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第1話

私生活が忙しく遅々として進まなかったので初投稿です。

 五大陸のうちの1つ、人間族が主に生活する大陸『ジュエリア』。

 その中でも最大の国である王国『ダイヤ』ではこの日、騎士学校の卒業式が行われていた。


「――次、ギフト・プレゼンター! 」


「あいあい! 」


 何故か敬礼しながら立ち上がったのは、騎士学校では珍しく【斥候】を志願し、その成績は誰よりも抜きん出ていたギフトであった。


 王国の騎士を育てる名目で設立された王都騎士学校『ブリリアント』は、多くの貴族と少数ではあるが腕の立つ平民が身分関係なく同じ学び舎で国を守る為の全てを学ぶ学校だ。

 一般的な騎士を養成する『普通科(ミドル)』、指揮官や上級騎士の為の育成をする『特進科(ハイエンド)』の学科の中で、ギフトは()()()()特進科(ハイエンド)の学生である。

 しかし、卒業証書授与の為に呼ばれたギフト含む壇上の8名は、特進科(ハイエンド)の中でも個々の力が突出して高く、旗艦生徒(フラグシップ)と呼ばれていた。


「もっと緊張感持ちなさいよ、曲がりなりにも儀式なんだからコレ」


 そう話しかけるのはギフトと同じ旗艦生徒(フラグシップ)の通称【剣聖】、メリル・フォン・ダイヤモンド。この王国の第3王女であり、この代で最も剣に優れた生徒だ。


「儀式、ね。大袈裟に言いますなぁ王女様は」


「あまり茶化してやるなギフト。我々はこれから新たな【カリモノ】を得るのだ。儀式と呼んで差し支えあるまい」


 そう言ったのは旗艦生徒(フラグシップ)で特に拳術、格闘術に特化した男。【魂拳】ことダグラス・フォン・シトロン。王国騎士を多く排出している名門貴族の生まれだ。


【カリモノ】とは、神から与えられる特殊技能のことで、先人が技能を授かった際に「これは神の権能の一部を借りているに過ぎない」と語ったことより【カリモノ】と称されている。

 10歳になると教会で啓示を受け、【カリモノ】を授かることが出来る。普通に生きていれば1人1つではあるが、様々な例外により2つ以上持つ者も存在する。

 ここにいる旗艦生徒(フラグシップ)の8人は、少なくともこの儀式により全員が2つ以上の【カリモノ】を有することになる。


「さて、今ここにいる8名は、在学中特に目覚しい発展と活躍を遂げた者達であり、今後もこの国、引いては世界の為にその力を振るう者達でもある! 」


 校長が声高々に宣言する。


「故に! 今ここに新たな【カリモノ】を授ける! これはこの学園の期待の証であり、この国の希望の証左である! 」


 そう言うと、校長の目の前の水晶が光り始める。やがて光は宙に浮くと、8つにわかれ壇上の生徒の目の前に浮遊して来た。


「その光を手に取った時、君達はまた1つ神の権能を授かることとなる。その意味を、努々、忘れるな」


「「「はい! 」」」


 8人は、声と共に光へ手を伸ばす。すると、それぞれが手のひらの上で形を作りだす。

 あるものは剣に。

 あるものは篭手に。

 その他、各々が得意とする武具へと変化を遂げる。その変化が終わると、光は消え、彼らの前から姿を消した。


「これはそれぞれの特性に合った武装を与える【カリモノ】。それぞれ体の一部に刻印が新たに刻まれた。魔力を通せば実態となって精霊と共に現れるだろう」


 すると、左腕に少し熱を帯びた感触があった。捲って確認すると、雷の模様をした刻印が見て取れた。両隣を見ても、各々同様の感触を得ているようであった。


「この儀式を持ってして皆の卒業を認定する! 6年の時は、君達を騎士足り得る者にした! ジュエリアの平穏の為、世界の為により一層の研鑽を忘れるな! 」


 学園長の口上が終わると、会場は拍手の音に包まれた。


 こうして、俺は王国イチの騎士学校を卒業した。











 ――――――――――――――――――――










「卒業、したわね」


「王女様も感慨に耽けるんですねぇ」


「王女なんて立場、感慨に耽けるのが仕事みたいなものよ」


「それより新たな【カリモノ】、皆はどうであったか?」


「私は剣、属性は聖だと思う。()()がそう言ってた」


「王女殿はもう精霊と対話なされたか。流石剣聖と言ったところか」


「私なんて目じゃないわ。どーせこの隣の男は精霊すら飼い慣らすに決まってるもの」


「そんなことないぞ、さっきからずっとケンカしてるし」


「精霊とケンカぁ?どういうことしたらそうなんのよ……」


 卒業の儀式も終わり、各々帰路についている。学生寮から出る為、それぞれが進路に向かって行く。


「私はこの後このまま城に戻って、来月からは騎士生活よ。自由な時間とはおさらばね」


「我はこのまま世界を渡り歩く。新たな力も試したい」


「ダグラスはずっと旅するって言ってたものね。家督はどうなるの?」


「我よりずっと優秀な弟がいる。まぁ、力では負けぬがな。元々シトロンの家は弟に継がせると決まっていたものだ」


「長男が継がないってのは、貴族サマの中じゃ珍しいな」


「シトロン家は武より政治のが重視される。とはいえ、我も家や国に何かあればすぐ戻る約束もした。王女殿下も、ギフトも、何かあれば呼んでくれ」


「頼りにしてるわ、ダグラス」


 俺とメリルとダグラスは入学当初からのライバルであり、クラスでは最も仲のいい面子だ。旗艦生徒(フラグシップ)は良くも悪くも個性的が過ぎる為、友人として接していられるのはある意味稀有な存在だった。


「ギフトは探索者になるのよね。ま、貴方ならどこでも大丈夫でしょうけど」 


「まぁな、旗艦生徒(フラグシップ)でも最強だし。この足で探索者の登録を済ませて、明日からは探索者だよ」


「今はまだギフトが強いかもしれんが、いつか必ず超えてみせるぞ」


「出来るもんならやってみな」


「私も負けないけどね。強さは、1対1の武力だけじゃないし」


「期待してるよ」


 そうやって会話しながら王都を歩く。やがて、王都の中央にある広場に着いた。

 この先はもうそれぞれ道が違う。自然と足を止めて、歩いてきた道を振り返っていた。


「色々、あったわね」


「あったな。まあバッサリカットしたけど」


「何の話?」


「これからは、我々全員が違う道を歩むのだな」


「そうだな。出てきたのお前達だけだけど」


「何の話だ?」


「俺達の物語は、まだまだこれからなんだよな」


 ここまでが俺の序章。父に言われた()()()()で言うならやっと玄関を出たようなものだ。


「見てろよ、親父」


 もうこの大陸に、名を馳せた暗殺者は居ない。これからは、新たな名と共に世界に刻むのだ。


「俺が、最強の斥候になる」


 決意を拳と共に握り締める。他の2人も、新たに決意を固めた表情をしていた。


「じゃ、ここで」


「ええ」


「またいつか会おう」


 そうしてバラバラに道を進む。さっきまで当たり前にいた人影が、少し惜しくも思う。


 こうして、ギフト・プレゼンターは探索者になった。

評価欲しいなぁ、なんぼあってもいいからなぁ、欲しいなぁ。

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