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U .F. O. ?

作者: 後藤章倫

突然の展開に口がアングリと開く人続出。


未確認飛行物体なんて呼ばれていたけど、今はもうハッキリと確認できる。

中央線高円寺駅北口の広場に直径約10メートルの所謂ところのUFOが何の予告も無く現れた。アダムスキー型といわれる形で下部に付いている4つの半円ドームは地面から少しだけ浮いている。


「何アレ?」

「なんかのロケ?」

「うわっ、UFOじゃんヤバっ」

「どっかで撮影してる?」

「どっきりカメラじゃない?」

「ヤバくね?ウケる」


そんな事を言いながら近くの専門学校に通っている馬鹿みたいな顔をした学生を中心に人々が集まってきた。皆、手にスマートフォンを携えて写真や動画を撮り始めた。


UFO側面が紫に光ったと思った時、かなり近付いていた10数名が気絶した。そして悲鳴があがった。それでも、

「え?エキストラの人?」

「マジなの?」

「演技スゲー」

と言って面白がっていた5人程のアンポンタンがヤンヤヤンヤしているとUFOのアンテナみたいなところから緑色の光線が放射され、5人の喉元に刺さり泡を吹いて倒れ込んだ。


騒ぎを聞きつけ北口交番の巡査が2人現場に到着した。到着したとは言うものの北口広場と北口交番は直ぐ近くにあって、交番からも目視出来ていたはずである。来てみたはいいものの、この状況は何だ?というのが正直な感想だった。兎に角安全を確保する必要がある。警笛を吹き、声をあげる。


「さがってください。危ないからさがって」


もう1人の巡査は救急車の手配をしている。その間もUFOは時折変な光を点滅させている。救急車が近付いてくるサイレンが聞こえるとUFOの上部から棒状のものが4メートル程立ち上がった。更に救急車が連なって近付くと、その棒がグニャッと折れ曲がり1台目の車両へピンク色の光線を発射させた。救急車は一瞬でピンク色になり、そのあと直ぐに車体が液状化してアスファルトへ水溜まりのようなものを作った。


それを目の当たりにした警官と観衆は、

〖マジでヤバい〗

と悟り、慌ててUFOから駅の方や商店街の方へ逃げだした。他の救急車は取り乱して高架下を南口へ爆走したり、ギアをバックにシフトして近くのバスに接触したのもお構い無しに環七あたりまで反対車線をバックで逆走したりして高円寺駅北口はカオスの坩堝と化した。


UFOの廻りにはUFOから発せられたものによって約20名ほどの人達が倒れたままでいた。

これは最早冗談でも何でもなく重大な事件だ。事件なんだけども警察とかそういう類いのものじゃなくて、なんて言うんだろう?国家的な?いやひょっとしたら世界的な事柄なんじゃないか?と思われた。


高円寺駅を中心に北は早稲田通りまで南は青梅街道、西は中杉通り、東は中野通りまでの全てに避難命令が出た。

誰も居なくなった高円寺駅北口広場でUFOは相変わらず変な光を点滅させながら留まっていた。広場の隅にはUFOによって気絶させられた者達が約20名キャンプファイアの組み木のような感じで積まれていた。今では気絶しているのか死んでいるのかもわからない。


杉並区の上空には横田基地からスクランブルした戦闘機が5機到着していた。UFOにロックオンしたもののミサイルを撃ち込む事が出来ないでいた。

UFOからはおびただしい数のピンク色をした触手みたいなのが伸びていて、キャンプファイアの組み木のように積まれている人達の事を探っているみたいだった。触手みたいなのが動く度にUFOはカラフルに点滅した。まるで何かを学習しているようにも思えた。

UFOが人質みたいになってる人達に触っている為に何も出来ない戦闘機は一旦横田基地へ帰還した。


その頃になると各マスコミはドローンを遠隔操作して高円寺駅へ向かわせた。テレビ局やラジオ局、新聞や各情報誌、インターネットの連中なんかのドローンが高円寺駅北口付近でホバリングしながらUFOの動向を観察していた。


ドローンを通じて特別番組が放送され始めた。中継動画に日本中が、いや世界中が固唾を飲んで食い入って見ていた。

インチキ臭い自称UFO研究家がある番組で解説みたいな事を始めた時にUFOに動きがあった。

キャンプファイアの組み木と化していた人達に伸びていた触手みたいなものがUFO内へ入っていったのだ。


UFOの天板がパカッと開き、中からせり上がって来たのは銀色の服を着た人型の宇宙人らしき2体だった。

1体は痩せて見え、もう1体はブヨブヨだ。2体とも銀色の帽子を被り、銀色のタンクトップにショートパンツ、足元は白いブーツを履いていたが、目らしきものは顔みたいなところの中心に1つだけ付いていて、鼻や口らしきものは見当たらなかった。


テレビやYoutube生配信などを見ていたもの達は思った。

「これって、アレじゃね?」

どう見てもアレだったけど、その異様なルックスから、何かとんでもないものにも見えた。

その直後UFOから音楽が流れ始めた。それはまさにあのピンクなレディの大ヒット曲〖UFO〗だ。おなじみのイントロに合わせて取って付けたような振りを2体の宇宙人みたいなのがやっている。

♪テレレレ、テレレレ、テレレレ、テレレレ♪

♪フャ~ンフォン、フャ~ンフォン、フャ~ン♪


とくれば次は歌に入る前のキメ処である「ユッフォッ」の筈である。2体の宇宙人みたいなのは既に両膝を少し曲げ、左手は腰のとこに、そして右手は頭のうしろでパーの形を保ち、その時を待っているようだった。


そして発した。

「U SO 」


は?日本中がそう思った。諸外国の人達は普通に見ていた。

それはつまりウソって言った?え?嘘ってこと?

と混乱する視聴者を嘲笑うかの如く曲は続く。

2体は例の振り付けに移っていた。両腕を肘あたりで合わせてカクンカクンと動いていた。その間ゆっくりせり下がっていて、歌に入る頃には完全にUFOの中に収まっていた。


そしてUFOは一瞬で消えた。ピンクの水溜まりになっていた救急車は元に戻り、キャンプファイアの組み木になってた人達は崩れ落ちたが、みんな目を覚ましてゲラゲラ笑いだした。


横田基地から再びスクランブルした戦闘機は目的地を失い、虚しく厚木基地へ向かった。




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