決戦の日——tr
「人使いが荒いなぁ」
僕は彼の持つ剣を狙って、
「『氷結の散矢』」
僕の杖ことマジカルソード(杖って棒状であれば大体平気なんだよね)を突き出して唱える。
水魔法で作られた水は熱系統の魔法によって温度を奪われ氷と化し、風魔法によって起動を安定させる上、スピードを高め、それを多く出現させる。至って複雑な術式を組んだ魔法。
これは僕の素質があっての魔法だ。
常人には到底出来ない。
その矢たちは見事に剣、柄、右肩、右肘に。必要以上に当たる。
「ぬ?」
コタニは弾かれた。右半身を集中放火され、回転しながら倒れる。
「『空間転移』」
僕はアナ君に向かって指を刺して魔法をかける。手元に来るように。
「大丈夫かい?」
「そんな訳ないでしょ?」
今更ながら彼女の着ている服が違うことに気づく。美しいというより神々しい。武器も槍から大砲に変わっていた。
「『氷結結晶』」
コタニを一度氷漬けにする。しかし、こんなもの1分もあれば溶かせるだろう。彼から感じる神の力さ尋常じゃない。
「15分」
彼女は僕に5を示す指使いを面の前に突き出して言う。
「ん?」
「あと15分以内にけりつけないと私、反動で動けな
くなるから」
「あぁ。わかった。じゃあ君は出来るだけコタニか
ら離れて.....。そうだ。じゃフルパワーのその銃を
道場の入口で構えておいてくれるかい?」
「はぁ? 私じゃなきゃ勝てないんでしょ?」
眉間にしわ寄せてメンチ切ってきた。
怖い怖い。
「だからだよ」
外に行ってても良いのかな......。私も勝ちたいし、アブァさんに任せるのもアレだし......。でも秘策くらいはあるんだろうし大丈夫なのかな。———
そんな声が聞こえて来る。彼女の心の声。
優しいなぁ。
「大丈夫だよ。僕は強いからね」
ちなみに今僕の力ではコタニには勝てない。
ピキピキと、氷に亀裂が入る。
「早く行くんだ」
そう言って僕は急かす。
彼女を入り口の方へ背中を押しながら。
無理やり歩かされている彼女は少し歩き出すなり僕の手から離れる。そして、
「......こと」
彼女は振り返って、小さな声で言う。
「なんだい?」
彼女は少し赤面しながら広角を上げ、僕を指差して言う。
「死なないこと」
そう言って彼女は道場の入り口前に行った。
フラグ? 聞かなかったことにしよう。
「あ、扉閉めてー。危ないからー」
彼女は指示されるなり閉め、後ろからはまずい音。
バキン。
「一騎討ちに割って入るとは」
そんな低い声が聞こえる。近くに氷の破片が飛び散っていた。透き通った空は昼の気温を空に解き放つように温度を奪い、氷もまた温度を下げていた。
「おじさん。あんな少女にあんなこと言われちゃ
ったらがんばっちゃうね」
「死に値する」
彼は得意技であろう技、剣で放つ『衝撃波』。僕は全く見えない。彼女は避けていたが、それは並々ならぬ体の性能だろう。一体誰が作ったのだか。
その衝撃波は僕の腹を掻っ捌——
「『対物理障壁』」
かなかった。
僕の防御技は見事に彼の刃を通さなかった。しかしまーでも、自分の魔力だからこそ分かるのだが、崩れた。そうそう壊れるようなもんじゃあないあの盾が。トラックが突っ込んで来ても止められるくらい頑丈なはずなのに.....。
次の瞬間、彼は突っ込んで来る。おそらく『神速』だ。
長く鋭いと思われる日本刀は薄く、闇の中では把握がしづらい。が、切っ先が月光に照らされ、なんとか位置を把握して避ける。
「危ねッ!」
急に口調が変わってしまったのだが、流石に声を上げずにはいられない。
「避けるとはな。だが!」
彼はまた構え、『衝撃波』を放つ。彼の攻撃には少し無駄が目立つ。
ビュン、と耳の隣すぐで音が鳴る。今度は縦振りで、バン! と、轟音が耳元に響く。
「危ないなぁ」
間一髪? よくわからないが避けることに成功したらしい。まさか相手も見えてないってことあるかなぁ。さっきからのいざこざで蝋燭の火は消えている。つまり、両者闇の中である。まさか、見えてないってことある?
「よし」
僕はマジカルソードをしまい、破壊剣を出す。これを使うと世界の法則がいくらでも変わってしまうことからあまり使いたくは無い。
「————————」
ギン!
速攻された。無言で背中を攻めてきた。
秒で殺す気か。
ま、しっかり『対物理障壁』で守ってるけどね。
僕は悠々と扉の前と向かう。
「フィナーレだよお爺さん」
「ぬかせ!」
彼は己の剣で僕の障壁を破った。
次の瞬間——
「ほぅ?」
どこからとも無く風が吹く。それはそれは強い風がひとつの切り傷へと向かう。
彼の体が浮く。
「何をした」
「何も? ただ、空間を切って穴を開けといたらそ
こに貴方が吸い寄せられるのだろうなと思ってや
った悪戯に過ぎませんよ」
彼の体は抗うこともなくその傷に張り付けられる。無論、僕もその対象ではあるが、足元にもそういうものを作っておいた。流石に足は地面にめり込んだだろう。どんな推測だ。と、ニクス君に突っ込まれちゃうな。
そんな雑念99%で彼の胸の辺りを刺す。
勿論『破壊剣』で。
音もせず、彼は正面から刺殺された。
「———————なんの真似だ」
僕は『破壊剣』を彼の胸から抜く。
「なんでも無いですよ。僕は神ではないので貴方を
殺せません。殺したらバチがあたってしまうから
ね」
僕は俯き言う。
「アナ君。今だ!」
と、大声で。
『空間転移』。
次の瞬間、1日で復活した道場は見事に崩壊した。いっそのこと落城したと言った方がなってるかもしれない。
僕は彼女の肩を叩く。
「アブァさん.....」
振り向かずに言う。
「どうしたんだい?」
彼女は一瞬、躊躇ったのか間を置いて。
「帰りましょ」
予想通りの声を聞くなり、僕の顔を見ずに彼女は歩き出した。




