平和な日 破
「.........? 」
起きると、誰もいなかった。
「ううぅ。寒っ」
Tシャツから出ている二の腕をさする。少し震えているのがわかる。
夏に1人、エアコンのよく効いた部屋は寒い。しかもエアコンに表示されているこの部屋の温度は25度。エアコンのリモコンを探して机の下、テレビ台、座椅子の下を探したが、ない。
「ニクスー。アブァさーん。ニコちゃーん。カメオー」
誰からも返事が無い。私はとりあえずドアを開けようとする。が、
「開かな.........い? 」
固くて開かない。固いというか、動かないし、動く気配がない。
「くー! きー! 」
と、声を出して次は窓を開いてみるが、開かない。
この場合どちらがいいんだ? 体力温存か、体温を上げるために筋トレか。
結論。
「ふー。暖か」
とりあえずお湯を沸かしてミルクセーキを作った。事前にバニラエッセンス買っといてよかった。走馬灯のように博士との日々が脳に浮かび上がる。懐かしいなぁ。
「.........どうしよ」
改めて考えてみると、ドア、窓共に開かず、ビクともしない。閉じ込められたというのが正確だろう。
「んー。どうしよ」
体を後ろに逸らして伸びをする。ここから脱出するのは難しそうだ。これは助けを待つしか無さそうだ。
「こんにちはぁ」
私はどこからか現れた堕天使。もといサリエル。私の親の仇、私達の選定前の「奇跡の輝石」の持ち主。その声は男性の声だといわれればそうかもしれないが、女性だと言われたらそうかもしれない。と、性別がわからない。胸を見てみると、なんとも言えない。今日はほぼ装飾品なしで、顔を隠す装飾品のみだ。
服は黒いマントを羽織っている。情報が少ない。
「サリエル.........」
「どうしたぁ? 自分がなんでここにいるかぁ。わかるかぁ? 」
口調は聞き取りづらいが、男性に近いと感じる。
誰なんだ? こいつは
「あんた。何しに来たの? 」
「状況確認だぁ。自分は一応選定するほうだからねぇ」
私は隠しきれない——というか、そもそも悪意しかないから隠すも何も無いが、敵対意識がある。
「さっさと出してもらえるかしら? 」
「あぁ。外からの覚醒の促しがくれば大丈夫だぁ」
しむけんの大丈夫だぁみたいになってる。
そんなことより、
「サリエル。貴方は博士。ドクトル博士を知ってる? 」
少し首を傾げた後、
「懐かしい名前だねぇ。自分はよく知ってるよぉ」
彼女はこいつ——サリエルに殺された。仇だが、殺したいほどという訳では無い。ただの知り合いだ。憎しみを持つべきはずの知り合い。
「あれは不思議な女だったなぁ。肉体的には恐ろしく弱いがぁ、魔法だけであればぁ、ねぇ? 」
褒められている.........のか? 貶されては少しあるが、褒める部分はあやふやだ。顔が趣味の悪い鎧の兜のようなものなのだが、それを着けているぶんだけ感情が読み取れない。本当に何考えてるんだ?
「ねぇサリエル。私は彼女を殺った理由がよく分からないのだけれど」
サリエルは私の方へと寄ってくる。私は何をするきだ。と、思って逃げようとした。—が、金縛りにかかったように足が動かない。いつの間にかかっていた? 気づかなかった。
「ではぁ、バイバイ」
と、あれは私を倒す。金縛りの状態で立っている私を倒す。痛い。絶対痛い。と、思ったが、私はこの世界が夢の世界と理解するきっかけになった。痛みを伴わず、私の体はまるで、中の無いツボを落としたように、割れた。
「なによ。これ.........」
粉々になった私は動けない。生きているが、動けない。
不意に、目を閉じたら次はいつもの世界かとおもって。そんな浅はかな考えで私は目をつぶった。
——
「アナー」
「ひゃい? 」
発せられた私の名前に対して咄嗟に声が出る。反射的に。案の定上手くいったようだ。
「ふっ。そんなところで寝てても面白くねーだろ? こっちきてアブァも交えて作戦会議しようぜー」
鼻で笑われた。
でも、さっきの悪夢よりはマシだ。私はすぐにソファーの方へと向かう。
けど。1つ。違和感。サリエルは何者か分からないが、私はあれに妙な懐かしさを感じた。
あいつは.........何者だ?




