、女子と話すの苦手で女子のことはわからない」と。

 けれど、私なら大丈夫らしい。


「着いたよ、ここの上。少しだけ…話そ」


 そう言って彼と訪れたのは、駅前のデパートだった。

 最上階に夜景がとても綺麗な休憩スペースがあり、その場所では暖を取りながらゆったりと(くつろ)ぐことができる。

 その為、よくカップルや夫婦のデートスポットとしても利用されることがある。

 奥のドアから外に出れば、完全に二人きりのロマンチックな世界に浸ることも…。

 二人でエレベーターに乗り、最上階まで行くと運良く、二、三組程のカップルしか居なかった。

 観葉植物の裏の席に隣り合って座ると、目の前にはすっかり暗くなった冬の空と街の夜景が広がっていた。


「綺麗だねぇ…」


「だな…。……ね、あのさ」


「ん?」


「来週のクリスマス…学校最終日…じゃん」


「うん」


「だから…下校…早い…からさ……その」


「うん」


「「一緒に過ごす?」」


 やっぱり?

 でも、願ったり叶ったりだ…!!


「うん!炎久斗くんとなら…!是非!」


「ほ、本当に…?よっしゃぁぁっ!!」


「お、落ち着いてっ…!」


 彼のイメージとしては、男友達といる時はすごく楽しそうにしてるけど、普段はすかしてるってイメージ…要するにキザ男って感じだったけど、もっと人間味溢れる人だったんだな…。

 なんだかこれから残りの僅かな期間で本当に炎久斗くんと彼氏、彼女になれそうな気がしてきた。

 もし私が炎久斗くんの彼女になれるのであれば…。

 私も彼に相応(ふさわ)しい彼女になれるようにそれ相応の努力をしなくては。

 絶対に、この笑顔を失いたくないから。





☆*☆*☆*☆*


 朝、いつものように目を覚まし、いつものように朝食を食べ、いつものように着替えを済ませる。

 そんな朝のルーティンを終えた俺は、いつものように部屋でゲームをして休日をゆっくりと堪能していた。

 すると、部屋の外からノック音が響く。


「ん」


「煇〜?今日お母さんの買い物について来ない?」


「やだよ、めんどくさい」


「それがね、めんどくさくないかもしれないのよ」


「…なんで?」


 不思議に思った俺は、ゲーム機を置いて母さんの方をまじまじと見つめると、母さんはニヤリと笑った。


「最後のクリスマスくらい、冬華ちゃんと過ごしたいんでしょ?なら、プレゼントくらい用意したら?お母さんも協力するから」


「!!」


 母さんには冬華の話はあまりしないものの、まさかここまで気にかけていてくれていたとは。

 母親はなんでもお見通し、とは正にこのことだ。


「ほら、早く準備しちゃいなさい」


「うん…!」


 そんな冬華の話をしていると…。


《ねぇ、今日一緒に買い物行かない??》


 あ、タイミング悪いな…。

 冬華には悪いけど…。


《わりぃ、今日はちょっと親がどうしても買い物付き合えってうるさくて…。買い物なら明日でも行けるし…。ごめんな?》


《そっか…わかった!じゃあまた後で連絡するね!》


 ごめん…冬華……。


「落ち込んでる場合じゃないわよ!!今自分で決めたことなんだから。ほら、早く着替えて、プレゼント選びに時間使うわよ!もう残り少ないんだから!」


「うん…。ありがとう、母さん」


 急いで身支度を済ませて車に乗り込み、暫く車を走らせると最寄りのデパートに着いた。

 多分アイツのことだから、「トラスト〜!大好き〜!!」的感覚で選べばきっと最高のプレゼントができるだろう。

 と言うことで、トラストショップがある七階だ。


「なになに〜、アンタたち以心伝心で欲しい物がお互いわかっちゃう系なのぉ〜??」


「…うるせーよ、別に…そう言う訳じゃない…けど。いや…わかんねーけど…。その…あー!もう、もどかしいなぁっ!!」


「いいじゃないの、青春してるなら。お母さんの青春はねぇ…」


「あー、いいからいいから」


 自分の気持ちはちゃんとわかってる。

 けど、上手く人に伝えられない。

 今まで他のことは母さんには全部話せたのに、冬華が好きってことだけはどうしても話せない。

 理由なんてわからないけど…。

 でも、ここで母さんに伝えられないならきっと冬華にもちゃんと伝えられないかもしれない…。


「俺…。……その…冬華が…好きなんだと思う」


「わかってるわよ、そんなこと」


「うん…」


「アンタは冬華ちゃんを大切に思ってるから、自分のやりたいことの為の時間よりも、冬華ちゃんの喜ぶことの為の時間を優先したんでしょ?でなきゃ、わざわざ買い物なんかに来ないなんてこと、わかってるわよ」


「母さん…」


 何も言わなくてもわかってくれてる。

 けど、冬華はきっとそうじゃない。

 ずっと一緒でも、十八年と三年じゃ大分誤差が出てくるはず。だから、ちゃんと言わなきゃ。


「…そう…だけど、違うんだ…」


「え?」


「俺は…冬華のことが三年間ずっと…大好きだったんだ。俺の中の一番はずっと冬華だったんだ。笑った時も、一生懸命な時も、ちょっとドジして間抜けな時も…。俺の中では一番可愛くて、大好きなんだ。だから絶対に離したくない。離れたくない。今冬華は他に好きな人が居るみたいだけど、俺は…冬華と一緒で居たいんだ…」


「それが煇の全部?」


「え?」


「今の言葉が冬華ちゃんに対する気持ち全部?」


「うん」


「だったらその想い、全部冬華ちゃんにちゃんとぶつけなさい。少なくとも、お母さんには届いたわよ。気持ちは閉じ込めてるだけじゃわからない、後悔するなら、ちゃんと言って後悔しなさいね」


「…わかった」


 俺は、絶対に冬華を幸せにしたい。

 「誰か」じゃなくて、俺が…。


「さ、早く選びましょ。お母さんはあまりトラストには詳しくないから…。ここからは煇にお任せするわ」


 冬華が喜びそうな物…。

 冬華は確か、きつねのファーさんが好きって言ってたな。

 淡いピンク色で…。

 メープルシロップが大好きで…。


「あ」


「どうかしたの?」


「あれ、なんだろう?」


「スクール・キャット?…何かしら…」


 側に寄って見てみると、その棚には沢山の猫のぬいぐるみが置かれていた。

 中には、ファーさんらしき猫のぬいぐるみもある。


「こんにちは〜。どちらか気になる子はいましたか?」


「あ、はい…。あの、このぬいぐるみって…ファーさんと関係あるんですか?」


「あ、はい!あります!実はこの子たち全員に言えることなんですけど、この子たちは全員トラストキャラクターたちが学校の課題で作ったぬいぐるみたちなんです!そしてその子はファーさんが作った子なんです。それで、この子たちは一人一人手作りですので、お顔もちょっとずつ違うんですよ!」


「なるほど…」


 そういえば、冬華猫も好きって言ってたっけな…。

 猫のファーさん…か、本当はきつねだけど。

 あ、確かに。ちょっと目元も少しきつねっぽいかも。尻尾も少しきつねだし…。


「因みにお名前もちゃんとついてて、『シャイ』くんって言うんですよ」


「へぇ…」


 『シャイ』か…。俺にピッタリだな…。

 うん。この子に決まりだな。


「色々と教えてくれてありがとうございました。俺、この子に全て託します」


「え?」


「来週のクリスマス、俺の友達へのプレゼントを買いに来たんです。とにかく、ありがとうございました」


「あ、いえいえ!!上手くいくといいですね!!応援してます!」


 …あれ、俺は赤裸々に何を言っているんだ?


「ありがとうございます、それじゃ」


 会計に向かうと、レジの最中に母さんが支払いをしてくれた上、ラッピングも頼んでくれた。

 母さんは本当に沢山のところで助けてくれる。

 …支払いは俺もできたけど。


「じゃあ煇、ご飯でも食べてから帰りましょ。頭使って疲れたでしょ」


 それから俺は母さんと一緒にそのデパート内のレストランにてゆっくりと昼食を取り、沢山の話をした。

 一年の頃の冬華のこと、冬華に試作ではあれどケーキを焼いてもらったことが嬉しかったこと、冬華のはじめての泣き顔のこと…。

 どんなに話しても、母さんは文句一つ言わずにただひたすら聞いてくれた。

 それで俺自身が痛感したこと。

 それは、やっぱり俺は冬華しか考えられないと言うこと。

 誰よりも好きで、誰よりも大切で、誰よりも考えてる。

 だから、一緒にいたい。


「アンタのその気持ち、大切にしなさいよ」


「…!」


「聞いてりゃわかるわよ、どれだけ好きかなんて。重すぎるぐらいよ。他の男なんかに渡すんじゃないよ、冬華ちゃんのこと」


「…決まってんじゃん」


 それから俺たちは帰りの夕飯の買い物をスーパーで済ませてから家路に着いた。

 すると。


「母さん!!待って、あれ!!斜め前!!」


 冬華と…誰だかは分からないが、男が隣にいる。


「追って!」


「えっ!?無茶よ!時速何キロよ!!遅すぎるわよ!」


「じゃあ歩道寄って!俺降りる!近くのコンビニとかに止めてくれてたら俺そこまで行くから!なんなら歩いて帰るから!!」


「…わかったわ。気づかれないようにね!」


「ありがとう!」


 俺は急いで車から歩道へと降りると、冬華たちの後を追った。

 近くまで迫ってわかったこと。

 それは、冬華の隣の男は炎久斗だということだった。

 冬華が好きな「誰か」…。炎久斗だったのか…。

 ライバルのハードルが高すぎる…。

 こいつは顔、身長、スタイル良し、おまけに手先も器用っていう二刀流タイプ…。

 敵うわけがない…。

 確かに俺も被服で服作ったりはするけど…それ着て出るけど…。アイツほど神レベルな服は作れない。

 そんなことを考えていると、駅前のデパートに着いた。

 そこから二人は最上階へと向かっていく。

 …もしかして。

 嫌な予感。

 エレベーターから降りると、先に着いた二人の姿が見当たらなくなっていた。

 息を潜め、耳をそばだてる。

 すると、奥の方から冬華の声がした。

 急いで声のする方へと向かうと、途中からではあったが、二人の会話が聞こえてきた。


「うん!炎久斗くんとなら…!是非!」


「ほ、本当に…?よっしゃぁぁっ!!」


「お、落ち着いてっ…!」


 …え?待って、まってまってまって…!!

 嘘だろ??

 俺は居ても立ってもいられず、思わずその場から逃げ出した。

 きっとこれは、なにかの間違いだ。

 そう、何か聞き間違えただけなんだ。

 冬華が…俺以外を好きになるはずが…ないんだ!!

 最後までお読みいただきありがとうございました!

 投稿遅れてしまい、ごめんなさい…。


 今回は結構長めですが、これからも一日一日、濃厚な日々をみんな過ごしていくのでもう少し長くなったりするかもしれません。(その逆もあり得ますが)

 もしかしたら、この後新キャラも…!?

 それは後日、お楽しみに!!


 それでは!最後までお読みいただきまして、本当にありがとうございました!!

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