天下の日—アハト
軽く避けられる。不意打ちはそれなりの強戦法なんだけどな。自称神様は既に剣を持っている。ニクスの時とは違うらしい。流れる水のようにその剣は滑らかに動き、
「はっ! 」
一刀両断—されかけた。私はイージスの盾で辛うじてガードする。この人本気だし.........。人じゃなくて神だけど。
盾で守ると数秒後、ギチギチ震えてきた。力が弱まらない。私は体から動かし、盾を上手く使って受け流す。左腕が少しビリビリする。
「流石の硬さよ」
「舐められてたのかしら? 」
少し間を置いて、
「いいや。全く」
と、言って剣を縦に構えた。そして、次の瞬間。剣を振るう。軽くだ。素振りのように。その剣は私には当たらなかったが、その波動は。その『衝撃波』は私のほんの数センチ横を通り、壁には風穴が空く。
「私もこれは本気じゃないとダメそうね.........」
「はっはっはー! なめていたのはお主のようだな」
最早清々しい笑い声。そして馬鹿なのか。お調子者なのか。上げ足の取り方がめちゃくちゃ下手だ。
「えぇ。ここまでとは.........」
単調な剣撃だけだと思ってたら魔法まで。しかも結構な高火力。というか、見えない攻撃の火力調整間違い過ぎでしょ。私は壁を貫通なんて火力だしたら1発で魔力がKOになるわよ。
「ふん! 」
と、言って次は横振り。当たり前だけれど、私は結構離れた位置にいるが、『衝撃波』を当てようとしてくる。高さはよく見ていなかったから位置は分かりづらいが、空気の動きはよく見えるので、地べたに張り付く。多分ここまでは来ないだろうという少しの賭けも込めて。
ブンッ。と、上の方で聞こえた。避けきった。
「あっぶないわねー」
「素早いな。小娘」
ちなみに私が避けられている理由を簡単に説明すると、私は先に『宣戦布曲』を先に打っておいたおかげで身体能力は結構上がっている。だからと言って全てを避けられる自信はない。強いて言うなら分かりやすい、単調で、1発なら避けられる。ひとつでも当てはまらなかったら私は当たってしまうだろう。
「・・・・・・そうだ」
「ぬ? まぁなんだか知らないが、死ね」
また単調な縦振り。私は簡単に避ける。それを始めとして私は駆け回る。体育館を駆け回る。
縦や横をガンガン飛ばしてくる。危険すぎる。風穴がどんどん増えていく。この出力をいくら出せば気が済むんだろ。
「逃げるな! 」
怒らせてしまったようだ。
「いや、逃げるわよ。何処のどいつが剣を避けない
のよ」
私は5秒に1回ほどに増えてきた『衝撃波』を避けながら走る。上に。下に。時には止まったりして。
ジャキン。そんな音が鳴る。鉄と鉄が当たる時の音。私は『衝撃波』が放たれない事に違和感を持って、柱の前で止まる。彼を見ると既に構えていた。
「二刀流『五月雨切』」
空気が動きすぎて一つ一つを捉えきれない。しかも『五月雨切』なんて、起動が読めるはずがない。急いで盾を構えていても遅い。というか、守りきれない。
「バカがっ! 」
一夜にして同じようなシチュエーションを送るなど、どんな速度で再放送かよ。ってくらいにまた、ギリギリをカメオに助けられた。
「遅いわよ」
「ツンデレキャラはきらいだぞ」
「あーそ」
私は敵。もといさっきから死闘を繰り広げた彼を見る。名前は思い出せない。
カメオは空を蹴って道場内に着地しようとする。
「ダメ。外にすぐ出て」
「ん? あ、おう」
と、言ってカメオは言うことをすんなり聞いてくれた。1歩だけ地面に着くなり、また空を蹴る。
そして、私の計算が合っていれば.........。
ガラガラと、何か音がする。
「なんだ? 」
カメオはよそ見して言う。危ないなぁ。
「やりおったな小娘! 」
中からよく響く低い声が聞こえる。
彼との戦闘中、私は逃げていたが、ただ単純に逃げていない。時に、止まったのだ。例えば柱の前で。壁を貫通する時、私は柱にもかすっていたことを確認した。それはそれは綺麗な切れ目で、もしかしたら柱さえ壊せるのではないかと思えるくらいに。これ以上の解説は割愛させてもらうが、結果として、天井を落としてみた。可愛く言えば「落としちゃった。えへへ」なんだろうけれど、やってることは殺すためだ。可愛いなんて、お世辞でも言えないだろう。言わせることは出来ても。
「おそろしいなおまえ」
「まぁね。上出来でしょ。ていうか、もっと離れな
いと」
「わかったよ。すなが.........」
砂が舞い始める。
「おらよっ! 」
強く、地面を蹴り、砂の少ないであろう上行った。遥か上空に行くと、切り返してまた空を蹴る。空を蹴るなんてそういえば今日初めて聞いた言葉だ。めっちゃ使ってるけど。
危機一髪、砂煙や、コンクリなどの土石流から逃れる。そのまま、土石流は家の方にも行って、砂煙に包まれてしまった。
——
流石に入って来た門の方までは流れていかず、私達は着地する。直ぐに私は降ろされ、崩れた道場を見る。
「.........」
「.........」
私達以外が被害にあってしまい、言葉も出ない。恐らく、アブァさんなら上手く逃げ切っているだろうと信じていたが、確証はない。
「どうするんだ? 」
「・・・・・・帰りましょうか」
私は真顔で言う。.........多分。
「どこにだ? 」
「・・・・・・。とりあえずニクスの家でいいんじゃないの? 」
「そうだな。いくか」
カメオは決断するなり、すぐ歩き出す。私はすぐについて行く。
太陽が朝を告げ、私達は長い夜を超えたことを実感する。そして、私達はそろそろ闘うのをやめろと警告されたような感覚もした。
戦利品として、敵の首も無ければ、失った(まだ見失っただけだが)ものの方が多かったのかもしれない。だから、家には皆がいるだろうという希望だけ持ち帰ろう。




